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Atom時代の先をすでににらんだImaginationのグラフィックスIPコア

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英Imagination Technologies社のグラフィックスおよびビデオデコーディング用IPであるPOWERVR SGXおよびPOWERVR VXEが米Intel社のモバイルPC用のマイクロプロセッサAtomのチップセットに集積されていることが明らかになったが、このほど同社のグラフィックスIPのロードマップの一部が公開された。

POWERVR Graphics Roadmap


ImaginationのグラフィックスIPであるPOWERVRシリーズのPOWERVR MBXおよびMBXLiteを集積したSoCが今や100機種程度の携帯電話に入っていると同社は見積もっている。これはTexas Instruments社のベースバンドプロセッサチップOMAP2にも集積されており、これがノキアをはじめとする多くの携帯電話機に搭載されている。Atomに搭載されたIPはそのMBXシリーズよりも性能、機能ともにさらに進化したPOWERVR SGXシリーズである。これまでTIの次世代SoCベースバンドプロセッサチップのOMAP3に集積されているが、このOMAP3を搭載した携帯電話機はこれから市場に出ていくところだ。

Atomのコプロセッサともいうべきチップセット(開発コード名Poulsbo)は、グラフィックス機能、ビデオデコード機能をImaginationのIPが受け持つため、CPU(コード名Silverthorne)の演算処理タスクが軽くなり、トータルのシステム性能が上がる。


IntelのAtomプロセッサとそのチップセット(システムコントローラハブ)

IntelのAtomプロセッサとそのチップセット(システムコントローラハブ)


今回ロードマップを発表したPOWERVR SGXは、陰影をつけるシェーダーエンジンUSSE (Universal Scalable Shader Engine) が1~8個の範囲で拡張できるため、要求性能に応じてローエンドからハイエンドまで対応できる。従来のMBXシリーズは固定したシェーダーエンジンしか持っていなかった。加えて、OpenGL2.0もサポートしており、ソフトウエアでグラフィックスプログラムを書くことが容易である。

SGXのアーキテクチャは、消費電力を上げずに性能を上げるため、グラフィックスに必要な陰影の塗りつぶし演算を、ジオメトリ(表面形状)やバーテックス(基本三角形の頂点)の演算と手分して、同時に演算できるようにした。このためシステムのレイテンシは少なくなりスループット、すなわち演算性能が向上した。

この演算を別々に行うための仕掛けがマルチスレッドアーキテクチャだ。USSEは汎用のマルチスレッド型のマルチメディア処理エンジンであるが、グラフィックスや画像作成、ビデオなど計算が必要な演算をこなす。こういった演算を自動的に振り分け、USSEの中でマルチスレッド実行ユニットに分割する。ソフトウエアのプログラミングモデルとコンパイラによって効率良くタスクを実行していく。マルチコアのような一種の並列処理プロセッサになっているため高速に処理できるというわけだ。CPUへの負担が一切ないため、CPUはコンピュータ作業に専念できる。

加えて、後述するタイリング処理、テクスチャ処理、ピクセル処理を高速化するため、それぞれハードウエア回路(コプロセッサ)も内蔵した。タイリングとは、1画面を32×32画素の部分(これをタイルと呼ぶ)に分け、1フレーム内で、画像が変化したタイルだけを計算する。しかもそのタイルでの変化分を検出してパラメータ化する。変化したところだけを検出して扱うため、外部の画像メモリーが少なくて済むだけではなく、バンド幅すなわちデータレートを上げる必要がないため消費電力が減るということになる。

このマルチスレッドプロセッサであるUSSEの数をスケーラブルに変えられるため、その数によってIPの性能は変わる。バーテックス処理性能は2M〜100Mトライアングル/秒、ピクセル性能は100M〜400Mピクセル/秒、65nmプロセスで作る場合チップ面積はその数によって1.5mm2~20.3mm2の範囲である。

現在、ローエンド向けにUSSE1個のPOWERVR SGX520、2個のミッドレンジ向けPOWERVR SGX530、4個のハイエンドPOWERVR SGX535がリリースされているが、ハイエンドのPOWERVR SGX540は間もなく正式にリリースする。さらに性能を追求したPOWERVR SGX545、POWERVR SGX541は設計に入っており、その先にはこれまでとは違う6シリーズのアーキテクチャを研究中である。ちなみにSGX545はシェーディング機能をさらに強化したIPになり、ウルトラモバイルPCなど低消費電力ながら高性能のPCへの応用を狙っていると英国から来日した設計者はいう。

IPビジネスは、SoCに使われるまでに1~2年かかり、そのSoCが携帯機器などの電子機器に使われるのにさらに1~2年かかるため、先端のさらに先端の半導体製品技術を今から開発しておく必要があり、開発力、設計力がずば抜けていなければビジネスにはならない。かつてのARM社のコアが日本の大手企業に採用されてから花開いたように、ImaginationのIPコアはIntel社が搭載することで、これから大ブレークする可能性を秘めている。

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