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自動車・家電・製造装置各企業のニュースから見えてくる今後の一大産業

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先週、自動車産業での営業成績や、家電メーカーのM&Aの実現、SPIフォーラムが開催したセミナー「車載半導体、品質とトレーサビリティのインパクト」講演などから、今後大きな産業に発展する分野が見えてきた。自動車産業ではホンダが今年度営業赤字になる見通しを発表しながらも将来へ向けた新合弁会社構想も発表するなど、将来への布石を築いていく。一方、パナソニックの三洋電機買収がようやく実現することが決まった。一見つながりのないようなニュースが実は1本の糸でつながっている。推理小説のような謎解きが見えてきた。

パナソニックが三洋電機の大株主のゴールドマン・サックスグループから1株131円で買収することが決まった。当初は120円で提案したが、これでは企業価値をあまりにも低く見積もりすぎとしてゴールドマン側は1株200円台を主張していたらしい。パナソニックは買収後のリストラ費用などを組み込み、現在の三洋の時価では買収効果を得られないとして価格を上げるつもりはなかったようだ。当初の120円から130円、そして131円で決着した。ゴールドマン側は急速に冷え込んだ世界金融、経済状況から一刻も早く現金化したいとの思惑からパナソニックとの交渉妥結に応じたと報道されている。

もう一つの大きなニュースではホンダが2008年度の下期(2008年10月〜2009年3月)の連結営業損益が1901億円の赤字に転落するという見通しを発表した。下期における北米市場の不振や円高による為替差損によって業績が悪化するという見通しである。それに合わせて国内の寄居工場や栃木の新研究所の稼働時期を1年以上延期することも発表した。リストラクチャリング(企業再編)という企業のビジネス構造や収益構造を見直すニュースに隠れがちであるが、実はホンダはハイブリッド車用リチウムイオン電池を開発、生産する会社としてGSユアサコーポレーションと共同出資会社を2009年春に設立することも発表している。

今の経済状況は深くて厳しいと思われているが、ホンダは1~2年もすれば市場は回復するだろうから次の手を打っておくという姿勢を見せた。これは極めて正しい判断だと思う。今のお先真っ暗という状況は永遠に続くことはありえない。だからこそ、その次のビジネスに向けては手を打つという考えに持っていくことこそ、不況だからこそ次のビジネスチャンスはモノにするという強い意志を感じる。

上の二つのニュースには共通点がある。答えリチウムイオン充電電池だ。現在のハイブリッド車にはニッケル水素蓄電池が採用されており、今後よりエネルギー密度の高いリチウムイオンへと流れていくことは当然といえる。パナソニックが三洋を買収したのは三洋がリチウムイオン電池で世界一の市場シェアを持つからだ。リチウムイオン電池は今までは高価であったために携帯電話やカムコーダなどにその使用が限られていたが、性能的にはニッケル水素電池よりも高いことは明らかで、さらに進化しているという点も魅力的である。

二つのニュースだけではない。セミコンジャパンではアルバックが厚さ50μmという紙よりも薄いリチウムイオン電池を製造するための技術と装置を発表した。これもリチウムイオン電池の応用を広がっていくことを見通した発表である。

自動車にとってのリチウムイオン電池はハイブリッドカーだけの応用ではない、電池自動車が充電池動作であろうと、燃料電池動作であろうと、リチウムイオン充電池だけは欠かせない。回生ブレーキに必須だからだ。このためリチウムイオン電池は現在でもこれからもますます重要になる製品・技術である。だからこそ、パナソニックは三洋を買うことに執念を見せた。パナソニックはトヨタ自動車とも提携している。リチウムイオン電池は、正極、負極、セパレータ、電解液(電解質)など材料技術面での改良も進んでいる。エネルギー密度は重量・体積とも着実に向上しており、現在だけではなくこれからも一大市場を築く将来商品の一つになることは間違いない。

技術者を表すエンジニアという言葉は、内燃エンジンから来た。そのエンジンという言葉はもはや、死語になる日がくるかもしれない。

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