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28nmのFPGAはインタポーザ利用でTbps実現、マルチコア内蔵で処理+解析用に

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台湾のTSMCが28nmプロセスの量産を開始、28nmプロセスをベースにしたFPGAを米国のザイリンクス(Xilinx)社とアルテラ(Altera)社がそれぞれ発表した。共に、28nmという微細化プロセスに特長があるのではなく、ザイリンクスはシリコンインタポーザを利用した2.5次元ICを、アルテラは英ARMのCortex-A9のマルチコアを内蔵したCyclone VとArria Vをそれぞれ発表している。

TSMCが用意できたのは、28HP(high performance)と28HPL(high performance low power)、28LP(low power)、28HPM(high performance mobile computing)4つのプロセスである。そのうち前の3つは量産開始しており、28HPMのみ今年末までに量産を開始する。

ザイリンクスのVirtex-7 2000Tは、TSMCの28HPLプロセスを利用している。このチップは、シリコンインタポーザとFPGAチップ4個をTSV(through silicon via)で重ね合わせて接続、合計68億トランジスタに及ぶICである。FPGAチップにTSVで貫通孔、さらにマイクロバンプを設け、配線部となるシリコンのインタポーザにC4バンプを設け、それぞれを接続している。これまでと比べ16〜20倍もの配線密度になる。FPGAチップ同士は直接接続せず、共通のインタポーザの上にFPGAを4列並べる。インタポーザの配線総数は4層。ロジックエレメント数にして200万エレメント、ASICゲートに換算して2000万ゲートになる。消費電力は組み合わせ回路にもよるが20W程度。

ザイリンクスによると、これまで最大規模のモノリシックFPGAは39億トランジスタで98万ロジックエレメントだという。ロジック利用率を考慮して機能的には従来最大のFPGAとして70万ロジックエレメントのFPGAを4個使い、配線で接続する場合と同じ機能を持つとして、消費電力を見積もると、各FPGAが20W、それらを結ぶ配線を駆動するための電力が8Wとして、20W×4個+8W×4個=112Wとなり、消費電力は新製品の5.6倍にも達する。

今回ザイリンクスは、巨大なロジックLSIを4分割し、それらを1個の大きなシリコンインタポーザにフェースダウンで搭載する(図1)。インタポーザは単なる配線層だけであるが、各FPGAのシリコンダイを4層配線で接続している。インタポーザの裏面側に設けているマイクロバンプをプリント基板のバンプに接続した後、キャップを被せて完成する。

ここまで巨大なFPGAになると、Tbpsのデータレートとして通信バックボーンでトラフィックのボトルネック解消への有力デバイスとなる。


図1 4つのFPGAダイをシリコンインターポーザ上に集積、配線後、実装する

図1 4つのFPGAダイをシリコンインターポーザ上に集積、配線後、実装する


アルテラは組み込み狙いで28LPプロセス利用
一方、アルテラのチップは、組み込み用途をターゲットとし、プロセッサにARM Cortex-A9デュアルコアを集積したCyclone VとArria Vファミリを発表している。性能の高いプロセッサコアを搭載した部分と、ハードウエアをプログラムで組み立てる部分の両方を集積することが可能になり、低コストで顧客仕様のカスタマイズを簡単にできるようになる。これによってシステムコストを下げようという狙いがある。

このARMコア搭載のFPGAのデュアルコア部分では、単精度と倍精度の浮動小数点プロセッサや、ECCでメモリの読み出しエラーを補正するL2キャッシュ、Neonメディアプロセッサ、ECC付きのマルチポートメモリコントローラ、QPSI/NANDフラッシュ/NORフラッシュのコントローラ、その他USB2.0やCAN、Ethernetなどの周辺インタフェースなども集積されている。さらに最大10Gbpsの高速トランシーバ、単精度・倍精度・3倍精度のDSPなども集積している。トランシーバはSERDES代わりにもなる。これにより、システムの大半を組み込み系で構成することができ、差別化したい回路だけFPGAでロジックを組むようにできる。

アルテラは開発環境も同時に整備し、ARMベースのソフトウエア開発ツールやFPGA向けのハードウエア開発ツールQsysシステム統合ツール、シミュレーションも用意している。RTLの検証が終了した時点で、デバイス特有のソフトウエアを開発することができ、ハード・ソフトの同時開発が可能になる。これによって、開発期間を短縮できる。

このARMプロセッサ内蔵組込系FPGAは、例えばカメラからの映像信号を処理する回路ではARMベースのビデオ信号処理を行い、映像信号からクルマや人の動きなどを検出・解析するような計算処理をFPGAが受け持つ、というようなサーベイランスへの応用などに向いている。

(2011/10/26)

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