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20nmの最先端FPGAやSoCの消費電力を削減するデジタルDC-DCコン

低電圧、大電流の最先端LSI向けの電源は、今やデジタル制御する時代になった。数10mV程度のわずかな電圧単位で、電源電圧を上げたり下げたりするからだ。Alteraが買収したEnpirionは最微細化Gen10のFPGA向け30Aの電源モジュールEM1130を発売した。この降圧DC-DCコンバータは並列仕様で電流容量を拡張できる。

図1 Altera社Power Business部門Worldwide Business Development担当ディレクタのPatrick Wadden氏

図1 Altera社Power Business部門Worldwide Business Development担当ディレクタのPatrick Wadden氏


最先端のLSIは低電圧化が進んでいる半面、動作電流は数Aから10Aを超すようになってきている。過渡的に大電流を流せば電源ラインや信号ラインの電圧が大きく揺らぐため、ノイズを発生するだけではなく受けやすくなる。それを回避するため、電源とFPGAやアプリケーションプロセッサ(SoC)などのデバイスとの距離をできるだけ短くしたい。POL(Point of Load)はそのような電源だ。さらに、デジタル制御も加わったのが、今回発表されたEM1130だ。同社のSoC・FPGAの中でも、特に20nmプロセスで作製されるArria 10とStratix 10の電源に使う。

Alteraは2013年にパワーICメーカーのEnpirionを買収(参考資料1)、FPGAに近づけて使用する電源を確保した。この製品は買収後にデザインされた最初のDC-DCコンバータモジュールである。1パッケージの中にDC-DCコンバータやパワーMOSFET、パスコンデンサ、インダクタ、ドライバなどを集積した、と同社Power Business UnitのWorldwide Business Development部門ディレクタのPatrick Wadden氏(図1)は言う。

コンバータの変換効率を89%と上げることができたため、パッケージは11mm×17mm×5mm(厚)と小さい(図2)。システムメーカー(OEM)にとっては実装基板面積を半減できると見ている。外付け部品は入出力に設けるキャパシタのみ、と同社Power Business UnitのWorldwide Business Development部門ディレクタのPatrick Wadden氏は言う。だから「FPGAを使う回路設計者は、電源のことを気にせずシステム設計に集中できる」(同氏)。


図2 Alteraが発表したEM3310デジタル電源IC

図2 Alteraが発表したEM3310デジタル電源IC


ここで彼らの言うデジタル電源とは、デジタルインターフェースPMBusを利用して、FPGAやプロセッサに供給する電源電圧をデジタルで制御できる、という意味である。検出するのは入力の電圧と電流、出力の電圧と電流、温度である。DC-DCコンバータ内部の電圧制御にデジタル制御を使っている訳ではない。

ただし、今回のデジタル電源は、かつて、Texas Instrumentsがデジタル電源と呼んでいた10年ほど前のデジタル電源とは違う。安定化電源(電圧レギュレータ)は、出力電圧の変動を検出する抵抗から電圧を読み取り、その値をフィードバックしてMOSFETのゲート電圧を調整することで、出力電圧を一定にしている。TIは、このフィードバック信号をアナログではなくデジタルパルスの数の多少で決めていた。このフィードバックにPWM(パルス幅変調)を使う訳だが、このパルスの幅を調整するのに、もっと細かいパルス(サブパルス)を作り出し、サブパルスの数の大小で大きなパルスの幅を調整していた。そのためにTIはDSPを使い、パルス幅を変えていた。今回の電源は、定電圧レギュレータの中は従来通りアナログのパルス幅変調だが、電源の外の制御をデジタル方式で行っている。

この電源は、さらにAlteraがSmartVoltage ID (SmartVID)と呼ぶ、FPGAやSoCの消費電力を削減するための技術もサポートしている。これは例えばArria 10に搭載しているSmartVIDの電力を読み出し、EM1130はその電力なら最も低く下げられる最適な電圧を算出、Arria 10に供給する。これによって消費電力は最大40%削減できるとしている。

もう一つ、外付けのAl電解コンデンサなどのコンデンサが経時変化などの劣化によって変わると、過渡応答速度も変わってしまうため、これをアダプティブに補償するという機能も付いている。スイッチング速度は、350kHz〜1.2MHzまで変えられる。効率が最大になったスピードは、500〜700kHzの範囲だという。

この電源では実は、もう一つデジタルインターフェースを持っている。これは従来のI2Cで、GUIの優れた操作性を活用してプログラミングを容易にするツールを同社は提供するが、これを使う時の非リアルタイムの制御に使う。デバイスをコンフィグレーションしたり、故障を発見、警報を出したりする機能もあるツールである。

このパワーICモジュールは、並列動作で電流を増やすことができる。サポートしているのは30A(1個)から120A(4個)まで。入力電圧は4.5Vから14.5Vまで、出力電圧は0.7Vから5Vまで。出力電圧精度はリップルが10mV未満、負荷端で0.5%未満だとしている。5月からフル生産開始の予定である。

参考資料
1. Alteraが高効率電源メーカーのEnpirionを買収した理由とは? (2013/05/17)

(2015/03/13)

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