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Maxim、SerDesチップでクルマ用IC売上を拡大

アナログとミクストシグナル用半導体デバイスを手掛けている米Maxim Integratedは、クルマ市場の拡大を狙っている。クルマの未来はADAS(先進ドライバ支援システム)や自動運転などに向け進んでいる。カメラの使用はますます増え、1台に10台のカメラが乗る日はそう遠くはない。まずは映像信号を少ない配線でECUへ送るためのSerDesチップ(図1)に力を入れている。

図1 クルマ用次世代高速通信を目指すSerDesチップ 出典: Maxim Integrated

図1 クルマ用次世代高速通信を目指すSerDesチップ 出典: Maxim Integrated


Maximは、製品ポートフォリオのバランスをとろうとしており、クルマ用と工業用の合計が50%、民生・通信・コンピュータで50%を割り当てている。今のところはクルマ・工業用が45%だからこちらをもう少し強化していく、と同社オートモーティブWW販売・マーケティング担当VPのKent Robinett氏は語っている。

一般にシステムは中央からエッジの方へと広がり、それぞれ分散しており、中央を賢くしてきたが、これからは中央もエッジも共にスマートにするように変わってきている。このために、高精度な測定、堅固でセキュアな通信、省エネ、小型化、という方向でスマートに(賢く)システムを変えていくことになる。Maximの製品ポートフォリオがこれらのトレンドに対応するためには、高精度にはもともと高性能アナログの会社であるから問題はないが、通信には高速インターフェース、省エネには高効率なパワーマネジメントIC(PMIC)、小型化には高集積化、というソリューションで対応する。

クルマ市場も同様のソリューションで対応する。ただし、この市場では、安全性は絶対的であり、ゼロ欠陥を目指す。加えてノイズだらけの環境の中で電子回路を動かすための技術も必要。ECUの数が増えると共に、それらを動かすPMICも増えていく。クルマでは消費電力の低減、高集積化によるスペースの確保、燃費改善のための軽量化という要求が強い。例えばPMICでは電源出力数も増やし15出力や、あるいは診断機能も集積する、といったIC開発が行われている。

クルマ用半導体の数量は、より多くのUSBポートや、より多くのマイコンやプロセッサ、より多くの電源用PMICが必要となる。Maximは、2015年から2018年までのクルマ用ICの数量は年率14%で増えていくとみている(図2)。パワーICにとってはディスプレイ市場も魅力的。将来のクルマは中央のインフォテインメント向けのカーナビ含むディスプレイだけではなく、HUD(ヘッドアップディスプレイ)、ダッシュボードのメータ類やドアミラー、バックミラーなどのミラーのディスプレイへの置き換え用途もある。最大6台のディスプレイが付く可能性はあるという。


図2 クルマ用ICは年率14%で成長 出典:Maxim Integrated

図2 クルマ用ICは年率14%で成長 出典:Maxim Integrated


コネクテッドカーとしての無線通信機能を付けたECUも増えてきそうだ。ECUが増えれば増えるほど、ECU同士をつなぐケーブルも増加しがちになる。FMラジオやデジタルテレビ、リモコンなどの無線回路が増えてもそれらは従来、有線でつなげていた。このため、ケーブルの重量が問題になってくる。そこで、Maximは、有線は1本だけですませ、その代わり高速のシリアルインターフェースを使って信号を送ることを提案している。

高速シリアル信号通信に必要なのがSerDesチップ(シリアライザ/デシリアライザ:並列を直列に、直列を並列にそれぞれ変換するスイッチIC)だ。同社は最大3Gbpsと高速の独自インターフェースを提案しており、それをGMSL(Gigabit Multimedia Serial Link)リンクと呼んでいる。独自規格を推進したのは、市場要求はいつも違うものが続々出てくるため、標準規格がなかなかできないからだ、とRobinett氏は述べている。

同社のSerDesチップ「MAX9286」はADAS(先進ドライバ支援システム)やサラウンドビューモニターのような複数台のカメラ映像の信号線を4組の映像ラインではなく、1組のラインだけを束ねることは有効だ。SerDesチップは4組の信号線を1組に減らすことができるため、1組にまとめてからグラフィックスプロセッサに送る。グラフィックスプロセッサ側で並列に戻すことも可能だ。


図3 さまざまなカメラ映像を少ない配線で結ぶためのSerDes 出典:Maxim Integrated

図3 さまざまなカメラ映像を少ない配線で結ぶためのSerDes 出典:Maxim Integrated


将来、サラウンドビューカメラだけでなく、赤外線カメラと一般の可視光線カメラなどをはじめ、バックモニター、HUD、AVボックスなどさまざまな入力がいろいろなECUに入ることを考えると(図3)、こういったSerDesチップはクルマには欠かせなくなる。

(2017/04/22)

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