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先端電池ビジネスが大きく動く、政府が1000億円計上へ

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先週、2021年8〜10月期の決算報告を発表したApplied MaterialsとNvidiaは、共に絶好調だ。会計年度がカレンダー年とは異なるが、この期間における売上額はAMATが61.23億ドル、Nvidiaは71.03億ドルとそれぞれ、前年同期比31%増、50%増となっている。バッテリ技術がEV性能を左右するが、バッテリ関係のビジネスが動いている。

2021年8〜10月期(同社決算の第4四半期)におけるAMATの利益率28%で、純利益17.12億ドルで、通年度では前年度比34%増で、過去最高の230.63億ドルとなった。ちなみに東京エレクトロンは2022年度第2四半期(2021年7〜9月期)の決算を11月12日に発表したが、売上額は前年同期比36%増の4804億円、純利益は利益率20.8%の998億円で、1年前から443億円増加した。

ファブレス半導体のNvidiaも利益率は高い。8〜10月期は利益率34.7%の24.64億ドルの純利益を上げた。1年前の84%増となっている。やはり絶好調である。同社の稼ぎ頭はゲーム機向けのGPUカードであり、この部門の売上額は前年同期比42%増の32.2億ドル、データセンター向けのGPUやシステムは同55%増の29.4億ドルとなっている。ほかにプロ用ビジュアルシステム向けが同144%増の5.77億ドル、自動車向けが同8%増の1.35億ドルとなった。プロ用ビジュアルシステムでは、開発ソフトウエアOmniverse EnterpriseにAR、VR、マルチGPUレンダリング機能が追加され、大手に採用された。


図1 EVのバッテリは床一面に敷き詰める方式が主流 出典:REE Automotive

図1 EVのバッテリは床一面に敷き詰める方式が主流 出典:REE Automotive


電池が重要な部品となっている。政府は先端電池工場の建設を支援する新たな補助金を作る、と11月17日の日本経済新聞が報じた。2021年度の補正予算案に1000億円程度を計上するという。「車載用や再生可能エネルギー向けなどの蓄電池工場の誘致をめざす。電池・材料メーカー、リサイクル企業を対象に想定する。支援は工場ごとに認定する」としている。国内トップのパナソニックが世界3位に甘んじており、1位の中国CATL、2位の韓国のLGに後塵を拝している。

インドネシアでは、電池の正極に使うニッケルの推定埋蔵量が2100万トンもあり、同国政府はEV(電気自動車)産業の誘致に動いている、と16日の日経は伝えた。韓国の現代自動車や台湾の鴻海精密工業が同国でEVや車載用電池を作る方針を発表している。EV関連で5兆ルピア(約400億円)以上を投じる企業には法人所得税を10年間減免するという。人口が約2億7000万人という国内市場も魅力となる。日本企業はタイに集中しすぎるきらいがあり、インドネシアでの日本企業の動きは今のところないという。

電池といってもスマートフォン用がメインだが、TDKは2005年に500億円で買収した香港のAmperex Technologyがスマホ用の小型電池で年間売上額が7000億円まで急拡大したと19日の日経が報じた。TDKの上半期(2021年4〜9月期)連結決算では、売上額は前年同期比29.4%増の8942億円になり、営業利益が800億円、営業利益率は9%だという。すなわち、電池事業が売上額の4割にも達している。コアとなる受動部品は同期の売上額が前年同期比35.2%増の2485億円、営業利益率15.9%で営業利益は394億円と好調だが、センサ応用製品事業が7億円の営業赤字だが、1年前は123億円の赤字だったから改善したと言えそうだ。

スマホの急速充電向けに、GaNパワーICで従来の充電器よりも3倍高速で、体積は1/3と小型にできるICを開発してきた米Navitas社が、2022年1月に米ラスベガス市で開催されるCESにおいて、Innovation賞を受賞することが決まった。最近急速に伸びてきているスマホの急速充電器にGaN ICが使われてきており、いち早くIC化に成功したNavitas社が評価された。このGaN ICチップを使った充電器は体積電力密度1.4W/ccで、4500mAhの充電をわずか17分で行う。Lenovoや小米、Dell、Oppoなど大手スマホメーカーにすでに採用されており、GaNパワー半導体では1位、2位を争う企業に成長した。

同じバッテリでも電力網の安定化に使うニッケル水素電池を東京大学発のスタートアップ、エクセルギー・パワー・システムズが日本の需給調整市場に参入すると19日の日経産業新聞が報じた。すでにアイルランドの再生可能エネルギーの需給調整市場で使われており、日本でもこの4月に需給調整市場が開設されたことにより、202年度をめどに国内市場に参入するという。同社のバッテリシステムは放電立ち上がり時間が短く、変動調整にぴったりであるため、日本では24年度から高速応答電源を市場で扱うことから、参入を決めた。

(2021/11/22)

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