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Xilinx、クラウド、ビジョン、IIoT、5Gのメガトレンドに対応力示す

FPGAメーカーのXilinxがARMコアのCPU、GPU、メモリなどを集積したSoCである、「Zynq」に加え、FPGAアクセラレータ応用と共に、四つのメガトレンド(図1)に対応できる体制を整えた。すなわち、クラウドコンピューティング、組み込みビジョンシステム、工業用IoT、そして5Gモバイルネットワークに向けた対応力を示したことになる。

図1 Xilinxが採り込む4つのトレンド 出典:Xilinx

図1 Xilinxが採り込む4つのトレンド 出典:Xilinx


XilinxのZinqは、一般的なCPUやASIC回路、メモリにFPGAを集積したもの。CPUを内蔵しているためソフトウエア対応が可能なうえに、ハードウエアでカスタマイズしたい場合はFPGAで差別化回路を設計できる。同社は、自社の製品ポートフォリオを「オールプログラマブル」と呼んでいる。また、差別化回路やソフトウエアで独自のアルゴリズムを作る場合にプログラミングモデルも開発するためのSDxと呼ぶソフトウエア定義の設計環境も提供する。これによって、スマーター(より賢く)、コネクテッド(インターネットと接続)、差別化の重要な三つのファクタを持つ製品を作るサポートを行う。

四つのトレンドの内、クラウドでは、ストレージとネットワーキング、コンピューティングをさらに高速化するアクセラレータを持つため、CCIx(Cache Coherent Interconnect for Accelerators)インターフェースの仕様策定に向け、コンソーシアムを組むことを5月に発表していた。これは、ARMコアとPower、X86の各アーキテクチャをサポートするインターフェースの仕様であり、異なるISA(命令セットアーキテクチャ)で動作するプロセッサがアクセラレータとメモリ(HBM)を共有できるようにするシステムである。つまり、ARMプロセッサとx86、あるいはコグニティブコンピューティングのPowerアーキテクチャ、どのアーキテクチャでもアクセラレータは同一メモリを共有できるようになる。エコシステムを構成している(図2)。


図2 CCIxインターフェースのエコシステム 出典:Xilinx

図2 CCIxインターフェースのエコシステム 出典:Xilinx


HBM(High Bandwidth Memory)は多数のDRAMをTSVで接続してスタックする技術である。クラウドサーバーやスーパーコンピュータなど、データセンターで使うコンピュータをさらに速くするためのアクセラレータを使うシステムでは、DRAMモジュールはもはや選択肢に残らず、HBMで高速化することでI/Oのボトルネックを解消する(図3)。TSVの特長を最も生かせる応用となる。


図3 FPGAにHBM3次元メモリを搭載したシステム 出典:Xilinx

図3 FPGAにHBM3次元メモリを搭載したシステム 出典:Xilinx


アクセラレータは、CPUへの負担を減らすために設ける演算専用の回路であるが、FPGAで作製すれば、CPUのタスクから独立しているため、CPUの負荷をかけずにシステムを高速化できる。データセンターではアクセラレータとしてFPGAを使うケースが増えている。Xilinxによると、世界のトップ7大大規模のデータセンターの内、3社が採用し、2社が評価中だとしている。

データセンター用のアクセラレータやGPUなど、CPUを補う形のプロセッサはCPUとメモリを共有していなければ、キャッシュとしてのヒット率が下がり演算速度はぐっと落ちてしまう。このため、CCIxはオープンな組織だが、設立される前にIBMはPower 8を使った同様なメモリ共有のためのCAPI、nVidiaはNVLinkインターコネクトというプロトコルを用意していた(参考資料1)。XilinxはCAPIもサポートすると述べている。

Xilinxは、FPGAだけではなく、CPUやメモリGPU、FPGA回路を集積したSoCにも力を入れていく。演算主体のアクセラレータではFPGAで専用演算器に向けるが、それ以外のトレンド、ビジョンシステムやIIoT、5Gモバイル通信ネットワークでは、同社の代表的なSoCであるZynqに力を入れる。ビジョンシステムは、クルマや工場などで物体を認識し、分析するためにCPUとFPGAを利用するだけではなく、多数のイメージセンサを統合するセンサフュージョン(センサハブともいう)にも使う。

IIoTでは、工場の生産効率、飛行機の燃料費の節約などの目的でIoTを利用し、リアルタイムでデータ解析し、顧客の価値を創造する。例えば、FPGA回路でセンサフュージョンを構成し、データ解析はARMコアで行う。さらに安全性とセキュリティも確保するための回路も内蔵する。

5Gの通信システムでは、データレートの高速化(最大10Gbps)だけではなく、低遅延(レイテンシ1ms)、そして低消費電力、という要求性能がある。ZynqのようなCPUとFPGAで、それぞれソフトウエア、ハードウエアで要求性能を実現していく。5Gワイヤレスシステムの試作にはすでにFPGAが多用されている。5Gはまだ規格が流動的である上に、各国の許容周波数帯域がバラバラであるため、FPGAでもCPUでもフレキシブルに対応できる。

半導体プロセスとしてのインパクトは、これらの4大トレンドの他にある。Xilinxは10nmをスキップしていきなり7nmプロセスに飛ぶという。Xilinx製品は、28nmから20nm、16nmへと実績を積んできたが、この後は10nmへ行かずに7nmへいく。製造はもちろん、TSMCが担当する。


参考資料
1. Chip Upstarts Get Coherent with Hybrid Compute, The Next Platform (2016/05/23)

(2016/06/29)

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