セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト
セミコンポータル

インテル、IMEC、ベルギー5大学が共同でエクサスケールコンピュータ開発に着手

インテルがIMEC、ベルギーの5大学と共同で、現在最先端のスーパーコンピュータの1000倍という性能を持つコンピュータシステムを共同開発する。このための施設として、ベルギーのIMEC内にエクササイエンス研究所(Flanders ExaScience Lab)を設立した。エクサ(Exa)は10の18乗という単位で、現在最高性能であるぺタFLOPS(floating operations per second)の1000倍に当たる。

エクサスケールは10年後に実現する計画

エクサスケールは10年後に実現する計画


インテルは、欧州にIntel Labs Europeと呼ぶ研究所を持ち、2009年1月からHPC(high performance computer:いわゆるスーパーコンピュータ)プロジェクトについて検討を行ってきた。今回、新しい組織ができたということで、このプロジェクトを進めることができる。フランダース地方の5大学とは、アントワープ大学、ゲント大学、ハッセルト大学、ルーベンカトリック教大学、フリエブリュッセル大学である。

エクサスケールのコンピュータはこれから開発検討を行う訳だが、ぺタ(Peta:10の15乗)スケールは昨年できた、とインテルの代表者は述べた。エクサの単位は、今のパソコンを5000万台並べた性能に匹敵する、とIMECのHPC責任者であるウィルフリード・フェラヒテルト(Wilfried Verachtert)氏はいう。


IMECのHPC責任者であるWilfried Verachtert氏

IMECのHPC責任者であるWilfried Verachtert氏


エクサスケールのコンピュータは一体何に使うのか。今日の人間の脳や体、地球の気候変動の予測など非常に複雑で実現不可能な計算をシミュレーションできるようになる。例えば、重い病気の治療法を見つけたり、自然災害をもっと正確に予測できたりできるようになる。特に、太陽の周囲の爆発によって生じるフレアは、衝撃波となって地球上にダメージを与える。送電網やパイプラインシステムを破壊したり、無線通信の品質を劣化させたり、衛星のソーラーパネルに当たるとGPSが停止したり、地磁気で生じる電流によってトランスが破壊したりする可能性があるという。こういった問題を予測し理解するためにエクサスケールのコンピュータが必要になる。


太陽表面の爆発による衝撃波の可視化

太陽表面の爆発による衝撃波の可視化


エクサスケールコンピューティングでは、数百万規模の超並列プロセッサコアからなるシステムを作る。これらのコアを同時にしかも互いにコミュニケーションをとりながら計算する。これは非常に困難な作業であり、数百万コアのシステムのソフトウエアプログラミングも気の遠くなるような作業である。全く新しいこれまでとは違うプログラミング手法やソフトウエアを開発し、消費電力を受け入れられるレベルにまで落とさなければならない。しかもシステムはフォールトトレラントにして信頼性を確保する。

こういったスーパーコンピュータ手法はインテルが今後HPC分野でAMDと戦うために必要な手法になる。というのは、現在最高性能を持つクレイのスーパーコンピュータには超並列構成のAMDのクワッドコアOpteronが使われており、HPCの世界ではAMDの後塵を拝しているからだ。

インテルにとっては最先端半導体技術をもつIMECと最先端のコンピューティング技術およびその応用研究を手がけている大学と共同で、今の1,000倍もの性能を持つスーパーコンピュータを開発することはHPCで世界一になることを意味する。

フランダース地方政府もこのプロジェクトをサポートしている。副知事によれば、「インテルの欧州研究所は900名の雇用を生み出してくれた。フランダース地方は今後コンピュータをリードする地域になる」、とIMECの講演で述べた。副知事はさらに、「インテルという国際的な企業の研究活動によってフランダース地方の研究センターとしての地位を確実にしてくれる」として喜びを表している。エクサスケールコンピュータの完成は2020年を目標にしている。

(2010/06/09)

月別アーカイブ

Copyright(C)2001-2024 Semiconductor Portal Inc., All Rights Reserved.