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クアルコム、血圧測定データを医師に届ける通信機器の実用実験を開始

クアルコムは、遠隔地の住民を対象にした、ヘルスケア情報を札幌医科大学の医師に送り患者の身体状況をモニターするという実験を始めた。医療用・ヘルスケア用のワイヤレスチップ実現に向けた第一歩となる。この実験には医療関係の社団法人MedPAも参加している。

クアルコムの在宅血圧測定実験がスタート

図1 クアルコムの在宅血圧測定実験がスタート
クアルコムジャパンの山田純社長(左)、札幌医大の島本和明学長(左から2番目)、Qualcomm本社Eric Gavinアナリスト(右から2番目)、MedPA西山正徳代表理事(右)


医者不足、ベッド不足、高齢化社会、こういった慢性的な問題が顕在化している中で、健康を常に自宅で管理し病院へ行かずに在宅医療できる環境は世界的に強く望まれている。インテルやアナログ・デバイセズなどが医療用半導体の開発に力を入れているのは、ここに将来の一大市場が開けると見ているからだ。そういったヘルスケア用半導体チップへの第一歩として、今回のクアルコムの実験は位置付けられる。

今回の実験では、慢性的な医者不足に陥っている過疎地や遠隔地で行う。すでに街の病院へのアクセスが極めて悪いからだ。札幌医大では、かねてから定期的に人口の出入りの少ない農村を選び、20年間住民の健康診断、特に血圧測定を行ってきた。北海道の有珠郡壮瞥町と北見市端野での20年間のデータを元に、家庭での測定と、病院での測定との違いを明確にし、さらに脳卒中などの脳心血管死亡率と高血圧との相関も明確にして、正常な血圧値と高血圧との基準値(境界値)を求めた。その結果、家庭では、135/85mmHg、病院では140/90mmHgという基準値を得た。これらの基準値よりも大きいと高血圧となり、脳心血管死亡率も高まる。

在宅で住民が血圧を朝晩1回ずつ測定し、そのデータを札幌医大に送ることで、医大では早期診断、早期警告ができ病気を未然に防ぐことができる。札幌医科大学の島本和明学長によると、住民測定してもそのデータを紙に書かせる従来の方式では、平均値ではなく低い値を書きたがる傾向があるという。電子データだとそのバイアスがかからないため有効な実験につながると見ている。今回の実験はクアルコムが資金を提供し、1年間実験を行い、ビジネスに乗せることができるかどうかを見ていく。

このシステムはクアルコムのM2M(machine-to-machine)通信モジュールを用いて、それを入れた専用の通信機器をケルコムが製作した。この3Gネットワークを利用する通信モジュールは、3G携帯電話と同じRFとベースバンド・モデム部分を持ちながら、データだけを通信するという機能を持つ。血圧を自宅で測定しそのデータをこの通信機器に接続、その血圧データを札幌医大に3Gネットワークを使って飛ばすというもの。


図2 医師へデータを送るM2M通信機(右)と血圧計

図2 医師へデータを送るM2M通信機(右)と血圧計


クアルコムでは、2006年にWireless Reachプロジェクトを立ち上げ、これまでに世界28カ国、56プロジェクトを手掛け、医療サービスの行き届かない場所に向け通信モジュールを提供してきた。今回の実験は、日本での第一号のWireless Reachプロジェクトとなる。

インテルや ベルギーIMEC、フランスLETI、英Toumazなどが競争して開発している医療用通信チップは、日本で開発しても厚生労働省の認可が必要で、そう簡単には市販できないだろうと見られている。今回の実験でMedPA(メディカル・プラットフォーム・エイシア)という社団法人が参加しているが、西山正徳代表理事は前厚生労働省健康局長を務めた人物であり、19名の理事にはさまざまな大学の医学部、製薬会社、病院などの関係者が名を連ねている。今回のプロジェクトが成功すれば厚労省への大きな実績とプレッシャーになる。ヘルスケアチップの実現、認可が早まることになる。となれば日本の半導体メーカーもこのビジネスへの参入を急ぐべき時期に来ている。

もともとファブレスのクアルコムは、M2Mチップを設計するが、通信機は作らない。通信機器メーカーとのパートナーシップがビジネスには欠かせないと見られる。

(2010/07/23)

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