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インテリジェントカーが事故を減らす−カーエレ展から(後編)

クルマをインテリジェントにする場合でも最終的には、アクチュエータを動かすモーターにつながる。そのためのパワートランジスタやICの市場としてもカーエレクトロニクス市場は大きい。ヘッドランプ/テールランプ用LEDドライバや電源IC、小型モータドライブIC、充電ICなどもパワーICも活躍する。パワー関係もいくつか拾ってみる。

フロントライト用のLEDドライバICでは、ロームがハイビームからロービームへの自動切換えに対向車の運転手とその周囲だけをロービームに自動的に切り替える適応型自動ビーム切換え用のチップセットを揃えた。CMOSイメージセンサで対向車を撮影し運転手回りだけをロービームにするためのマトリクススイッチコントローラ(図1)とLEDドライバを展示した。ロームはこの適応型ビーム切換えシステムをチップ化することによって高級車から中級、大衆車まで普及させることが狙いだ。


図: ADB(Adaptive Driving Beam)システム

図1 適応型ビームコントローラ 出典:ローム


ロームはまた、リアLEDのドライバICも展示した。これは従来のドライバICを使わない回路では光のバラつきを吸収するためのチップとなる。定電流回路で制御することで光のバラつきを減らす。調光機能も付けているため一つのICでテールランプもストップランプも制御できる。STも同様な定電流回路ながら、12チャンネル分のLEDストリングを制御する。

Qualcommは、これまでクルマのワイヤレス充電用の送受信回路を発表してきたが、2017年7月にニチコンがワイヤレス充電装置を製作するという契約をニチコンと結び、このほどその開発状況を明らかにした。ニチコンは大容量コンデンサでクルマ市場に食い込んでおり、クルマ用のスイッチングレギュレータ電源などを生産している。ワイヤレス充電器は2021年には製品化したいといている。今は、Qualcommと共同で、充電パッドに乗った金属などの異物を検出する技術を確立し、OEMとも話し合いながら採用につなげたいとする。

パワー半導体では、Fairchild Semiconductorと合併したON Semiconductorは、Fairchildの600〜650Vの高耐圧スーパージャンクションMOSFETやIGBTがそろったため、製品のポートフォリオが広がったとしている(図2)。パワートランジスタ製品だけではなく、チップ提供やモジュールでも提案していく。自動車向け半導体の売り上げは30%を超えたとしている。


図: Power Solutions Group / Automotive Modules

図2 ON SemiconductorはFairchild買収によりパワーICの製品ポートフォリオを広げた


トヨタ自動車はSiCパワートランジスタを搭載するクルマを2020年までに量産化したいと述べているが、SiCの量産実用化は駆動バッテリ用のオンボードチャージャー、さらに降圧インバータから先に始まるだろうという見方をロームが示した。耐圧1200Vで電流95Aを制御するSiC MOSFETを開発済みで製品のラインアップに入っており、自信を示す。オンボードチャージャーは、バッテリ電圧である300V程度まで昇圧し、次段のDC-DCコンバータで12V/48Vに降圧する。高い電圧で充電するのは、充電時間を短縮するためだ。駆動モーターをドライブするインバータは2021〜22年ごろ採用されるのではないかとみている。

SiC化で出遅れたON Semiは、2018年にSiCショットキダイオードをリリースし、MOSFETは2019年を予定している。

耐圧1200VのSiC MOSFETをすでに持っているSTは、SiC化のメリットを訴求している。サーバなどの電源に使うと体積が1/5に小型化したという。SiCインバータも開発しているが、米国のあるクルマメーカーに採用されたとしている。

ロームは、SiCインバータを搭載したフォーミュラE用のクルマメーカーVenturiと提携し、2016年の秋からこのレースに参加している。2014年に始まったフォーミュラEは、電気自動車(EV)だけでしかも出力200kWのモーターで競争するレースだ。IGBTインバータをSiC MOSFETに替えることによって車体を軽くすることが目的である。2016年10月にSiCダイオードだけを搭載した時のインバータは、シリコンIGBTの時の15kgから13kgに軽量化したが、2017年12月にパワートランジスタ部分もSiC MOSFETに替えるとインバータ重量は9kgまで減った。レーシングカーは決まった容量で競うため少しでも軽くしたいという強い要望からSiCに切り替えている。Venturiは欧州モナコのEVに力を入れているメーカーで、ギネスブックに挑戦し、EVで時速549kmを達成している。

参考資料
1. インテリジェントカーが事故を減らす−カーエレ展から(前編) (2018/01/25)

(2018/02/02)

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