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半導体投資、ファウンドリ・メモリ・パワー半導体で活発に

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台湾で総額16兆円に及ぶ巨額の投資ラッシュが起きている。日本経済新聞の調べでは台湾全土で20もの工場が新設ないし建設中だという。Micronの広島工場でも1βnmのDRAMの量産を今年末までに始める。パワー半導体ではロームが2026年3月期までに最大1700億円をSiCデバイスに投資する。パワー半導体を使う電気自動車や再エネ設備の応用拡大を受けたもの。

台湾ではこれまで経験のない未曾有の新工場建設ラッシュが続いている。台湾には新竹サイエンスパークが有名だが、同規模のサイエンスパークが台南、台中にもあり、さらに高雄や新台北にも広がっている。6月8日の日経では台湾の工場建設ラッシュを報じており、この地にTSMCがすでに4つの新工場を完成させたばかりなのに、建設ラッシュに沸いているという。

TSMCは4/5/7nmといった先端プロセスノードの半導体では圧倒的なシェアを持ち、TSMCが工場を拡大すればするほど、台湾の製造力への依存度が増していく。米国としては、中国が台湾を侵略した場合には先端半導体の製造を依頼するところがなくなるため危機感を持っている。このためアリゾナ州への工場誘致を積極的に進めてきた。しかしTSMC側としては、中国に組みこまれることを嫌うものの、工場運営を中国側がつぶすはずはないだろうとも読みがある。TSMCは「打ち出の小槌」だからだ。台湾の製造力を強化することは、むしろ米国をはじめとする各国、欧州などとの交渉のカードになりうる。この点においてTSMCは台湾政府当局とも距離がある。TSMCはITRI(工業技術院)からスピンオフしたとはいえ、世界中の半導体メーカーに投資を呼びかけ、会社を設立してきたという自負がある。TSMC=台湾政府ではない。オランダのPhilipsがTSMCに出資し、Intelが出資を断った、という経緯を創業者のMorris Chang氏は未だによく語っている。PhilipsからスピンオフしたASMLとTSMCとのコラボが成功した理由の一つが、TSMCがPhilipsに対して昔の恩義を感じていることだ。

日経は、6月11日に、Micron TechnologyのEVP兼CBO(Chief Business Officer)のSumit Sadana氏とのインタビュー記事を掲載、同氏はDRAM最先端の1βnmプロセスノードの製品の量産を22年末までに始めると語った。DRAMやNANDフラッシュのプロセスノードは、どうやら実際の寸法と同じと見られる。TSMCのようなファウンドリでは、実際の寸法と、例えば7nmのプロセスノードとは一致していない。ファウンドリではEUVが7nmノードから使われたように、DRAMでは14〜15nmノードから使われるようであることを考えると、TSMCの7nmは実寸法では14〜15nmプロセスといえそうだ。DRAMでは20nmを切ってからは、1X nm、1Y nm、1Z nmと刻んで15〜16nmレベルまで来た。次の14〜15nmが1αnmとなる。1βnmは13〜14nmと刻む。

Micronは、エルピーダメモリを買収後、しばらく投資を明らかにしていなかったが、21年8月までの3年間に70億ドルを投資したという。これまでの外資系企業としては最大規模であった。


図1 マレーシアにあるInfineonのクリム工場 余った敷地に新工場を設立する 出典:Infineon Technologies

図1 マレーシアにあるInfineonのクリム工場 余った敷地に新工場を設立する 出典:Infineon Technologies


9日の日経は、ロームが2022年内に福岡県でSiCパワー半導体の新工場棟を稼働させ、26年3月期までに従来計画の3倍に当たる最大1700億円を増産投資に充てる、と報じた。EVの普及や脱炭素化の動きが速く、市場拡大のペースが想定を上回っているためだという。SiCパワー半導体では、Infineon Technologiesがマレーシアのクリム工場(図1)に20億ユーロ(約2800億円)かけて、SiCとGaNのパワー半導体を生産する、とこの2月に発表している(参考資料1)。6月に建設、2024年夏に設備搬入、最初のウェーハは24年後半に出荷される予定だとしている。SiC・GaNの研究開発拠点はオーストリアのフィラハに置き、しばらくは6インチと8インチのSi設備の転用で製造するという。

また空調機器の富士通ゼネラルは、パワー半導体のモジュールを製造し販売する、と11日の日経が報じた。23年度中に岩手県一関市に量産ラインを新たに立ち上げ、7月から月産5000個のモジュールを確保し、23年4月には月産2万個以上に増やす計画だ。空調に使われるインバータにはパワー半導体単体ではなく、6個一組のモジュールで使うことが多いため、ゲートドライバICも集積し、マイコンから直接駆動できるようにすると使いやすい。

半導体投資が活発になり投資規模が大きくなると人材育成も重要な課題となる。九州では、佐世保工業高等専門学校(高専)が半導体工学概論の講義を今年度から始め、企業の工場や研究所の見学などの実地研修も行う。さらに産学官の連携が必要で、九州全体にも広げていく予定だとしている。人材派遣のUTグループは半導体製造装置の組み立て技術や保守・点検、メンテナンスなどの知識とスキルを身に着ける研修サービスを運営、25年までに半導体エンジニアを5000人育成する、と10日の日経産業新聞が報じた。

参考資料
1. 「インフィニオン、20億ユーロ以上を投じてワイドバンド ギャップ半導体をさらに強化、マレーシアのクリムにフロントエンドを新設し、パワー半導体市場でのリーダーシップを加速」、インフィニオン (2022/02/17)

(2022/06/13)

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