Vittesse、クラウドサービス提供の仕組みを導入した初のEthernetスイッチ

図1　Vittesseが開発した、次世代クラウド向けサービス提供チップ

これからのクラウドは、従来からあったASP（Application Service Provider）ではない。ASPはインターネット上からアプリケーションなどのソフトウエアを提供するサービス業者である。しかしクラウド時代は、センサネットワークやIoT、ヘルスケアデータの管理など巨大なデータ量を扱わなくてはならなくなる。そうなれば従来のASPとは違い、アプリケーションの注文を受けて配信するといった作業は人手を介さず、完全自動で行うことが求められるようになる。例えば設定はリモートで行う。

クラウド上でサービスを自動で行うためには、サービスの内容を認識し、要求にあったサブスクライバへ正確に自動的に配信する作業が求められる。このようなサービスの品質はMEFが認定したCE2.0規格を満たしている必要がある。

Vittesseの供給する半導体チップJaguar-2（製品名VSC7468）は、パブリックおよびプライベートのクラウドネットワーク上で、サービスを展開する機器向けにCE2.0に準拠した、初めての1チップソリューションである。ネットワーク機器やデータセンター向けのコンピュータ機器のメーカーに納めるチップである。CiscoやNEC、Ericssonなどが潜在顧客となる。

Jaguar-2は、ネットワーク業界で最新のOAM（Operations, Administration and Maintenance：ネットワークの運用、管理、保守）とSAT（Service Activation Testing：サービスがアクティブになっているかどうかのテスト手法） の機能を提供する。このチップを使えば、イーサネットベースのビジネスリクエストをオンデマンドで、しかもリモートでサービスを提供できる。サービスプロバイダは、MEFのCE2.0規格をサポートしなければならないため、このチップを機器に組み込む必要がある。

図2　VittesseのJaguar-2チップのブロック図　出典：Vittesse Semiconductor

このチップは、Vittesseが開発した、ViSAA（Vittesse Service Aware Architecture）アーキテクチャを組み込んでいることが最大の特長。このアーキテクチャは、クラウドの利用者(サブスクライバ)からリクエストがEthernetを通してネットワーク上に来ると、チップがサービスを認識して、ネットワークのクラウドサービス提供者にサービス内容を出力するというもの。例えば、100のMAC（media access control）フレームが欲しいというリクエストをもらうと、フレームを生成し品質をチェックして出力する。従来のネットワークチップでは、サブスクライバからの要求をネットワーク上で受け取っても、そのままネットワーク上で要求データを出力するだけであり、サービスを認識できなかった。新アーキテクチャは、ネットワークレイヤーとサービスレイヤーの二つのレイヤーを1チップに集積しており、ネットワーク上で受け取ったサービス要求を、サービスレイヤーに移行させて、提供する。

クラウド上で高速で対応するため、10GビットEthernetをサポートする同期式の1588規格に準じている。クロックのタイミングを正確に把握するための仕組みVeriTime回路を内蔵する。従来のチップでは、同じ機能を実現するのに、FPGAを外付けしなければならなかった。このチップではFPGAは要らない。ただし、このチップにはCPUコアは集積せず、ステートマシン方式でロジックを組んでいる。今後はセキュリティレイヤーを含めた、レイヤー3ソリューションを提供していくという。

Vittesseは、このチップと、ソフトウエア開発ツールであるCE Service Softwareも同時に提供する。