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暗い見方をやめ明るくグローバル市場を攻めよう

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先週のニュースでは、半導体製造装置の2007年の総売上額がSEMIから発表され、台湾が最も大きな市場で日本を抜いたことがはっきりした。台湾の半導体メーカーが2007年の製造装置の売り上げで抜くことは、セミコンポータルの「マーケット」コラムで追い続けていたため、いまさらという感じがないわけではない。ただし、2008年の市場がどうなるかという目で見る場合には、まずTSMCやUMC、Powerchipなどの設備投資をウォッチしていかなければならないということだろう。

今年の投資だが、先週NECエレクトロニクスとルネサステクノロジが相次いで後工程へ投資することを発表した。NECエレは九州大分の子会社へ20億円、ルネサスは中国へ40億円投資する。後工程のLSIパッケージ技術では、いまやSiP(システムインパッケージ)やMCP(マルチチップモジュール)と呼ばれる複数のシリコンチップを一つのパッケージに入れる技術が確立してきており、後工程はローテクという考え方はもはやない。

特にアナログとデジタル回路の両方が必要なデバイスには威力を発揮する。SiPの最も良い点は、アナログLSIのプロセスとデジタルLSIのプロセスをいずれも妥協することなく作れるという点だ。通常は、アナデジ混在回路であるミクストシグナルLSIは、アナログに主力を置く場合はデジタルを犠牲に、その逆はアナログを犠牲にし、両方の最適点を模索してきた。SiPだと、妥協なく作ったそれぞれのLSIを組み合わせるだけで、性能やノイズ対策などを満足できる。もちろん、大量生産ではモノリシック(1チップソリューション)にはかなわないが、大量生産というLSIがあまりなくなってきた現在、有効な手段として注目されている。

半導体製造装置の実績がまとまったというニュースと共にチップの市場に関する2008年の予測がIn-Stat社から発表されている。2007年、半導体デバイス市場は6%成長したが、2008年は米国住宅バブルの崩壊、とそれに伴うサププライムローンの問題があるのにもかかわらず、2008年もマイナス成長にはならないとしている。唯一の懸念は、自動車市場がサププライム問題の影響で落ち込むとみており、自動車向け半導体市場が弱いとみている。

米国のアナリストのエレクトロニクス市場への見方は米国市場しか見ていないという一面はある。サブプライム最大の問題は、世界中への金融不安につながっている点である。この金融不安を指摘する半導体アナリストは米国にはほとんどいない。米国内の消費活動が心配だという見方しかしていない。最近のすさまじいほどのドル安は何も心配していないようだ。日本からすると、信用通貨としてのドルが下落するのなら、安定して強いユーロを基軸通貨にする方が日本の輸出企業にとってはよほどありがたい。今のドル安円高、もっと高いユーロでは、女性が欲しがるヴィトンやカルティエの宝石なども高すぎて買えない。日本の経済や政治が強いという本当の意味での円高ではないからだ。

さて、新しい半導体市場という点では携帯通信市場は見逃せない。NTTがセキュリティを強化した次世代ネットワークNGNを実験から商用化へと切り替えた。NTTドコモは3.9G(LTE)の250Mbps伝送実験に成功したというニュースが出てきた。NGNは国内ネットワークにとどまるが、携帯通信のグローバル市場は”ものすごくでかい”。グローバル市場を攻略するためには3Gでの海外展開失敗の教訓を生かすことが必須であろう。さもなければ3Gの二の舞になる。

ドコモべったりの戦略が携帯通信機メーカーにとって大きな失敗であったことをしっかり認識し、世界の求める携帯を市場へ出すという、この当たり前のことを実行するだけなのである。これが苦手な日本企業はまず、日本企業、日本人の海外における存在感を高めていく必要があろう。実はサムスンが中国市場を攻略したのは、サムスンの中国でのブランド作りから始まった。そのためにグローバルな人材を活用した。

次はHSPAやLTEといったデータ通信が主力となる次世代携帯でのインターオペラビリティ(相互運用性)のプロジェクトに積極的に参加し発言していくことが日本企業にとってもっとも有効な戦略になる。Bluetoothの時も失敗したが、みんなで規格を統一しどの機種もネットワーク内で動くことを確認するという、インターオペラビリティをこれまでの日本企業は軽視してきた。その重要性を認識し、そこに人もお金も投資するというマーケティング精神を忘れてはならないだろう。日本人だけで進めると痛い目に会う。グローバルな人材活用、コラボレーション、はその成功のカギとなる。とにかく、この半導体市場は巨大だからこそ積極的に攻めたい。

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