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IBM、3段階のAIについて語る

日本IBMは、IBM Watson Summit 2017を都内で開催、AIとクラウドが今後ますます結びつきを強め、それらを利用することで業務改革をさらに進められることを示した。これまでIBMは人工知能(AI)とは言わずコグニティブコンピューティングと呼んでいたが、このSummitではAIやマシンラーニングとの違いを明確に示した。

図1 IBMのHybrid Cloud兼IBM Research Director担当Corporate Senior VPのArvind Krishna氏

図1 IBMのHybrid Cloud兼IBM Research Director担当Corporate Senior VPのArvind Krishna氏


AIでは、データがすべてだ。IoTセンサからのデータやビジネスからのデータなどさまざまなアナログの生データがあふれている。IBMのHybrid Cloud兼IBM Research Director担当Corporate Senior VPのArvind Krishna氏(図1)は、「毎日作成されるデータは2.5EB(エクサバイト:10の18乗バイト)。世界中のデータの90%はこの2年間で作成され、世界の科学技術レポートは9年ごとに2倍のペースで増えていく」と述べ、「ではどうやってデータを扱うのか。それがAIだ」と断言する。もはや、プログラミングではない。ルールでもない、従来のコンピューティングでもない。

AIの最初の基礎段階はマシンラーニングと呼ばれ、ここでは、統計アルゴリズムを使い、パターン認識を可能にし、データドリブンの予測を行ってきた。次の段階がAIであり、自然言語処理から始める。学習によって知識を蓄え、推論を行う。例えばコールセンターへの応用では、Q&Aのやり取りを中心に行う。これによってユーザーは、効率よく解決策を知ることができるが、マシンラーニングによる答えはブラックボックスであり、その中身の理由についてはわからない。

しかし人間は、答えを知ってもその答えの背景にあるものが何かを知りたくて、しかもどのような証拠があるのかについても知りたい。これが次のステップになるコグニティブコンピューティングだ。どのようにして判断を決めるのか、どのようにして、深いドメインに対しても理由付けを行うのかを決めなくてはならない。IoTのセンサから温度や振動、摩耗などのデータを処理し、判断するのかを決めなくては予防メインテナンスをできない。温度や摩耗などの状況が起きるまで待って決める必要がある。これらの意思決定を、クラウドを通じて行う。

コグニティブコンピューティング「ワトソン」は、対話による意思決定、専門領域に対する推論、エビデンスに基づく説明を行うとしており、あくまでもビジネス用途を想定している。ワトソンのAPI(Application Program Interface)は(図2)、ビジネスのためのAIの頭脳として用意している。すなわち、知識の編成、高度な推論、言語処理、共感、スピーチ(音声認識処理)、ビジョン(認識処理)がワトソンのスキルである。アプリケーションの開発にこれらのスキルをクラウドベースで使うことを前提としている。


図2 IBMワトソンは、さまざまなAPIを用意している

図2 IBMワトソンは、さまざまなAPIを用意している


コグニティブコンピューティングは、限られた専門性のある分野での応用をビジネスとしている。そのために業界に特化した学習済みのワトソンを、製造業や自治体、コールセンター、セキュリティなど80種類ラインアップを揃えた(図3)。


図3 業界に特化した学習済みワトソンを80種類そろえた これを使えば、推論のアルゴリズムさえ開発すれば業務をAIに任せることが可能になる

図3 業界に特化した学習済みワトソンを80種類そろえた これを使えば、推論のアルゴリズムさえ開発すれば業務をAIに任せることが可能になる


Krishna氏にIBMが開発したニューロチップTrueNorthについて聞いてみると、TrueNorthはアクセラレータの一つと位置付けているという。このニューロチップは消費電力が70mWと3桁小さいので、今のところエッジ応用を想定している。ニューロチップは、CNN/DNN(畳み込みニューラルネットワーク/ディープニューラルネットワーク)などの画像認識のためのアルゴリズムによる応用に向き、バイオサイエンスのブレインワークとは違うとしている。例えば、CMOSイメージセンサの後段においてビデオ処理するのに向くという。もう一つの応用は、モバイルAIだろうと述べている。

(2017/05/02)

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