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キマンダが破産手続きを申請、エルピーダへの影響とDRAMビジネスの今後を占う

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1月24日の日本経済新聞は、ドイツのキマンダがミュンヘンの裁判所に破産手続きを申請したと伝えた。DRAM市場は、単価が激しく落ち込み、どのメーカーも原価割れを強いられるといった過剰供給になってしまっている。1Gビット製品が12月中旬には0.6ドルまで低下し、1月に入り1ドルまで戻したものの、再び0.9ドル台に入りそうな気配だ。

ここへきて、キマンダが経営破たんした。政府による融資が決まっていたが、その詳細が決まる前に資金繰りに行き詰ったと報道されている。新聞によると、近いうちに管財人が事業継続の可否を決めるとしている。日本のエルピーダメモリはキマンダと技術提携をしていたが、キマンダの経営不振が伝えられて以降は事実上の共同開発などは凍結していたという。このDRAMメーカーは、世界市場から姿を消すのかどうか行方が注目される。

台湾でもプロモステクノロジーズやパワーチップセミコンダクターなどのDRAMメーカーが資金繰りに苦しんでおり、産業の再編は避けられない。エルピーダはパワーチップと提携しており、合弁でレックスチップエレクトロニクスを運営している。さらにプロモスとも提携交渉をしていると新聞は伝えている。

DRAM市場には韓国のサムスン、ハイニックス、日本のエルピーダ、米国のマイクロン、そしてキマンダ、台湾勢などが参加しているが、市場が要求しないほど過剰のDRAMを供給できる体制が出来てしまっている。供給過剰を止めるには、顧客の過剰在庫一掃だけではもはや対処できないところまで来ており、DRAM産業の再編が必然的になっている。どのアナリストも産業再編が自然に起きるだろうと表明している。

DRAMの産業再編が必然なのは、DRAMの大きな流れの中でこの先の大きな需要が見えないからである。DRAMは、1K、4K、16K、64K、256K、1M、4M、16M、64M、128M、256M、512M、1Gとこれまでひたすら高密度化でやってきた。ただし、この動きをよく見ていると、4倍のペースでの集積度向上は崩れている。例えば256Mから1Gへ飛ばずに512Mへ立ち寄ってきた。この意味するものは高密度化にブレーキがかかっていると見なければいけない。1Gの次はせいぜい2Gであり、4Gにはいかない。

なぜか。32ビットのCPUを中心に動くシステムでは、これ以上の高密度化を求めていないからである。1G以上の集積度はDRAMにはもはやそれほど必要ない。DRAMをアクセスするためのアドレス空間が、2の32乗、すなわち4Gバイトの空間しかないからだ。パソコンでも携帯電話でも32ビットシステムで動かす以上、それ以上は無駄になる。もちろん、システムが48ビットあるいは64ビットになれば話は別で、2の48乗、64乗となるからアドレス空間の制約は遠ざかる。

しかし、32ビットを超えるシステムが広い市場で要求されるだろうか。答えはノーだろう。というのは、たとえば英国アーム社のプロセッサコアは32ビットシステムだが、応用しだいでは32ビットも要らない。無駄なチップ面積を削るため16ビットで十分というシステムもある。このためThumbアーキテクチャという名称でアームは32ビットと16ビットの両方の命令セットを載せたプロセッサIPを販売している。自動車用のマイコンでも同様に、例えばデンソーでは、いかに少ないプログラム行数、すなわち高いコード効率でソフトウエアを作り、マイコンに組み込むかという観点から32ビット命令のほかに16ビット命令も用意している。

パソコンからデジタル家電をはじめとする組み込み系へという大きな流れの中で、32ビット以上の命令セットが使われることは極めて考えにくい。DRAM用途はパソコン、コンピュータから携帯電話やデジタル家電、デジタルテレビ、音楽プレイヤー、通信機器などさまざまな用途へと広がってはいるが、コンピューティング能力は強く要求されない。32ビットで十分という応用が圧倒的だ。しかも数量的には何百万個/月というような用途ではない。DRAMもシステムLSIほどではないにしても少量多品種へと向かっている。

もちろん、依然として64ビットシステムで動くサーバーやメインフレーム、128ビットもあるスーパーコンピュータなどハイエンドコンピュータ分野ではDRAMの高集積度は必要とされる。しかし市場は組み込み系ほど大きくはない。だからDRAMの集積度はこれほどまで要らないのである。

ただし、DRAMは決して要らない産業ではない。海外メーカーに供給を抑えられると弱い立場になってしまう。だから、日本でひとつだけのエルピーダはつぶしてはならない。かつて台湾の半導体産業が勃興した1990年ごろ、DRAMは日本と韓国が手掛けているから最初のころ台湾はDRAMをやらなかった。しかし、95年ごろパソコンフィーバーでDRAMが不足したとき困ったのは台湾のパソコン産業だった。DRAM価格は供給メーカーに主導権を握られ、弱い立場に置かれたことを教訓として台湾もDRAMを作り始めたのである。今、日本に1社しかないDRAMメーカーをつぶしたら必ず、かつての台湾と同じようなことが起きる。パソコン、携帯、IT産業、家電産業、自動車産業などにDRAMは欠かせないからだ。ここは何としても日本政府、広島県自治体などのつなぎ融資をしてでも生き残すべきである。ただ、資本注入はすべきではない。日本は市場経済の国なのだから。

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