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Cypress、IoTをセキュアに守るPSoCマイコンの開発ツールを充実

IoTはセキュリティが問題になると言われて久しいが、Cypressはセキュリティを組み込んだPSoC 64シリーズを発売する。PSoC(Programmable SoC)はアナログ回路をプログラムできるマイコンであり、当初の8ビットから32ビットのArm Cortex-Mコアも集積するようになった。今回はセキュアな回路とソフトウエアを組み込み、IoT-AdvantEdge(アドバンテッジ)と名付けた。

Arm Cortex-M0/M4シリーズをCPUコアとするPSoCマイコンとして、今回発表したシリーズはPSoC62とPSoC64製品で、MCUにセキュリティ機能を加えたもの。これまでIoT端末用にセキュリティ機能を組み込んだマイコンはなく、Infineonのセキュリティ専用マイコンAurixを通して認証するというように別チップで認証していた。また、ArmのTrust Zoneのようにセキュアな部屋(コンテナ)を用意して、実行環境を分離することも可能だ。


進化したPSoC Secure MCU

図1 製品ロードマップ 出典:Cypress Semiconductor


実際の製品シリーズには、セキュリティのレベルに応じて用意している(図1)。例えば、PSoC 64 SecureBootでは、パソコンのBIOSに組み込まれているRoot of Trust機能をデバイスのIDによってハードウエアとして組み込んでいる。これは電源をオンした時に立ち上がる過程で、セキュリティを確認する動作に組み込む機能であり、最低限のセキュリティ機能といえる。

さらにセキュアなレベルは、PSoC 64 Standard Secureであり、Arm v7-MおよびArm v8-M向けのセキュリティのファームウエアである、Trusted Firmware-M(TF-M)が組み込まれている。これは、PSA(Platform Security Architecture)を実行できるリファレンスであり、PSAは接続されたデバイスを解析から実行までセキュリティを確立できるようにするためのレシピである。TF-Mは、ソフトウエア部品の構成をいろいろ変えることによって、トラストな実行環境を作り上げるための仕組みで、セキュアなストレージや暗号化、情報の正確さを確認するための構成証明(Attestation)などからなっている。

TF-Mの中にセキュアブート機能とセキュアプロビジョニングも含まれており、必要なソフトウエアのアップグレードをサポートしつつ、不審なファームウエアが勝手にアップデートしないよう防止する役割を持つ。加えて、アマゾンのAWSクラウドのIoT Coreサービスにもつなげられるようになっている。

将来版のPSoC 64 Futureでは、ハードウエアベースの多要素認証や、ストリーミングの暗号化なども追加する。ストリーミングサービスのようなブロードキャスティングではなく、プライベートな用途での応用に使われるという。

さらに、IoTデバイスを開発するためのリファレンスデザインを4種類と、IoTデバイスに組み込むソフトウエア開発ツールのModus Toolbox 2.1も提供する。リファレンスデザインボード(図2)には、村田製作所のWi-Fi/Bluetoothの通信コンボモジュールが搭載されており、インターネットにつながるようになっている。


新しいIoT開発キット

図2 ハードウエアのリファレンスデザインボードも提供 出典:Cypress Semiconductor


図2の左から超低消費電力版設計、低コスト設計、クラウドに接続してもセキュリティが保たれる設計、そして右端がすでに認証済みで、そのまま製品としても使えるボードとなっている。いずれもWi-Fi経由でインターネットにつながる。

IoTの接続も含めたソフトウエア開発ツールModus Toolboxは(図3)、数年前に買収したBroadcomのWicedキットをPSoC開発ツールに組み込んで一本化したもの。

ModusToolbox - 組み込みIoTソフトウエア ツール

図3 Modus Toolboxの機能はIDEからクラウド接続まで豊富に 出典:Cypress Semiconductor


IDE(統合設計環境)だけではなく、RTOSやコンパイラ、デバッガなどが入っており、クラウド接続機能ではAWSだけではなくMicrosoft Azureや自社のクラウドも組み込めるようになっている。ライブラリも豊富になったとしている。

なお、CypressはInfineon Technologiesから買収提案を受け、各国に承認を求めていたが、このほど最後の中国からも承認が得られたため、昨日買収完了を発表した。IoTはInfineonが持っていない分野であり、Cypressとのクルマ用、産業用で相乗効果が大きい。

(2020/04/17)

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