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DRAM・半導体市況は回復方向だが国内半導体合計はマイナス成長の見通し

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先週のニュースでは、DRAM市場が2008年は徐々に回復していくだろうという見方が新聞あるいは調査会社のニュースから見られた。ただし、詳細に読むと希望的な観測も混じっており、やはり予測は予測にすぎないことが垣間見える。

日本経済新聞は、パソコン用DRAMの需給が締まり価格は強基調に転じていると報じた。しかし、指標となる512MビットDRAMの単価は1.0~1.1ドル、1Gビット品でも2.1~2.5ドルであるから、わずか値上がりしたもののDRAMメーカーが黒字に転じるような価格ではない。マーケット関係者の見方では採算ラインがそれぞれ1.5ドル、3ドル前後だといわれることを勘案するとまだ赤字だということになる。

製造装置メーカーは08年後半あるいは7~9月期には需給バランスに到達するという見方が強い。夏休みが終わる米国の新学期商戦でパソコンが売れそれに伴いDRAMも売れていくという見方が業界に広がっていると日経新聞は伝えているが、パソコン市場の成長はむしろBRICsや発展途上国の方が著しく、そちらの動向を考慮に入れなければ何とも判断できないだろう。

米国市場調査会社のiSuppliもサードパーティのDRAMモジュール市場が2008年に回復しそうだと伝えているが、根拠に乏しい。DRAM価格下落のリバウンドが来て値上がりするとの見方である。

明るい材料は、日本法人のアイサプライジャパンがまとめた3月の半導体・電子部品の販売額に対する受注額の比であるDGレシオが0.15ポイント改善し、1.14となったことだ。この数字はDRAMだけではなく半導体すべてと電子部品についての統計であるため、電子機器の動向をよく表す先行指標だといえよう。好調なパソコン市場はアジアや東欧、中南米だというから、先進国の動向は今一つ不透明なところがある。北京オリンピックの特需効果に関しても不透明で回復が鈍ることもあるとしており、手放しに明るくなりそうだというわけではない。

国内半導体各社の決算報告が終了し、国内半導体メーカー・事業部12社の合計売上は、2008年3月期に前年度比1.8%増の6兆2771億円になった。このうち半導体9社は来年2009年3月期の見通しも発表し、前年比で1.4%減少の5兆4210億円になるという見通しも発表している。

技術ニュースとしては世界で初めてというレベルの高いニュースが三つあった。一つは東芝のフラッシュメモリーカードで、メモリーチップを17枚重ねて一つのカードに収納するという技術である。これまでシリコンチップ1枚の厚さが25μmであったのに対して、今回は18μmまで薄くした。チップ間はフィルムで絶縁するため、薄いフィルムも挟まれるが、17枚のチップとフィルム16枚を縦に重ねて、カードでラミネートしても合計の厚さが0.7mmにしかないことを新聞は伝えている。配線はチップを互い違いにしてワイヤーボンディングでつなぐため、ループの高さも必要になり、これ以上薄くするには貫通電極が必要となる。

もう一つの技術はサムスンが周波数240Hzで動作する液晶を開発したというニュースである。これまで液晶は応答速度が遅いため、高速動作を表示させると動作物体はスムーズに動かず、画面がギザギザにチラついた。今回の液晶は動作速度が通常の60Hzの4倍もあるため、スムーズな画面が期待できる。どのようにして液晶を開発したのかについては明らかにしていない。ただ、ネマティック型やIPS(In-Plane Switching)、Virtical Alignmentなど日本の液晶メーカーが開発した配向膜技術は使っていないとしている。ラビング工程などで機械的に配向させるプロセスではなく、自身が配向するという液晶を開発したと報道されている。5月18~23日に米国で開催されるSIDシンポジウムで発表される予定だという。量産は2011年ごろとしている。

最後のニュースは、IBMが太陽熱を利用した発電技術である。新聞報道やプレスリリースを読むだけでは動作を完全に理解できないが、スターリングエンジンとは明らかに違う原理で動作する。太陽光を集光、発熱させてペルチェ素子あるいはゼーベック素子のような金属・半導体の接合の一方だけを熱してその温度差を利用し電圧を得ようとする原理のようだ。理論的には1平方センチメートル当たり230Wの電力を取り出せるが、変換による損失があるため、実際は75W取り出せるという。それでも従来の太陽光発電では20Wくらいしか取り出せないため、従来の太陽電池よりは効率が高いようだ。


分析:津田建二

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