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160nm径のビアに低抵抗のカーボンナノチューブをMIRAIが形成

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半導体MIRAIプロジェクトは直径160nmと微細なビアにカーボンナノチューブ(CNT)を形成することに成功した。450℃の熱CVDで形成したビア抵抗は34Ω、400℃だと63Ωとこれまで最も低いという。

160nmΦ CNTビア試作結果


将来のLSI配線利用に向け世界中で研究が活発になっているCNTだが、これまで直径が2μmと比較的大きな場所にしか作ることができなかった。中にはトップデータとして直径40nmのホールにCNTを9×10E11/cm2という実験例はあったが、再現性が悪かった。

今回、プロジェクトが開発した形成技術では平均160nm径の中にCNTが平均3×10E11/cm2と従来の30倍の密度のCNTを成長できた。しかもビアホールの中にCNTを単に形成するだけではなく、Cu配線工程との互換性を持たせるため一般のLSIプロセスで使われるCu配線のダマシンプロセスも利用した。

CNTはもともと、1000℃という高温で発見された材料であり、低温成長が難しい。細いビアの中に高密度のCNTを成長させると、ビアの抵抗は下がる。もともとCNTは最大電流密度がCuの1000倍も大きく、エレクトロマイグレーションの強い。機械強度が鋼鉄の100倍大きい。熱伝導率がCuの10倍大きいなど、LSIに応用するメリットは大きい。形成技術では、成長させるための触媒微粒子をいかに細かく形成できるかが高密度なチューブ作製、すなわち低抵抗ビア形成のカギを握る。

今回、ナノ触媒の微粒子を形成する装置のノズルを細くし、細かい直径の微粒子取り出す工夫をした。ノズルから出た微粒子はサイズを分けるチャンバを通り、そのチャンバから出たナノ微粒子をウェーハ表面に堆積する。このときたくさんの微粒子がウェーハ表面に到着するように、2段の真空チャンバを設けた。最初の真空チャンバの真空度を上げ(圧力を下げ)、その先のチャンバの真空度をもっと上げる(圧力を下げる)ことで、微粒子ビームの直線性を上げた。ナノ微粒子が堆積すべきウェーハに入射する時は直線的にビアホールの中に入っていく。このナノ触媒をつけた基板を熱CVD炉に入れ、CH4などのガスを分解してカーボンを成長させた。

実際のCu配線LSIプロセスでは、400℃を切るような低温化が望まれている。MIRAIはさらに低温化を進めるため、プラズマCVD法を検討した。この際、イオン成分を抑えてイオンによるエッチングや損傷を抑えることに注力した。2種類のプラズマCVD法を使った。一つは、先端放電ラジカルCVDと呼ぶ方法で、導波管を通じて60W程度の弱いマイクロ波をアンテナに導入しアンテナの先近傍でプラズマを起こし、ラジカルを発生させる方法である。電界が集中する先端でプラズマを起こすため少ない電力で済む。またウェーハまでの距離が長いこともあってイオン成分は少ない。もう一つは表面励起型プラズマCVD法と呼ぶ方法で、イオントラップやメッシュグリッドの形状を最適化することでイオンを除去する技術である。いずれもプラズマに含まれるイオンを除き、ラジカルだけを反応に使おうというもの。先端放電プラズマCVDでは390℃、表面励起プラズマCVDでは380℃で形成したという結果を得ている。

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