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各社のコラボレーションと再生計画に注目

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NECエレクトロニクスの40nm、ルネサステクノロジの45nmの量産化のニュースで始まった先週だが、経営的な動きとLSIの製品発表のニュースに注目の集まる週であった。

NEC、ルネサスともSoCメーカーを自認する半導体メーカーであるのに、微細化技術を自慢するということは、SoCに搭載するソフトウエアに価値がないことの裏返しともとれる。そもそもSoCは、搭載するソフトウエアやアルゴリズムに価値を置く、少量多品種あるいは特定用途向け半導体チップのはずだ。微細化によるコストダウンを競うのであれば、コモディティかコスト競争力の点にのみ価値のある大量生産品ということになる。この点については、インテルがなぜ数千億円もの投資ができるか、を考えてみるべきではないだろうか。インテル製品の平均単価が40ドルと日本のメーカーの10倍以上も高く、しかも製品が大量生産品であるからこそこれまで大きな投資を続けてこられた。しかし、これからはインテルでさえ、本当に投資を続けるのか疑問が残る。

経営問題としては、三洋電機が新たな3カ年計画を発表した。部品では充電可能な2次電池と太陽電池に、家電では洗濯機や掃除機、炊飯器に注力する。半導体にはアナログ向けに200億円を投資する。これらは三洋電機の強い製品をさらに強くすることによって再構築を図ろうとする意図がはっきりしており、これまでのぼやけたリストラ計画とは全く違うように見える。ただし、半導体に関しては優秀なアナログエンジニアが多数退社したため、残されたエンジニアだけで、得意としていたアナログ技術を復活できるか、これから手腕が試されることになろう。

海外では、今年巨額の損失を計上したAMDにアラブ首長国連邦の首都アブダビ政府が援助の手を差し伸べた。AMDの株の8.1%に当たる6億2200万ドルを投資する。中東から米国企業への投資は今年、昨年の5倍以上に当たる250億ドル、42件と急上昇している。

もう1つ、注目したい動きは、進展著しい自動計測器メーカーの米ナショナルインスツルメンツ社がPowerPCアーキテクチャの促進グループであるPower.orgに加盟したことである。パソコンやサーバーに特化したインテルのプロセッサとは違い、最初から性能優先の組み込み系RISCプロセッサとしてIBMやフリースケールに、ザイリンクスが加わり、今回ナショナルインスツルメンツも加わった。組み込み系でも性能を優先するゲーム機の主力製品3機種、すなわちソニーのプレイステーションPS-3、任天堂のWii、マイクロソフトのX-BoxはすべてPowerPCアーキテクチャだ。プロセッサコアだけではなく、XilinxによるFPGAの周辺回路に加え、ナショナルインスツルメンツのLabViewによる開発・テストが容易にできるようになるとPowerPCの設計エコシステムが出来上がる。これに日本メーカーがどう特色を出して加わるか、あるいは加わらないか、見ものである。

グローバルな協力のニュースもある。65nm以降の開発では、特に物理層の開発ツールで必須のDFM(design for manufacturing)を考慮しなければマスク設計ができない。米国の設計ツール会社シノプシスと台湾のファウンドリUMCが65nm用のリファレンス設計フローを共同開発することで合意した。DFMのほか、マルチ電源電圧やパワーマネジメント機能などについても共同で開発する。

国内のロームもIPベンダーである米CEVA社のBluetooth用プロトコルスタックIPと自社のRF技術でBluetooth2.0+EDR(enhanced data rate)のプラットフォームを共同開発することで合意した。Bluetoothが当初の低消費電力のPAN(パーソナルエリアネットワーク)から、高速のEDRや超低消費電力の規格Wibreeをも飲み込んでしまうといった変身を遂げている動きをいち早くキャッチし、リードしたいという意図が読み取れる。

半導体製品レベルでは、最先端のDRAMとしてHynixがグラフィックス向けのGDDR5と呼ぶ独自の規格のデータレートを持つ1Gビット品をサンプル出荷、サムスンもデータレート1066Mビット/秒と高速でグラフィックス向けのDDR2 512MビットDRAMを年末に量産出荷する予定である。

製品チップのニュースでは珍しくパワー関係のチップが集まった。まず19日にAdvanced Analogic Technologies社が過電圧保護機能を持つバッテリーチャージャー制御ICを発表、フェアチャイルド社はEMIノイズが少ない電圧レギュレータを作るためのMOSFETを発表した。フリースケール社はパワーMOSFETを駆動するためのドライバを製品化、自動車用に向ける。フェアチャイルドもやはり自動車用を狙い、MOSFETとドライバを1パッケージに収納したソレノイドドライバモジュールを発表した。フェアチャイルドと同様なパワーモジュールを富士電機デバイステクノロジーがマレーシアで組み立てるというニュースがあった。電源用ICとしては富士通がDC-DCコンバータなどのパワーマネジメントICを会津若松工場と岩手工場で増産するというニュースもあった。これらのニュースは携帯機器の電源や、自動車エレクトロニクスを狙ったもの。

変わったところでは、センサーの発表も目立った。人間の血糖値を測定するグルコースセンサーとRFIDを埋め込む応用を米VeriChip社と米Digital Angel社が12月にデモすると発表した。電池不要で、電磁波をチップに向けて発射し、そのエネルギーでLC共振回路を励振させ、そのいただいたエネルギーで回路を動かす。半導体製造装置は振動に弱いため、ウェーハの振動を検出するワイヤレスの加速度センサーをCyberOptics Semiconductor社が発表している。沖電気工業はシリコンベースのUVセンサーを開発、年内にも発売する。


分析:津田建二

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