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クルマ向けセキュリティ戦略をInfineonが明らかに

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Infineon Technologiesがセキュリティチップ戦略を発表した。様々な用途の中で最もセキュリティ確保の難しい自動車を例として紹介している。パソコンなどと違ってコンピュータ(ECU)が数十個もあるからだ。

図1 Infineon Technologies VP Automotive System GroupのHans Adlkofer氏

図1 Infineon Technologies VP Automotive System GroupのHans Adlkofer氏


なぜクルマにセキュリティが必要になるのか。「これまでのクローズドシステムから通信で外部とつながるようになるからだ」と同社Automotive System Group担当VPのHans Adlkofer氏は言う。クルマが外とつながるようになると、セルラーネットワークとクルマの間、V2VやV2X(クルマと外部との専用通信)、車内でのモバイル機器とクルマとの通信、などハッカーの侵入経路はさまざまありうる(図2)。


図2 クルマは外とのつながりが増える 出典:Infineon Technologies

図2 クルマは外とのつながりが増える 出典:Infineon Technologies


Infineonは図3のようなセキュリティシステムを提案しており、そのための半導体チップを製品化、あるいは開発中である。図3は、すでに製品化されたチップと開発中のチップとの共存のソリューションではあるが、そのコンセプトを紹介する。

クルマと通信ネットワークとの間にまず一つ認証用のチップSLI 76/SLI 97を置く。このチップは、通信オペレータの加入者であることを認証するためのセキュリティ専用ICである。SLI 76は、2009年から出荷してきたICで、通信オペレータ1社に対応していた。さらに、新製品のSLI 97は複数の通信オペレータに対応する。EUのように国境のないところをドライブするときには複数の通信オペレータにまたがることが多いため、この新製品が求められていた。


図3 外とのつながりに対して様々な解を用意する 出典:Infineon Technologies

図3 外とのつながりに対して様々な解を用意する 出典:Infineon Technologies


通信オペレータを認証した後、インフォテインメント系のアプリケーションプロセッサやダッシュボード制御マイコンなどのECUに入るわけだが、モデムを通ってデジタル信号化された後、再びOptiga TPMというセキュリティ専用ICで認証する(図3)。SOTA(Software on the air)のようにソフトウエアをアップデートする場合にこのチップはよく使われる。ここで国際規格のTPMはパソコンやサーバなどのコンピュータでよく使われるTPM(Trusted Platform Module)のこと。さらにOptiga TPMには、認証機能に加え、オンボードキー発生器と鍵の管理機能を持つ。

Optiga TPMを経た後は、ダッシュボード制御やインフォテインメント系の制御は、セキュリティ機能を集積したマイコンAurixで行う。このAurixには起動時にセキュリティを確認するセキュアブートやキー保存、セキュア通信などの機能をステートマシンで実現している。この量産中のAurixマイコンに加え、HSM(Hardware Security Module)を内蔵し、ハードウエアでの対称暗号技術と、ソフトウエアでの対称暗号技術を追加してセキュリティを強化した。さらにソフトウエアでの対称暗号回路をハード化した第2世代のAurixチップTC3xxシリーズは現在開発中で、2018年にリリースする予定である。

テレマティックス/インフォテインメント部分を通った後は、車内のゲートウェイを通り、各ターゲットECUへと分散されていく。ゲートウェイには認証チップOptiga TPMと、開発中の第2世代マイコンAurixでセキュリティを守り、各ターゲットECUのAurix(第1世代で十分のところが多い)へと信号は伝わる。つまりクルマの業務を行うECUのマイコンまでには2段階の認証過程を経る。認証ノードのキーや暗号化キーはセキュアなフラッシュメモリに格納しておく。

Infineonが示したセキュリティソリューションは、将来の自動運転に備えクルマがインターネットクラウドと接続され、さまざまな制御やサービスを提供するためには欠かせない。すなわち、コネクテッドカー時代の到来である。これまでは、日産自動車やトヨタ自動車、メルセデスベンツなどが独自のネットワークの元で通信サービスが展開されてきたが、最近は、当初の勢いがなく会員数も伸び悩んでいる。ある統計によると、2014年時点でつながっている車の数は5%に過ぎないという。テレマティクスは、独自ネットワークよりも汎用のセルラーネットワーク上でつながって初めてビジネスとして本格化する。Infineonのソリューションは将来のつながるクルマに向けた解の一つとなる。

(2016/12/02)

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