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オートモーティブワールド2020(3)〜レーダーとMIMOで「見る」機能

79GHzレーダーが4GHz帯域となり、60GHzレーダーが7GHz帯域と広がると共に、MIMOアンテナを使って空間分解能を上げようという技術(図1)が第12回オートモーティブワールドで活発になっている。レーダー波の反射により、物体までの距離、水平・垂直の方位、さらにはドップラー技術で物体の速度まで計測できるようになる。

76/79GHz帯 3D MIMOレーダープラットフォーム

図1 レーダーとMIMOアンテナで対象物が動いているのか接近しているのかがわかる 出典:Analog Devices


クルマのレーダーは、これまで物体の有無を感知(検知)することだけだったが、クルマ用途では空間分解能を上げて「見る」ことができるように発展してきた。レーダーは、対象物との距離や速度(ドップラー効果)を利用して、接近してくるものかどうかを見分けられる。電波の速度は光速一定であることから、自分のクルマの速度はわかっているので、対象物との距離を二つの時刻で測定すれば対象物の速度が求められる。これを数〜数十秒ごとに測り計算すれば刻々と変化する様子を求めることができる。計算速度はミリ波半導体の能力に強く依存する。対象物の変化を捉えられると、この先は認識することができるようになる可能性も出てくる(図2)。


ミリ波Rader

図2 79GHzミリ波レーダー技術のロードマップ 今後「検知」から「見る」、そして「認識」へと発展する可能性がある 出典:ON Semiconductor


図2はON Semiconductorが79GHzミリ波に対するロードマップを示したもので、79GHzレーダーの周波数帯域を広くすることで、空間分解能を上げイメージングとして使えるようになる。

レーダーという電波を使えば、LiDARやカメラのような光を使うものとは違い、カーテンや紙、壁があっても突き抜けることができる。クルマでは視界がきかない悪天候やカーテン越しにでも電波を利用することで「見える」ようになる。ドップラー効果を利用するため、動いている物体の速度も正確に測ることができる。ドップラーレーダーの歴史は古く、実績もある。

レーダー周波数の広帯域化とMIMOアンテナ技術を使うことで、検出する物体の空間分解能を上げることができる。図3はAnalog Devicesが周波数79GHz帯で帯域4GHzでの実験を示したものだが、8チャンネルのMIMOアンテナを32チャンネルのMIMOアンテナにし、さらに1GHzの帯域を4GHzに広げることで、空間分解能が上がり、物体の形状がはっきりと見えるようになる様子を示したものである。


76/79GHz帯 3D MIMOレーダープラットフォーム

図3 79GHzのミリ波電波を帯域1GHzで8チャンネルのアンテナで飛ばした画像(左)から、MIMOアンテナを増やすと二つの物体が分離され(中)、さらに帯域を4GHzに広げると距離や方向もわかる 出典:Analog Devices

Analog Devicesは、国内のレーダーセンサ設計会社のサクラテック社と組み、79GHz帯のレーダーシステムを製作、2台のトランシーバと48チャンネルのMIMOアンテナを利用したレーダープラットフォームを製作した。距離分解能が4cm、水平角度分離性能3度という分解能を得ている。サクラテックは、Windowsベースの制御ソフトウエアも提供している。カメラ画像にレーダー画像を重ねたり、データを保存・再生したりする機能などがソフトウエアに搭載されている。

すでに速報(参考資料1)で伝えたが、Infineonは60GHzミリ波レーダーで帯域7GHzと広げたことで、車内にいる人を見分けられるようになった。60GHz帯のレーダーは、総務省が民間利用できるように計画している。レーダーのイメージング利用は今始まったばかりだ。

参考資料
1. オートモーティブワールド2020(1)〜可動部不要LiDARや60GHzレーダーなど (2020/01/17)
2. オートモーティブワールド2020(2)〜MSなどはなぜクルマに参入するのか (2020/01/22)

(2020/01/28)

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