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松下が有機ELテレビを量産するというニュース、真意はどこに

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液晶、プラズマに次ぐ第三のフラットパネルテレビとして、有機ELテレビが急浮上してきた。先週7月29日付けの日本経済新聞で松下電器産業が40インチクラスの大画面有機ELテレビを2011年に量産する予定を発表、数百億円を投資して2009年春に試作ラインを姫路工場に設けると報道している。

有機ELは、寿命にまだ問題があり、商品寿命の短い携帯電話機などに使われてきているが、テレビに使いだしたのはソニーが商品化した11インチのELテレビが初めてである。寿命の問題をどうクリヤしたのかは明らかにしていない。もともとソニーは、新しいデバイスを早くから採用してきたという歴史はある。トランジスタが発明されて間もないころ、半導体メーカーがトランジスタの信頼性寿命試験を丁寧に行っている最中にソニーは先駆けてトランジスタを使ったラジオを発表していた。昨年発表した11インチの有機ELテレビには信頼性を問題視する向きもあった。

今回、松下電器が量産を打ち出したからには、信頼性問題の解決に目途がついたのではないだろうか。テレビは消費者によっては10年以上使う人もいるため、信頼性の寿命が短ければクレームが来る。松下の発表はどのようにして寿命の問題を克服したのだろうか。

このところ、液晶テレビの価格は下がり、台湾大手の友達光電(AUO)や2位の奇美電子、中華映管も7月〜9月の15~17%の減産を決めており、韓国のLGディスプレイも8月末までに減産することを表明している。液晶テレビの減産は7月に入り、32インチのテレビ用パネルが300ドルを切ったことから、液晶メーカーが出荷量を抑制する動きを見せていた。北京オリンピックに向けた需要はすでに終わったことから、当初の予想よりもオリンピック需要が伸びなかったため液晶の在庫が膨らみ、価格低下と減産を余儀なくされた。

先週は、半導体各社の2008年度第1四半期の決算発表があった。東芝の電子デバイス部門(半導体と液晶を含む)は売上が対前年同期比-3%減の3657億円、営業損益は昨年同期の黒字から一転して-342億円の赤字になった。システムLSIの赤字とフラッシュメモリーの価格下落による赤字が大きいとしている。7月30日付けの日刊工業新聞では大分工場の300mmラインの稼働率が70%を切ったと伝えている。システムLSI、特にPS-3などのゲーム機向けLSIの引きが弱いとしている。

富士通とNECエレクトロニクスも四半期の決算を発表したが、富士通は電子部品などを含むデバイス全体では前年同期比-8.8%減の1723億円、営業損益は-47億円の赤字である。LSIだけの売上は-10.5%減の1079億円であった。LSIだけの損益は発表していない。NECエレクトロニクスは、対前年同期比-4.2%の1663億円の売り上げで、営業損益は17億円の黒字となった。売上を減らして黒字ということはコストカットしたことで利益を確保したといえる。成長路線にはまだ乗っていない。

日本勢に対して、台湾のTSMCは4-6月の四半期において、対前年同期比17.6%増の28億8000万米ドルとなり、純利益は同12.9%増の9億4000万米ドルを確保したと伝えている。ただ、同じ台湾勢のUMCは売上はほぼ横ばいの0.6%増の8億3300万米ドルだが、純利益が対前年同期比で-51%も落ち込み、7910万米ドルの黒字にとどまった。ファウンドリビジネスは誰もが儲かるビジネスではなく、ビジネス戦略がしっかりしていなければ成功することは難しい。


分析:津田建二

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