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Intel傘下のWind River、コネクテッドカー向け基本ソフトを発売

Intelの1部門となったWind Riverは、コネクテッドカーに必要なソフトウエア開発のためのソフトウエアプラットフォーム製品を3種類リリースした(図1)。ADASと自律運転用のHelix Driveと、インフォテインメント向けのHelix Cockpit、そして無線通信でソフトウエアを更新するためのHelix CarSyncである。

図1 Wind Riverが提供するソフトウエアプラットフォーム 出典:Wind River

図1 Wind Riverが提供するソフトウエアプラットフォーム 出典:Wind River


Wind Riverは、VxWorks製品を代表とする組み込み向けRTOS(リアルタイムOS)を代表的な製品とするソフトウエアベンダーで、RTOSの市場シェアは34%、組み込みLinuxでもシェアは57%だとしている。2009年にIntelの傘下に入り、これまではネットワーク機器や工業用機器、コネクテッドカー、宇宙航空の分野での実績があった。同社Connected Vehicle ProductsのヘッドであるAravind Ratnam氏(図2)によると、同社の製品はミッションクリティカルな応用で使われてきたという。


図2 Wind River社Connected Vehicle ProductsのヘッドAravind Ratnam氏

図2 Wind River社Connected Vehicle ProductsのヘッドAravind Ratnam氏


これらの組み込みシステムでの経験から自動運転の分野にも、Intelのクルマへのシフトと同時にすぐに参入できた。しかも1970年代までのクルマにはソフトウエアがほとんどなかったが、クルマのコストに占めるソフトウエアの比重がますます高まっている。ソフトウエアは2025年にクルマコスト全体の半分に迫ってくるという予測をLux Research 社がしている(図3)。


図3 クルマのコストに占めるソフトウエアの比重はますます高まる 出典:Wind River

図3 クルマのコストに占めるソフトウエアの比重はますます高まる 出典:Wind River


その内の半分に相当する全体の25%がソフトウエアで、残りの25%はクルマのユーザーのエクスペリエンスに関係する部分になるという。これは、AppleがiPodを発表すると同時にiTuneというサービスを立ち上げ、アプリケーションソフトや映画を配信するサービスを行ったのと同様、Wind Riverもソフトウエアプラットフォームを提供し、クルマの運転中のエクスペリエンスに関係するアプリやサービスを提供するようなもの、とRatnam氏は説明する。

クルマのソフトウエアは、クルマの産業構造までも変革する。クルマの製造では、OEM(クルマメーカー)を頂点として、デンソーやBoschのようなティア1サプライヤやInfineonやルネサスのようなティア2サプライヤなどで構成されてきた。ソフトウエアベンダーは半導体部品ベンダーに近いが、独立したような存在だったという。この構造が崩れ、今後、半導体メーカーもソフトベンダーも直接OEMとつながったり、ティア1と競合したりするようになり、ソフトもハードもまとめるシステムインテグレータがOEMに納入するようになるという(図4)。


図4 自動車産業の垂直統合構造は崩れつつある 出典:Wind River

図4 自動車産業の垂直統合構造は崩れつつある 出典:Wind River


今回、Wind Riverが提供するソフトウエアプラットフォームは、ミドルウエア的なものに近い。制御系に使うHelix Driveは、VxWorksをベースにクルマの安全規格ISO26262に準拠しており、仮想化にも対応する。レイヤー構造のセンサフュージョンにも対応し、タイミングを定義する言語を使う。自律運転に必要なソフトウエアプラットフォームであり、半導体チップの拡張ソフトウエアをアドオンする場合にはCPUやGPUなどに焼き付けられる。ASIL-Dの安全基準を満たしているという。特に、CPUではIntel、ARM、ルネサスなどをサポートしているとしている。

Helix Cockpitは、インフォテインメントやダッシュボードの表示を作成するためのソフトでオープンソースのツールであり、セキュリティが担保されているという。Helix CarSyncは、クラウドからECUに内蔵されたソフトウエアを更新するOTAのためのプラットフォームである。更新では、OEMからクルマのマスターECUで更新情報を受け、OS診断機能を持つCarSync Agentを通してバージョン確認やインストールを行う。さらに各ECUへCANバスを通して更新する。最後にOEMへ受け取り情報を送り、更新作業は完了する。

Wind Riverは、これらのソフトウエアプラットフォームはセキュリティの基準にも準拠しており、これらの製品を提供することで、コネクテッドカーの商用化を進めるとみている。クルマに搭載されている基本ソフトなどに、もし脆弱性を見つけたら、OTAで更新できるようになる。

(2017/05/18)

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