セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト
セミコンポータル

ルネサス、車載制御を1種類のマイコンで可能に

|

クルマの安全運転を支援する制御マイコンのプラットフォーム化をルネサスエレクトロニクスが進めている。RH850 P1x-Cシリーズは、制御用マイコン1種類でセンシングとセーフティ、セキュリティ、ネットワークという4つの技術をカバーできる。同社執行役員常務の大村隆司氏(図1)は、技術の四隅と呼ぶ。

図1 ルネサス 執行役員常務の大村隆司氏

図1 ルネサス 執行役員常務の大村隆司氏


自動運転などのクルマのIT化では、「見る・聞く/話す(通信)」という車載情報システムと、クルマの基本機能である「走る・止まる・曲がる」車載制御との連携が不可欠になる。しかし、車載情報システムでハッキングの危険性が増しており、車載情報システムで対応することはもちろんだが、万が一ハッキングされた情報が車載制御に及んでは絶対にダメ。クルマの安全性が損なわれるからだ。このため、両者の間をセキュリティゲートウェイという「壁」で制御している(図2)。外部からのハッキングなどにも耐えうる堅牢性の高い暗号化回路・乱数発生器などセキュアなハードウエア回路をこのマイコンに集積した。もちろん、ソフトウエアでのセキュリティ対策は言うまでもない。


図2 クルマは情報系と車載制御の間に壁を入れてセキュリティを確保 出典:ルネサスエレクトロニクス

図2 クルマは情報系と車載制御の間に壁を入れてセキュリティを確保 出典:ルネサスエレクトロニクス


このマイコンRH850/P1x-CシリーズはCPUを4個持つクアッドコアで、クロック周波数が240MHz。最大8MBのフラッシュメモリ(SONOS構造)と1MBのRAM、ハードウエアセキュリティモジュールと呼ぶセキュリティ回路、ISO26262 ASIL-Dに準拠する機能安全や冗長構成のECCやBIST(Built-in Self Test)、そしてCANやFlexRay、Ethernet、その他のシリアルインタフェースを搭載している(図3)。


図3 車載制御を1種類のマイコンでカバーする 出典:ルネサスエレクトロニクス

図3 車載制御を1種類のマイコンでカバーする 出典:ルネサスエレクトロニクス


ロジックゲート長で定義された40nmプロセスを使い、ワーストケースでの消費電力が0.9Wと低いため、放熱フィンが要らない。高温特性としてはTjmax150℃を保証する。

フラッシュメモリの容量や、CPUコアの数などで製品をスケーラブルに選択できる。例えばハイエンドならクアッドコアと8MBフラッシュ、ミッドレンジならクアッドコアと4MBフラッシュ、スタンダード製品ならデュアルコアと2MBフラッシュ、といった具合にスケーラブルな組み合わせができる。

どのような利用シーンが、こういった広いマイコンを使うのか、自動運転のいくつかのシーンをルネサスは想定している。基本的な動作は、センサ入力からの信号処理や制御情報、演算処理や制御・判断などの処理、データセキュリティ、そしてインタフェースを通して外部ECUなどとのやり取り、あるいはアクチュエータへ直結する。


図4 クワッドコアCPUと4MBフラッシュのミッドレンジ製品を使う利用シーン 出典:ルネサスエレクトロニクス

図4 クワッドコアCPUと4MBフラッシュのミッドレンジ製品を使う利用シーン 出典:ルネサスエレクトロニクス


その利用シーンをミドルレンジ製品の例で見ると(図4)、情報系からのADAS信号をCAN-FDバスで、カメラの映像信号をEthernetバスで受け、それぞれCPU1、CPU2で処理する。この場合、どちらのCPUも冗長構成を採り、CPU1/CPU2同士を比較し、誤りがないかどうかをチェックする。制御データはフラッシュメモリに格納しており、CPUとアクセスする。処理された制御データはハードウエアセキュリティ回路を経て、FlexRayおよびCAN-FDインタフェースから外部へ制御データを送る。外部ではアクチュエータに接続、あるいはもう一つの制御ECUに接続され、更なる信号処理を行う。

ルネサスは、開発ボードの提供はもちろんだが、ユーザーによって異なるセキュリティのサポートや、OEMとの協力によって新しいモデル開発にも備えるためのエコシステムを徐々に拡大していく予定だ。

(2014/11/12)

月別アーカイブ

Copyright(C)2001-2024 Semiconductor Portal Inc., All Rights Reserved.