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Intel、量子コンピュータ制御チップを開発、Qビットが拡張可能に

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量子コンピュータだって、半導体チップで制御しなければ使いものにならない。Intelは量子コンピュータ(ゲート方式)を制御するためのシリコンCMOSコントローラを開発した。量子コンピュータは、量子力学の重ね合わせ原理を使うもので、1と0をほぼ瞬時に重ね合わせることができる超並列コンピュータとなる。しかし制御はそう簡単ではない。

図1 Intelが開発した量子コンピュータ制御チップ 出典:Intel Corp.

図1 Intelが開発した量子コンピュータ制御チップ 出典:Intel Corp.


コード名「Horse Ridge (ホースリッジ)」と呼ばれる、この制御用のミクストシグナルチップを開発したのは、量子コンピュータシステムの開発を早め、設計からテストまでできるようにするため。多数の量子ビット(Qビット)を同時に制御し、ビット数をさらに増やせるようにスケーラブルに対応できる。Intelは、量子ビットの誤り訂正と制御を研究してきており、テストを早めることができる。

これまでの量子コンピュータの研究では、Qビットの試作やテストチップの作製に力を入れてきた。重ね合わせの原理で動作する少ないQビット数でも量子コンピュータは指数関数的なパワーを示してきた。IntelもシリコンスピンQビットと超電導Qビットシステムを設計、テスト、特性評価を行ってきて、量子コンピュータを商用化する上で問題となるボトルネックを発見した。これが配線と制御回路であった。これを解決するのがHorse Ridgeである。

量子コンピュータは、量子力学的な重ね合わせの原理を活用することにより、従来のコンピュータでは扱えないほど問題を解くことができる。すなわち、Qビットを使って多数の状態を同時に表現し解いていく。Qビットはたくさんの計算を同時に解くのである。

Intelは量子コンピュータへの投資では、完全なハードウエアとソフトウエアスタックをカバーする。これまでの量子コンピュータの研究者は、既存のツールと高性能なコンピュータラックの計測器を用いて、冷却器内にある量子システムを従来のコンピュータに接続し、Qビットの性能を評価しシステムをプログラムしてきた。具体的には、個々のQビットをカスタム設計で制御することが多かったため、量子プロセッサを制御するために冷却器に数百本もの配線を接続していた。これでは、Qビットをスケールアップするためには数千本、数万本という配線が必要になり、とても現実的ではなくなる。

そこで、Intelは、計測機能を高集積SoC、Horse Ridgeで実現し、高度な信号処理技術を使い、設定時間を短縮しQビット性能を上げ、ビット数をもっと増やせるようにした。Horse Ridgeは、高集積なミクストシグナルSoCで、冷却器内でQビットを制御できるようにできる限りQビットに近づけた。これによって、数百本の配線をつかわずに1個のパッケージされたICを量子デバイスに近づけることができた。

Horse Ridgeは、RFプロセッサとして動作するように設計されており、冷却器の中でQビット動作を制御する。基本的なQビット動作に相当する命令がこのチップにプログラムされている。具体的には、これらの命令セットをマイクロ波のパルスに変換しQビットの状態を操作するという訳だ。

しかも4Kで動作できるという。従来の量子コンピュータは1/1000K(数ミリK度)の単位まで冷却しなければ動作できなかった。IntelはシリコンスピンのQビットを用いたため、4Kでも動作するという。ミリKを実現するのに必要な高価な冷却器が不要なため、運転コストが安いこともメリットである。

参考資料
1. Intel Introduces ‘Horse Ridge’ to Enable Commercially Viable Quantum Computers

(2019/12/10)

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