セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト
セミコンポータル

NIが明示した5つの技術トレンド

|

米National Instrumentsが見たこれからの技術トレンドを示した「NI Trend Watch 2018」が10月下旬に開かれたNIDays 2018で発表された(図1)。大きなトレンドは5つある。次世代通信5G、IoT、半導体、クルマのEV化、機械学習(AI)である。イノベーションを起こすカギはやはり半導体にあるため、ムーアの法則の先にあるものを議論した。

図1 NIDaysの最初に講演した日本ナショナルインスツルメンツ代表取締役のコラーナ・マンディップシング氏

図1 NIDaysの最初に講演した日本ナショナルインスツルメンツ代表取締役のコラーナ・マンディップシング氏


5Gは、これまでの4Gまでのワイヤレス通信と違い、新しいアンテナ技術(MIMO)、ミリ波、周波数の利用効率、ヘテロネットワーク接続などが登場する。5G向けの半導体デバイスを各社が開発中である。これらを使って、価値を創造するための手段が5Gだと京都大学の原田博司教授は述べている。データレートを上げるためにミリ波のような高周波だけではなく、マイクロ波やUHFなどの周波数帯で多数のチャンネルを確保して使うことも必要になる。新しい無線技術(New Radio)では、波形整形と符号化(誤り訂正)は必須になるという。また、ミリ波ではビームフォーミングによって、通信者との指向性を高めてゆくことでミリ波のような指向性の高い電波でも基地局と通信できるようになる。


図2 30m離れたセンサ同士の計測データのズレが45nsしかないことを確認

図2 30m離れたセンサ同士の計測データのズレが45nsしかないことを確認


IoTでは、鉱山で1台の重機に取り付けた多数のIoTセンサを管理するため、各IoTセンサ間で同期をとる必要がある。さもなければ、データの到着が遅れてくることで何を測定しているのかわからなくなってしまう。NIは測定ハードウエアのコストを下げるため、TSN(Time Sensitive Network)対応のCompactDAQ Ethernetを提案した。TSNはEthernetを使って同期をとるため技術であり、LANケーブルで30メートル離れた計測器CompactDAQの入力波形と位相のずれを観測したところ、位相はわずか45nsしかずれていなかった(図2)。つまり、ほぼ同じデータを取得したことになる。

IoTを推進している企業の一つとしてNIはBoschを紹介した。鉱山の例で紹介したクボタやコマツはBoschのユーザーであり、民生ではソニーも顧客だという。BoschはこれまでIoTのMEMSセンサを開発してきた上に、プラットフォームやネットワークも扱ってきており、さらにツールボックス「Bosch IoT Suite」をクラウド上で展開している(図3)。セキュリティの高いブロックチェーンでAIともつなげることでエンド・ツー・エンドのソリューションも提供している。


図3 BoschはMEMSセンサからIoTツールまで扱う

図3 BoschはMEMSセンサからIoTツールまで扱う


MEMSデバイスからクラウド上でのツールボックスと、これほど広いIoTシステムを扱っているBoschでさえ、IoTでは1社では何もできないと講演したBosch Software Innovations社Asia-Pacific Regional PresidentのThomas Jakob氏は述べている。このため、ビジネス協力、技術協力、システムインテグレータ、標準化、オープンソース、戦略的アライアンスなどさまざまな企業とパートナーシップを組んでいる。こうした活動を経て、現在500以上のIoTプロジェクトを展開し、600万個のデバイスをネットにつなげている。同社には3500名のIoT専門家がおり、2015年の段階で5400件の特許を持つ。

クルマのトレンドは、EV化と自動運転だ。従来の制御系の加速度やジャイロ、圧力などのセンサなどは、例えばハンドルを切る場合に様々なデータが同時にやってくるが、各ECUに各データが入るのに同時性、すなわち同期が求められる。ここでもTSNの概念は重要である。

加えて、従来のエンジン走行でのシミュレーションはHILS(Hardware in the Loop Simulation)などで経験があるものの、EV車両の走行性能や問題点を予め把握するためのシミュレーションテストも重要だ。クルマを駆動するためのECUから、インバータとその先のモーターやバッテリパックへの駆動回路もシミュレーションしておきたい。さらに、制御系のセンサ信号から振動や安定性など車両本体への影響を把握する。センサ信号から制御系への反応までを1.2µs以下に維持したいという。こういったシミュレーションテストをHILSでSUBARUが行ったシミュレーションの例では、従来6000時間かかるテストが118時間に短縮できたとしている。

そして半導体そのものでは、IoTなどでセンサやアナログが多用されるため、アナログテスターはますます需要が高まる。NIの狙いはここにある。アナログやセンサのテスターでは、デジタルほどの微細化はまだ主流ではないため、ムーアの法則がまだ成り立つ領域であり、ここにビジネスチャンスがあるとみている。さらにムーアの法則がたとえ行き詰まったとしても、3次元化は避けられず、NANDフラッシュのようにチップ内での3次元化が始まった製品もある。今後ロジックで3D-ICの需要は必ず増えてくる。当面はHBM(High Bandwidth Memory)のようなハイエンドの3D/2.5Dのハイブリッドやインターポーザの使用などから始まり、いずれスマホの世界にもやってくることになる。スマホシステムの集積度を高めるという要求が尽きないからだ。NIは3D-ICのマイクロバンプの接続性試験の検討をすでに始めている。

アナログやセンサ、パワーなどのICチップを狙った半導体専用テスターのSTS(Semiconductor Test System)製品は、急成長しており、RF関係のテスト需要も高いという。5GやWi-Fi、Bluetooth、などワイヤレスを使う技術は大量に控えているからだ。そのための24チャンネルのSMU(Source Measurement Unit)も発表した。これは大量のセンサやIoTデバイスからの信号を模擬して発信する装置である。NIが提供している測定ハードウエアであるPXIシャーシ(筐体)にSMUなどの測定ボードを差し込みRF系やベースバンド系のチップを測定する。

AI向けのアルゴリズム開発としてなじみのある言語であるPythonもLabVIEW上で使えるように今回のLabVIEW 2017に実装した。このLabVIEWを使うと、機械学習(AI)のエッジデバイスへの実装が可能になる。一般的に言われていることだが、工業分野における機械学習は、予知保全、エンジニアリングの検証、製造ラインでのテストなどに使われるとさらりと述べている。

(2017/10/31)

月別アーカイブ

Copyright(C)2001-2024 Semiconductor Portal Inc., All Rights Reserved.