セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト
セミコンポータル

サンディスクをサムスンが買収するという噂が駆け巡る、今も真相究明中

|

先週末、ビッグニュースが飛び込んできたため、今回はこのサンディスクをサムスンが買収するという噂について考えてみる。このニュースは日本時間9月6日の日本経済新聞で初めて見たのではあるが、どうやらほぼ同時期に世界中にこのニュースが複数の筋から流れたようだ。というのは米Electronic Newsのスザンヌ・デフリー記者が噂とブログに書きながら、すぐに「複数のニュース機関とアナリストたちによると」、というソースを引き出しながらニュースを流したからだ。

日経の記事では、東芝はサンディスクと共同でNANDフラッシュ工場を建設し、増産投資も二人三脚でやってきたが、これまでの合弁戦略は競争相手のサムスンがサンディスクを買収してしまえば見直しを迫られる、と報じた。特に四日市工場には共同で建設した設備があり、稼働は遅れているが、300mmウェーハでNANDフラッシュを生産する予定だった。NANDフラッシュは、ここのところ価格の値下げが激しく、需要と供給のバランスが崩れ、在庫がまだはけないでいる。

供給過剰により値崩れを起こし、その結果、東芝同様サンディスクの直近の財務状況は悪化した。7月21日に発表した4-6月期の第2四半期におけるサンディスクの売上は8億1600万ドルと前年同期比で-1%減だが、損益は6788万ドルの損失となった。前年の同期は2848万ドルの黒字だった。サンディスクの株価は下落を続け、5月15日に1株33.1ドルの株価は9月4日には13.46ドルに下がった。ところが、買収のうわさが出た途端、翌日の株価は17.64ドルに跳ね上がった。

スザンヌ・デフリー記者の記事は、この買収はメモリービジネスにとって好意的に受け取られ、過剰供給は緩和されるだろうというアナリストのコメントを載せている。

ただ、サンディスクが発信してきたここ数カ月間のニュースリリースを見てみると、6月初めにサンディスクは台湾の低価格パソコン向けのSSD(半導体ディスク)装置を発売したというニュースがある。2月のMobile World Congressでは、韓国の大手通信業者(キャリヤ)であるSKテレコムと共同で携帯テレビ、携帯型PVR(パーソナルビデオレコーダー)向けにセキュリティの高いTrustFlash技術のメモリーカードを開発したと発表し、アジア市場への進出を強めている。

一方、サスムンからするとサンディスクの知的財産権は魅力的だ。サンディスクの第2四半期売上8億1600万ドルのうち、製品売上は6億8800万ドルで前年同期比5%もダウンしたが、ライセンスおよびロイヤルティ売上は1億2900万ドルとまだ少ないが前年同期比20%という伸びを見せている。製品売上の収入は需給バランスに大きく左右されるが、知的財産権収入は着実に増えていく。サムスンがサンディスクを買収して、サンディスクの知財を手に入れるとしたら、東芝にとって本当の脅威になる。

東芝はこれまでの戦略を見直すとすれば、知財戦略を認識すべきであろう。これぞ最近注目を集めているクワルコム戦略と同じである。サンディスク全体を東芝が買うという手がある。サンディスクの知財を東芝が手に入れれば、サムスンが儲ければ儲けるほど知財収入も入ってくる。

需給バランスさえ正常に戻れば、不揮発性NANDフラッシュメモリーの必要性はとどまるところを知らないからだ。サンディスクが販売したメモリーの全バイト数は過去最高で、この第2四半期で前年同期比120%伸び(2.2倍)、第1四半期からの伸びでさえ14%という驚異的な数字である。市販メモリーカードの平均容量は2.36Gバイトと対前年同期比64%も伸びたとしている。

このことからNANDフラッシュはまだまだ伸びる製品ではあるが、現在のところ供給過剰により在庫が膨らみ一時的に価格が下落しているに過ぎないため、サムスン、東芝、いずれのメーカーにとってもサンディスクは良い買い物ではないかと思う。


分析:津田建二

月別アーカイブ

Copyright(C)2001-2024 Semiconductor Portal Inc., All Rights Reserved.