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照明用LEDドライバが低消費電力化を推進、さまざまな技術が競いあう

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LEDドライバが新しいフェーズに入った。これまで、LED照明を念頭に置いたLEDストリング(LEDチップを直列に多数接続したもの)を並列に数列〜十数列並べたものが多かった。最近、安価で消費電力の削減を図ったドライバが登場、そのアーキテクチャはPFC(力率改善回路)内蔵で0.97以上の力率を改善、電解コンデンサ不要のドライバ、回路の簡素化などさまざまな技術が登場している。

図1 PFC内蔵で力率0.98を達成するFL7701 出典:Fairchild Semiconductor

図1 PFC内蔵で力率0.98を達成するFL7701 出典:Fairchild Semiconductor


いずれのLEDドライバにも調光機能(輝度を調節する機能)がついており、部屋の明るさに応じてLEDの輝度を変えられるようになっている。調光機能を実現するのに、従来のような消費電力の大きなトライアック方式ではなく、すべてPWMを利用している。ここで紹介する米国メーカーの製品は住宅や商業施設向けLED照明を狙った低コストで8ピンのSOICである。

米フェアチャイルド社(Fairchild Semiconductor)は、8ピンSOICにPFCを内蔵したLEDドライバFL7701を製品化した。AC電圧90V〜264Vから全波整流し、LCによるEMIフィルタを通してICに入力する。トランス不要、VCC電源不要、消費電力の大きなスナバー回路不要、寿命の短い電解コンデンサ不要、という優れモノである。入力がDCでも動作する。PFC内蔵と回路の簡素化によって、プリント回路基板に搭載する部品数が最大60%減り、部品コストBOMは20%減少するとしている。

LEDを駆動する場合にパワーMOSFETを外付けする必要があるが、LEDを最大17個直列接続できる。バック方式で降圧するためトランスが不要で、電解コンデンサもいらない、というメリットは大きい。というのはトランスを使うフライバック方式のドライブ回路に使う電解コンデンサの寿命が全ての部品の中で最も短いからである。LEDは長寿命がメリットの一つなのにもかかわらず、電解コンデンサを使うのなら、そのメリットを生かせないことになる。


図2 全波整流だけでICを動かせる 出典:Fairchild Semiconductor

図2 全波整流だけでICを動かせる 出典:Fairchild Semiconductor


米エネルギー省が推奨する省エネルギーの規格EnergyStarでは、力率(無効電力に対する有効電力の割合:交流電圧に対して交流電流が同じ位相なら100%有効電力だが、コイルやコンデンサなどの成分が含まれると位相が遅れ無効電力が発生する)は0.7以上と規定されているが、FL7701は100V〜120Vの交流入力なら0.97以上と極めて高い。LED照明のエネルギー効率を上げるためには力率は高い方が望ましい。欧州で使われる220V〜264Vの交流では力率は0.93〜0.88であり、EnergyStar規格を十分に満足している。

米マキシム社(Maxim Integrated Products)が最近発表したLEDドライバ、MAX16841も電解コンデンサが不要であるとしており、しかも交流90V〜265Vの広い入力範囲を備えている。この製品は調光方式として、トライアック方式とトランジスタ方式の二つを備えており、従来の調光可能な白熱灯をLEDに置き換える用途に向く。

ただし、従来の白熱灯は抵抗式であるため直線性は良いが、LEDは非直線性の電流電圧特性を描く。そこで、ランプの入力電流を独自のトランジスタ回路などで補正することによってフリッカのない調光機能を作ることができた。この製品も体積の大きな電解コンデンサが要らないため実装面積が減る。

製品の単価は1000個購入時で、フェアチャイルドのFL7701が1.27ドル、マキシムのMAX16841は1.35ドルだが、機能を削りさらに安いLEDドライバもある。米インターナショナル・レクティファイア(International Rectifier: IR)のIRS2980は1万個購入時の単価が0.60ドルと最も安い。しかも、調光機能も入れており、パッシブ方式のPFCを外付けすれば力率は0.9になるとしている。

このICも交流電圧からの全波整流を入力するだけで動作し、ICを動作させるためのVCC電圧は要らない。内部にICにバイアス電圧を与えるための高電圧レギュレータを持っているためだ。調光用のPWM発振器を外付けする必要はあるが、デジタル入力でもアナログ入力でも制御できる。調光はポテンショメータを外付けし直流制御電圧を0〜2Vに渡って変えることにより輝度を0~100%の範囲で変えることができる(図3)。加えて、内蔵のレギュレータのオーバーヒートを防ぐため、動作周波数を150kHzに制限するリミッタも内蔵している。

入力の交流電圧は70~240Vであり、世界中の交流電源を直結できる。出力電圧は直流0~50VでパワーMOSFETを駆動する。レギュレートされた出力電流は350mA。力率改善回路は内蔵していないが、ダイオードやコンデンサでパッシブ方式のPFCを外付けすると力率は0.9くらいになるという。


図3 ポテンショメータ外付けで調光機能を簡単に実現 出典:International Rectifier

図3 ポテンショメータ外付けで調光機能を簡単に実現 出典:International Rectifier


IRは、パワーIC製品を専門とするメーカーであり、パワーMOSFETを集積する技術は当然持っているが、このIRS2980にパワーMOSFETを集積しなかったのは、フレキシビリティを持たせるためだと、同社Energy Saving Products BU、LED Group ManagerのPeter Green氏は言う。LEDによって数十mA、数百mAと駆動電流が違う場合でも、パワーMOSFETを外付けしておくと、同じICを使うことができる。

(2011/10/28)

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