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未来の携帯機器を映し出す半導体がカギとなる、ファブレス成功への道

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1〜2年後のデジタルカメラやビデオカメラはどのような機能を持つようになるか。半導体チップから未来を描けるようになる。CEATECは消費者向けの民生用電子機器の展示が多く、これを最先端と思っていたら大きな間違い。半導体チップを見ているとさらにその先の電子機器が見えてくる。Ambarella社のチップがそれを教えてくれる。

図1 画像&映像処理チップA7Lの主な応用

図1 画像&映像処理チップA7Lの主な応用


元々、画像、映像処理の専門企業のC-CubeやインテルでVLSI設計を手掛けてきた経営陣が設立したアンバレラ(Ambarella)社は、このほど新しいチップA7LとiOneを使った応用シーンをデモンストレーションした。A7Lは、デジタルカメラにも1080pのフルHDビデオで60フレーム/秒、あるいはJPEG処理を150Mpixels/秒の高速撮影ができる上に、画像ノイズを減らしている。例えば画像ノイズは独自のアルゴリズムMCTF(motion compensated temporal filtering)技術によって減らし、60pの従来の映像よりも30pで写した今回のチップによる画像の方がノイズ(ちらつき)は小さいことをデモした。加えて、画像を明るく映すこともでき、写真フィルムの明るさを表すISOで表すと写真1枚当たり1600、3200、6400という高感度画像が可能だ。

昨年のCEATEC時期に発表したA7(参考資料1)もほぼ同等の性能を得ているが、DDR DRAMに画像をやり取りするのに32ビット出力を使っていたために、16ビット並列出力のDDR DRAMが2個必要だった。今回は16ビット並列ですむようにしたためDRAMは1個ですみ、BOMコストを安くできるというメリットがある。A7が45nmプロセスで作られているのに対して、A7Lは32nmで設計されているため、高集積でクロック周波数はA7の528MHzから600MHzへと性能が上がっている。ただし、A7を使ったカメラが市場に出るのは今年の年末、A7Lのカメラは今から設計に入るため2012年になるだろうとしている。

このファブレス半導体メーカーが考えるA7とA7Lとの使い分けは、A7Lの方が高集積であり微細なプロセスを使っているのにもかかわらず、低価格の市場を狙っていることだ。デジカメメーカーにとって、DRAMをはじめとする外付け部品コスト(BOM)が安くなるため、A7Lは大量生産によってコンパクトカメラから1眼レフまで幅広くカバーできると見ている。A7Lの面白い応用として、中国やインドなど乱暴な運転をするクルマの多い国には事故の原因を明らかにするためクルマにカメラを設置するシーンを考えている。特に保険会社と自動車メーカーに話を持っていきたいとしている。

もう一つのiOneチップは、コネクティビティ機能を追加、すなわちWi-Fiによって撮影した画像や映像をカメラから即、インターネットを通じてクラウドや自分のコンピュータに送ったり、あるいはYouTubeに直接上げたりすることができる。しかもタッチスクリーンをサポートし、コネクティブティを標準装備しているアンドロイドのプラットフォームを集積している。コネクティビティ機能のないA7/A7LはμITRONをOSとしているが、iOneはアンドロイドとμITRONの二つのOSをサポートしている。インターネット機能をサクサク使えるようにするため、ウェブ処理にARMのデュアルコアCortex-A9を集積している。

iOneを単なるデジカメやビデオカメラに搭載するのではなく、スマートフォンに搭載するとスマホの新しい使い方を楽しむことができる。iOneチップは1月のCESで発表し、現在サンプル出荷中である。

アンバレラはここ数年急速に伸びてきた企業であり、同社のチップは米国の放送局のカメラやエンコーダに使われているという。また、ヘルメットのカメラに付けてダイビングやスキーなどのシーンで使うGoPro機器に使われている。米国ではGoPro機器にはもっとも数多く同社のチップが使われているという。

コネクティビティの応用の次には、セキュリティ監視用のIPカメラとしての応用を考えている。実は米国ではこのサーベイランス用途が成長市場と見ており、コネクティビティ機能がさらに強化されるため、OSにはLinuxを使う用途が増えると見ている。サーベイランス市場は、現在の低解像度のカメラから高解像度のカメラによって監視機能を増強する動きがある。セキュリティの強化と犯罪防止の観点から、世界的な傾向といえる。


図2 基本回路はプラットフォームとして拡張性を持たせている

図2 基本回路はプラットフォームとして拡張性を持たせている


同社のこのチップの基本構成(図2)は昨年、レポートした(参考資料)ものとほとんど変わらない。画像DSPコアとビデオDSPコアは単純な1個ずつで描かれているが、ノイズキャンセラ機能をDSPで実現しているため、DSPは1個ではなくしかも専用回路も集積したコアになっているとしている。ノイズキャンセラのアルゴリズムをはじめとする美しい画像や映像を実現するためのアルゴリズムこそ、差別化技術である。このため同社の社員400名の内、150名がソフトウエアエンジニアだという。


図3 開発キット

図3 開発キット


ユーザーがこのチップを簡単にカスタマイズするための開発キットをカメラモジュールの形で用意している(図3)。

参考資料
1. 起業からわずか6年間で8品種を立て続けに出荷する米ベンチャーAmbarella社 (2010/10/19)

(2011/10/20)

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