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早くも次のピークを見据えた設備投資相次ぐ

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8月4日にSPIマーケットセミナー「世界半導体市場、2022年後半から1年はどうなるか」を開催、パソコンやスマホ用半導体は過剰気味、車載用や産業用はまだ不足気味、という現状をお伝えした。後半はこれまでの成長1本とは違い下降気味も見えてくる。しかし、さらにその先の次のピークを目指す動きも出てきている。半導体関連企業の投資が目立つ。

半導体設計や設計ツール、ファブレスなどで圧倒的な強さを見せる米国の中で唯一の弱点ともいうべき半導体製造を強化する動きがIntelやSkywaterなどのファウンドリ、韓国企業の米国工場設立や拡張などで見える。それに向け、日本企業もビジネスチャンスと捉えている。丸一鋼管がテキサス州に半導体製造設備向けの鋼管を製造する子会社を8月に設立すると発表、三菱ガス化学は半導体製造に使う薬品を米国で増産する。

丸一鋼管は、子会社の丸一ステンレス鋼管と共同で半導体用のBA(Bright Annealing)管を製造する。145万平方フィートの敷地内に、16万平方フィートの工場を設立する。米国内で大型の半導体工場建設計画が複数具体化していることに対応した。BA管は内面を滑らかにしてパーティクルの滞留を削減している配管で、半導体や液晶製造などに使う。

三菱ガス化学は、500億円規模を投じ、超純過酸化水素を今後10年間で生産量を現状の14万トンを3倍近くに増やす。高性能の半導体製造時の洗浄液として使う。オレゴン州の工場で製造ラインを増やすほか、新工場の建設も検討する。2017年に約70億円を投じて米国で新工場を2 カ所設けたばかりだが、米国の520億ドルのCHIPS法案が議会を通過したことを受け、追加投資となった。

米国投資だけではない。日本国内でも次のピーク時を狙い、積極的な投資が目立つ。8月5日の日本経済新聞は、経済産業省が4日、2023年度予算の概算要求に関する基本方針を公表したと報じた。産業構造審議会で明らかにしたもので、経済社会課題解決への大胆な官民投資と題して、「炭素中立社会の実現(10年150兆円のGX)」、「データ主導のデジタル社会の実現」、そして「経済安全保障の実現」の3つを掲げ、さらに人材やスタートアップ、中小企業への支援なども含む。特に「データ主導のデジタル社会の実現」で、次世代半導体・量子・ソフトウエアなど基盤構築/データセンター・5G整備などを挙げている。


図1 プラスチックBGAパッケージ基板 出典:新光電気工業

図1 プラスチックBGAパッケージ基板 出典:新光電気工業


プリント回路基板をICパッケージの基板とする高集積LSIのパッケージング技術に強い、新光電気工業は、「新潟県妙高市にある新井工場内に新棟を建設し、半導体メモリー向けプラスチックBGA基板を増産する」と4日の日刊工業新聞は報じた。投資額は280億円で、2024年度に着工し、26年度に稼働予定。BGA基板の生産能力は現行の2倍に拡大するという。新光電気のニュースリリースによると、プラスチックBGA基板(図1)の多層配線には、従来のエッチングではなくセミアディティブ法によるメッキで形成するとしており、一種のビルドアップ基板に近い方法で多層配線を形成するようだ。

3日の日経は、昭和電工が多層配線の平たん化技術で使われるCMP(Chemical-Mechanical Polishing)スラリーの生産能力を2割高めると報じた。日本と台湾で200億円を投資、設備や工場棟を増強する。2023年から順次稼働させる予定だ。台湾には連結子会社があり、ここでスラリーの生産能力を23年1月から高めるとしている。TSMCが扱っているロジックは、多層配線を駆使するチップなので、台湾のファウンドリ向けに増強するようだ。

リソグラフィ光源を製造しているギガフォトン(コマツの100%子会社)は、光源用の新しい生産棟に着工した、と日刊工業が報じた。投資額は約50億円。栃木県小山市にある同社の敷地内で7月から着工しており、23年6月に完成予定。2020年度比で約2.5倍の生産能力を上げることになる。延床面積は7537平方メートル。世界的に半導体需要が高まることを見越しての投資だと見ている。

(2022/08/08)

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