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好調・不調、まだら模様のニュースが飛び交う

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1月21日の週は、富士通の半導体部門の分社化が最大のニュースだったため、先週のニュース解説で採り上げた。その後、32nmに向けた開発は東芝、NECグループと一緒に行うことが伝えられた。

企業の選択と集中は、東芝がよい例だが、大企業でも選択と集中を行わなければもはや生き残れないことがはっきりしてきた。先週は、オランダのフィリップスが液晶ビジネスから撤退することを決めたと報じられた。フィリップスは2006年に半導体事業を切り離し、NXPセミコンダクターとして分社化させた。フィリップスはNXP株のほとんどを売却し、NXPはフィリップスの影響をほとんど受けない状況になっている。さて、富士通は分社化した半導体部門の株をどの程度持つのか、完全独立となるか、あるいは事実上の子会社扱いとなるか、それによって富士通半導体の未来は決まると言ってもいいだろう。ちなみに、フィリップスは同じ週に2007年第4四半期の決算を発表し、四半期利益が20億ドルを超え、好調になってきている。

半導体メーカーの将来に向けたビジネス計画は選択と集中に集まっており、海外メーカーの動きも活発になっている。STマイクロエレクトロニクスは12月期の年間売り上げは1.5%増加の100億100万ドルになったものの、4億7700万ドルの赤字に転落したと報じられたが、インテルとのフラッシュ共同出資会社設立に伴う費用を特別損失として計上したためとしている。売り上げの99%以上を占める専用ICや産業用・フラッシュの部門を合計した営業利益は通年で7億2100万ドルになっている。しかも直近の第4四半期の四半期売り上げは27億4000万ドルで、前年同期比10.4%増、前期比6.9%増と好調気味ではある。しかし、損失を出したことで株価が1.85%下がった。一方で、AMDは買収したATIの不調により赤字を計上したが、赤字幅が予想よりも小さかったとのことで、むしろ株価は上がっている。

好調な企業として、英国のプロセッサIPベンダーであるARM社は、同社のプロセッサIPを搭載したマイコンやプロセッサが累計100億個を突破した。また、ファブレスのトップ企業である米クアルコム社は2007年10~12月の四半期売り上げが18%増の7億6700万ドルになり、株価も6.5%上がったと報じられた。

コンピュータの世界では、Virtualization (仮想化)への動きが活発になっている。これは、1台の高性能なコンピュータを使いながら、まるで数台のコンピュータで別々のOSで動作するように見せかける新しい技術のことである。マイクロソフトが仮想化するためのソフト市場に参入したと22日発表した。ストレージやメモリーは膨大な量が必要になるため、新しいメモリー市場が創出されることになる。仮想化技術には、プロセッサの処理速度というより、メモリー-メモリー間、CPU-メモリー間、CPU-CPU間などデータ転送速度がパフォーマンスを決めることになる。メモリー市場が新たに開けるといえる。

一方で、NECが発売したシンクライアントPCの出足が好調だという記事もある。このパソコンは企業のネットワークと接続して使うコンピュータで、ストレージは持たずネットワーク先のサーバーとやり取りして使う。ネットワークにはVPNと呼ばれる専用に見える仮想通信網を使い、企業内のデータを外部へ流出させる心配をなくしたことで、引き合いが増えているという。反面、パソコンに搭載するメモリーは最低限で済むため、メモリーメーカーにとってビジネス機会は小さくなる。

先々週のアップル社のMac Airが発表されたように、NANDフラッシュなど大容量の半導体ストレージメモリーがふんだんに使われるコンピュータも登場しており、この種のコンピュータが主流になると、メモリーメーカーにとって未来は明るい。

分析:津田建二

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