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XilinxのFPGA、フィンテックでも威力を発揮

XilinxがFPGAだけを販売するのではなく、FPGAをCPUと共にアクセラレータとして使えるようにパソコンのマザーボードに差し込むだけで済むようなカードAlveoを昨年10月に発表、小型にしたAlveo U50も8月に発表した(参考資料1)。このほど、Alveoが金融分野でも威力を発揮できることをXilinxが明らかにした。

図1 Xilinx社Data Center BU Fintech担当Alastair Richardson氏

図1 Xilinx社Data Center BU Fintech担当Alastair Richardson氏


XilinxのData Center BUでFintech担当のAlastair Richardson氏(図1)は、FPGAが金融分野でも威力を発揮することを世界中にふれ回っている。同氏は、元々JP MorganやCredit Suisseでトレーディングテクノロジーを開発し、FintechのスタートアップではFPGAのユーザーとして、使いこなしてきたという。昨年Xilinxに入社し、FintechでのFPGAの応用を伝道師のように伝えている。折しも、昨年10月にXilinxがFPGAを搭載してプログラムしやすいカードAlveoを発表しており、Alveoの使いやすさはFintechに向いていることも伝えている。Alveoはそのままアクセラレータとして使える。

金融分野では、数msのレイテンシを争う高速トレーディング(High frequency trading)のために、HDDからSSDに代わってきたことはこれまでも報じてきた。高速トレーディングは株式取引をわずか数msで複数の株式を取引する手法である。単なるストレージだけではなく、演算そのものでも計算とネットワーク処理の両方を高速にしなければならなくなってきたために、ソフトウエアではなくハードウエア回路を専用化できるFPGAが求められるようになってきた。

コンピュータ(CPU)システムでは、基本的にソフトウエアによって機能や性能を上げることができるが、CPUにだけ負担をかけすぎると、システムは遅くなってしまう。このため一部をハードウエア化し、演算専用の回路として使い、CPUを通さないようにすれば、CPUの負荷は軽くなり、システムは高速になる。こういった専用のハードウエア回路をアクセラレータと呼ぶが、FPGAはアクセラレータとして働く。

ただ、これまではLSI設計と同様、VHDLやVerilogなどのLSI専用の高級言語で設計しなければならなかった。このため、Xilinxは、プログラマには馴染みのあるC/C++言語でプログラムできるツールを提供している(図2)。FPGAへのプログラミングでは、C/C++言語をRTL(Register Transfer Level)に変換するコンパイラも備えているだけではなく、SDAccelは、さまざまな偏微分方程式や線形代数を解くためのソフトウエアライブラリも揃えている。金融関係でよく使うモンテカルロシミュレーションツールや、デリバティブの価格予想に用いるBlack-Scholesの方程式なども含んでいる。


図2 プログラムするためのソフトウエアも充実 従来の設計環境VIVADOに加え、金融で使いやすいSDAccelも揃えた 出典:Xilinx

図2 プログラムするためのソフトウエアも充実 従来の設計環境VIVADOに加え、金融で使いやすいSDAccelも揃えた 出典:Xilinx(図をクリックで拡大)


今年の8月にはAlveoを小型にしたAlveo U50を発表し、あらゆるサーバに対応でき、あらゆるクラウドで使えることのできるUMC50アクセラレータカードを金融分野に推奨している。大量の演算処理ができることは、例えば130銘柄の株価予想を一度に処理でき、しかも決定することにも対応する。

ベクトル演算やAIのディープラーニングにはGPUが使われているが、FPGAはもちろんどのような演算やアルゴリズムにも使える。GPUは演算は得意でもネットワーク処理ポートがないため、処理できないが、FPGAは演算もネットワーク処理も可能である。

また、FPGAはソフトウエアを使わずにハードウエアだけの専用回路を作れるため、処理速度は何と言っても速い。例えば、デリバティブのプライシングとリスクのモデリングでデータを抽出するのに、モンテカルロシミュレーションを行う場合、CPUを1とすると、GPUだと3倍しか速くならないが、U50は20倍高速に演算できるという(図3)。また、取引のロギングやコンプライアンスに対応する音声認識では、CPUより10倍高速だとしている。

図3 モンテカルロシミュレーションをデリバティブのプライシングとリスクモデル作成に用いると、Alveo U50はCPUより20倍速い 出典:Xilinx

図3 モンテカルロシミュレーションをデリバティブのプライシングとリスクモデル作成に用いると、Alveo U50はCPUより20倍速い 出典:Xilinx


また銀行で使う分散処理のHadoop関数の計算でも、通常はサーバ2台使うところ、サーバ1台で、U50カードを2枚で済み、ノード当たりのスループットが20倍に、総コストは40%削減するという。

Xilinxは国内でもAlveoを普及させるため、AlveoのVAR(Value Added Reseller:付加価値のある小売業者)としてフィックスターズを認定した。

参考資料
1. Xilinx、HBM2搭載で小型・高性能を両立させたFPGA内蔵のSoCカード(2019/08/07)

(2019/09/25)

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