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IIoTアーキテクチャが鮮明になってきたNIWeek 2015 (1)

ソフトウエアベースの測定器メーカーNational Instruments社が毎年夏に開催するNIWeek(図1)では、必ず大きな技術のトレンドについてディスカッションされている。昨年は、IoTを工業用IoT (IIoT) に集中することを表明すると共に、もう一つの流れである、Software-Defined xxx、あるいはSoftware-Designed xxxに関しても述べていた。今年はどうか。

図1 基調講演の最初はドクターTこと、NI社CEOのDr. James Truchard氏

図1 基調講演の最初はドクターTこと、NI社CEOのDr. James Truchard氏


IoTシステムを使った一つの例としてIndustry 4.0というコンセプトがあるが、この言葉は出ず、むしろスマートファクトリというような言葉を使う。すなわち、IoT云々や、XX 2.0やxx 4.0などという抽象的なコンセプトに留まらない。IoTを議論する時代はもう終わった。すでに具体例を示す競争に替わってきた。IoT 2.0と呼んでもよいかもしれない。

そのための工業用IoTのシステムアーキテクチャとして、従来のアナログビッグデータから、エッジコンピューティングへの変化が鮮明になってきた。NIが今回明確にしたアーキテクチャは、IoT端末側に演算処理をしたのちにコネクティビティ機能を持たせようというものである(図2)。このアーキテクチャは、センサ端末とも言うべきIoTからのデータをゲートウェイに集めてモバイルネットワークやWi-Fiを通してクラウドに送るのではなく、IoT端末側あるいはゲートウェイである程度、データ処理をして有効なデータのみをクラウドに上げようと考えである。だからこそ、IoT端末は全てスマート化することになる。測定器はスマート測定器、自動テスターATEはスマートテスター、この概念は横に広がり、スマートグリッド、スマートパワー(電力)、スマートマシン、スマート通信などへ拡張していく。今回、NIはスマートテスターを数種類発表した。


図2 整理されないデータが圧倒的に増えてくる 出典:National Instruments

図2 整理されないデータが圧倒的に増えてくる 出典:National Instruments


この背景にあるものは、データ爆発である。特にここ最近のデータの増え方が著しい。まずデータそのものの量は、NIが本格的に活動を始めた1986年以降に収集したデータは今や22EB(エクサバイト)にも達するようになった。また、フランスのCERN(欧州原子核研究機構)が収集したデータは、20年間で100PB(ペタバイト)以上にもなるが、ここ3年間だけで75PBにも達する。そのデータは整理されていない、「アナログビッグデータ」といえるもの。このままだと、2020年までに整理されないデータがあまりにも膨大になってしまう。

そこで、クラウドに上げる前にデータを整理しておこう、という考えがエッジコンピューティングである。このノードでの機能は図3のように、データのやり取り(interact)、演算(compute)、つながる(connect)という基本機能で表される。生のアナログビッグデータは実際の物理世界のデータ(センサからのデータ)とやり取りをし、演算することでデータを整理する。図2のUnstructured dataとは、まだ整理されていない生のデータという意味であり、演算し整理した後は、整理されたデータ(Structured data)となる。そして整理されたデータをクラウドとつなげる(connect)のである。この考えを例えば風力発電に応用するなら、風力発電所に演算用のローカルサーバを持つことになる。回路的には、センサ/アナログ処理部からマイコンではなく、FPGAにつながり、さらに演算用のCPUにもつながる、という構成だ。FPGAはハードでの計算、CPUはソフトでの計算を行い、演算出力はインターネットへつながる。


図3 IoT端末ノードでも演算が必要になってくる 出典:National Instruments

図3 IoT端末ノードでも演算が必要になってくる 出典:National Instruments


IIoTはこれまでと違ってもっと複雑になる。少なくともここではセンサ端末と同義ではなくなる。演算リッチなCPUとハードウエアを高速化するFPGAを備え、大量のデータ処理を行う。さらに、高信頼性、低遅延、高セキュリティ、アップグレード可能なこと、などの要求が新たに加わることになる(図4)。


図4 IIoTの概念がもっと明確になる 出典:National Instruments

図4 IIoTの概念がもっと明確になる 出典:National Instruments


次回は、IIoTの具体例として、(1)移植を待つ少女の心臓をシミュレーションすることで、移植すべき心臓が入手できたら、ただちに移植手術に踏み切れるように前もって準備するシステム、(2)欧州のクルマの事故対応システムeCallに応用した例、(3)超音波による非破壊検査をたちどころに可視化したIoTシステム、(4)オーディオコーデックを開発する半導体メーカーをサポートするビッグデータ解析会社、などを紹介する。

参考資料
1. IIoTアーキテクチャが鮮明になってきたNIWeek 2015 (2) (2015/08/13)

(2015/08/05)

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