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NXPが高性能ミクストシグナル製品と標準品に注力、ブランド戦略も差別化要因に

NXPセミコンダクターズは、2006年にフィリップスからスピンオフして以来、2008年にモバイル部門を売却、2009年にはホーム部門を売却、2009年から高性能ミクストシグナル分野と標準品分野に注力してきた。このほどそれぞれの分野を強化する活動として、高速・高分解能のデータコンバータを発表すると共に、ブランディング戦略を明らかにした。ブランディングこそ標準品を差別化するための重要な手段と位置付けている。

高性能ミクストシグナル製品の一つとして、消費電力を維持したまま高速のデータコンバータ(A-DおよびD-Aコンバータ)分野を強化し始めた。データコンバータ分野ではアナログデバイセズやテキサスインスツルメンツ、リニアテクノロジなどアナログ半導体メーカーが市場を獲得、地位を築いている。そこにNXPが割り込んできた。一般的なデータコンバータでは勝ち目はない。NXPの狙いはJESD204Aインターフェース狙いである。


高速シリアルインターフェースでSERDESとコンバータをつなぐ

図1 高速シリアルインターフェースでSERDESとコンバータをつなぐ


JESD204Aインターフェースは、データコンバータとSERDES(パラレル-シリアル変換;一般的にはFPGAで実現することが多い)を高速で接続するための規格であり、やり取りのプロトコルが決められている。しかもこの規格とつなげるデータコンバータの分解能は10〜16ビットと高く、データレートは100Mサンプル/秒(Msps)以上と速い。

高速のシリアルインターフェースでは、ノイズに対して強く信号が歪められない、すなわちシグナルインテグリティが高く、高速に信号を伝送しなければならない。このため振幅を800mVと小さくし、CML(電流モード論理)モードを採用している。CMLで動作する場合、差動ロジックの片方が仮に持ち上がるとすると、送信側も受信側も共に持ち上げられるため、電位は変わらず、コモンモードノイズの影響を受けにくいという訳だ。


今回のデータコンバータ製品では、シリアルインターフェースの一つであるJESD204Aインターフェースを使うことで、回路ボードの面積を最大10%削減、信号トレース数を最大80%削減できるため配線層を削減できボードコストを最大25%減らすことができる。また外部ロジックによるチャンネル間の同期制御を減らせるためBOMコストも10%削減できる。こういったメリットを生かし、2010年までに101製品、124種類のデモボードを提供する。

例えば、昨年デュアルの最大750Mspsの10~14ビットD-Aコンバータを製品化したのに続き、シングルおよびデュアルの最大125Mspsの10~16ビットA-Dコンバータを製品化した。さらに最大1.25Gspsの12〜16ビットD-Aコンバータや、最大130Mspsの10~16ビットA-Dコンバータ、複数チャンネルの最大250Mspsの12〜16ビットA-Dコンバータなどの開発が始まっている。プロセスはピュアCMOSを使い、インターリーブをかけたパイプラインアーキテクチャのデータコンバータを設計している。精度の構成にはキャパシタアレイを作り、温度や経時変化に強い製品に仕上げる。デルタシグマ変調方式を利用するコンバータは次世代のアーキテクチャとなるとしている。


図2 JESD204Aインターフェースを使う基地局

図2 JESD204Aインターフェースを使う基地局


狙う市場は、無線基地局や携帯電話の中継基地局、P2P通信、医療検査機器などがある。基地局での通信機器の配線は膨大な数のタコの足のようになりかねない。そのような配線数を減らすのがシリアルインターフェースであり、データコンバータとSERDESとをつなぐのに高速シリアルインターフェースとなる。


オンラインブランディングを推進
NXPは、標準品に対してはウェブの活用に力を入れ始めた。エンジニアは紙媒体よりはオンライン媒体の方に情報源を求める傾向が強いからだ。北米、中国、日本、アジア、欧州の5つの地域に渡ってEDNがエンジニアにアンケートを採った結果、日本以外はオンラインに情報源を求める傾向にはっきりした有意差がみられている。

ホームページはエンジニアが利用しやすい形に構成した。エンジニアが探している製品を機能別、応用別、部品番号別などで検索できるように、さらにエンジニアが求めるサポートを見つけられるように、作っている。加えてオンラインだけではなく、広報活動、広告、Eメール、雑誌、イベント、行動パターンによるターゲッティング、ウェビナー、ホワイトペーパーなどありとあらゆる手段を駆使してブランディングを浸透させていく。


図3 iPhoneのアップストアから無料で製品検索ツールをダウンロード

図3 iPhoneのアップストアから無料で製品検索ツールをダウンロード


さらに、NXPは、iPhoneのアップストアから1万点を超す製品を探すことのできるアプリをダウンロードできるようにした。このスマートフォンのアプリを使えばエンジニアはNXPの製品をこれまでよりも手早くアクセスできるという。このアプリをダウンロードしておけば,iPhoneがたとえつながらない地域にいてもNXPの製品情報を探すことができる、と同社マーケティングコミュニケーション部門VPのサンダー・アーツ氏は言う。

このアプリの存在をアピールするのに使ったのが、SupplyFrameと呼ばれる、毎月300万人のビジターを抱えるエンジニアのコミュニティサイトだ。さまざまなデータシートをストアしているこのSupplyFrame Mediaを使いバナー広告を打つことでこのアプリにリーチさせようという狙いだ。このアプリはiPhoneだけではなくiPadにも適用できる。SupplyFrameは世界中のデータシートを持つサイトとパートナーシップを組み、300万人ものエンジニアのビジターを確保している。

(2010/09/22)

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