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韓国のサムスンとハイニックスがMRAMの共同プロジェクトに着手

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先週のニュースの中で最も目を引いたものは、サムスンとハイニックスがMRAMメモリーを共同で開発しようというプロジェクトである。しかもこの連合に大学や研究機関まで参加し、さらに韓国政府がこのプロジェクトを国家プロジェクトとして位置づけ、一部を援助するとしている。実は、韓国では国家プロジェクトとしてコンソシアムのようなチームを作ることは極めて珍しい。

まだ韓国勢が今ほど力をつけていなかった1990年に、韓国のサムスンやLG、現代電子、大宇通信などを回ったことがある。このとき韓国企業はお互い強烈なライバル意識を持っており、共同開発や協力関係というようなプロジェクトは考えられなかった。韓国人の中には、韓国企業同士の提携や企業合併では必ず一方が他を圧倒してしまい、ともに生きることはありえない、という方が複数おられた。

また、日本人の目から見ると韓国企業はどれも同じように見えるが、実際に企業を訪問し深く付き合うと違いが見えてくる。サムスン電子はいわゆる親日家で、トップがかつて早稲田大学で学んだこともあり、80年代後半にDRAMビジネスを始めた時にも優れた製造装置なら米国製、日本製を問わず導入した。一方のLG(Lucky Goldstar:金星グループ)は当時どちらかといえば反日的で、日本製の製造装置は買わなかった。この結果、両者の半導体ビジネスは大きく差がついてしまった。

1990年当時は、民生家電製品において、同じようにサムスンは日本の良いところを取り、LGは日本を無視したため、サムスンの方がLGを追い越してしまった、とある韓国人から聞かされた。1970年代にはLGの方がサムスンよりもずっと上だったという。LGが日本製を使わないという態度がビジネスの成長を妨げたのだとしている。

訪問した工場の中で、サムスンの器興工場では昼休みに日本語会話のテープが流れており、毎日交互に日本語と英語のテープを流すのだという。サムスンにとって日本語も英語もどちらも大切な言語だとみている。インタビューは日本語で行った。一方、LGや大宇の工場では、インタビューは英語のみであった。日本語を話す人は全くいない。韓国の高麗大学やソウル大学でも同様で日本語は全く通じなかった。

時代は流れたものの、韓国企業同士が協力して一つのプロジェクトに平等で開発するという今回のニュースはある意味で画期的でもある。これまでライバル視してきた者同士が仲良くやっていくという話だ。プロジェクトの行く末を見守りたい。

国家プロジェクトの本家である日本では、シリコンチップを3次元的に重ね合わせるTSV(through silicon via)技術などの「立体半導体:ドリームチップ」のプロジェクトが決まった。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が、ASETや富士通などの6団体に開発を委託する。2008年度の助成総額は12億円。

このテーマは国家プロジェクトとは別に、ルネサスやNECエレクトロニクスなど大手半導体メーカーがこれまでも開発を続けてきた。半導体後工程のトップメーカー台湾のASE社をはじめとする後工程ファウンドリもTSV技術を開発中だ。

折しも24日のニュースではAviza Technology社がTSV技術を使う3次元IC用の貫通電極形成装置Versalis fxPを発表したと報道している。TSVはシリコンに円柱の貫通孔を開け、絶縁膜を付けた後にメタルを埋め込み、シリコンウェーハの上から下まで貫通した電極を形成する技術である。200mm/300mmウェーハ対応のこの装置は6チャンバからなり、各チャンバで深いシリコンエッチング、スパッタリング、CVDなどを行う。3次元IC開発者にとって試作から量産までシームレスな移行ができるとしている。


分析:津田建二

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