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ルネサス、最少のカメラ数で多数のディスプレイに映すSoCを開発

ルネサスエレクトロニクスは、車載向けのカメラ映像を、Ethernetを通じて複数のディスプレイに配信できるSoC「R-Car T2」を開発、サンプル出荷を始めた。このチップを使えば、カメラの使用台数を減らし、軽いEthernetケーブルを使えるため、クルマの軽量化、すなわち燃費改善につなげることが可能になる。

図1 模型のクルマに前後左右4台のカメラを搭載したデモ

図1 模型のクルマに前後左右4台のカメラを搭載したデモ


このチップは、カメラからのビデオデータをH.264で圧縮、Ethernet AVB 1.0インターフェースを通してEthernetに載せることのできるSoCであり、入力から出力までのレイテンシが1ms以下、とリアルタイムで伝送できることが最大の特長。例えば、サラウンドビューモニターで上からの視線の映像を合成する場合、前後左右で4台のカメラからの映像を合成し(図1)、一つのディスプレイに表示するが、前の映像を映すフロントカメラはドライブレコーダの映像も別のディスプレイに同時に映し出すことができる。つまり、カメラをサラウンドビュー用とドライブレコーダ用に兼用できる。すなわち、カメラの台数を減らすことができる。

これまでは、伝送速度だけならLVDS(Low Voltage Differential Signaling)でカメラ映像とディスプレイを直結することはできるが、ピア-ツー-ピア接続しか使えず、他のディスプレイに映し出すことができなかった。LVDSだと最大2Gbpsまでの高速データ伝送が可能だからである。しかし、データを1台のモニターしか写すことができなかった。今回のチップを使えば、Ethernetに送ることができるため、他のディスプレイにも同じ画像を配信できる。

複数のディスプレイに同時に映像を表示するために、レイテンシを1ms以内の抑え、圧縮をフレーム内で行うように工夫したという。H.264エンコーダ規格は、Motion JPEGと比べ画質を落とさず、圧縮できる。1msというレイテンシは、時速100kmで走行するクルマが2.8cm移動する距離に相当する。ほぼリアルタイムといえるだろう。

クルマ技術では安心・安全が大きなテーマであり、ドライバーから見て死角を全て除去することが課題になっている。ADAS(先進ドライバー支援システム)はもちろん、このコンセプトに沿った技術である。これまでの鏡(ミラー)は、バックミラー、ドアミラーとも死角が付きまとう。いっそのことバックミラーもドアミラーもなくしてしまい(参考資料1)、全て液晶やプロジェクタなどのディスプレイに映し出し、死角ゼロにする方がずっと安心だ。このため、カメラとディスプレイがこれから求められる。ただし、その数に関しては増やせばよいという訳ではない。つなぐワイヤーハーネスや端末の重量の増加が燃費を悪くする。ルネサスのチップは、この問題を解決できる。


図2 カメラからの映像データをH.264で圧縮、Ethernetケーブルに出力する

図2 カメラからの映像データをH.264で圧縮、Ethernetケーブルに出力する


ルネサスのR-Car T2では、カメラからの映像データを受け、H.264エンコーダで圧縮し、そのデータパケットをIEEE1722に準拠させた後、Ethernet AVBに準拠したMAC(Media Access Control)回路を通しデータを出力する。Ethernetの物理層を経て、Ethernetケーブルに映像データを出力する(図 2)。ディスプレイ側では、Ethernetからの物理層を経て、Ethernet AVBインターフェースを通し、H.264デコーダで元の映像に戻す。そのままディスプレイに表示してもよいし、画像の歪みを補正したり改善したりする回路を通してディスプレイに映し出してもよい。R-Car T2回路内の制御にはARM Cortex-M3コアを使っている。

ルネサスは、ディスプレイ側にもR-Car V2H製品(出力はHDMI方式)を持っているため、ユーザーはEthernetからの映像データをR-Car V2Hを通して車内のドアミラーやバックミラー、サラウンドビューモニターなどに映し出すことができる。チップセットでユーザーに提案していくとしている。


参考資料
1. 「クルマのドアミラーはもう要らない」 (2014/05/22)

(2015/09/10)

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