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欧州が半導体・ITに18兆円を投入、域内生産で半導体2割シェアを目指す

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米中につづき、欧州も半導体・ITに18兆円を今後投じるという報道が出てきた。半導体を含む台湾のIT産業の好調が続いている。2月における台湾大手19社が前年同月比46.4%増と過去最高の成長率を達成した。対して中国の半導体は、投資した割に効果が出ておらず政府が見直しに動いているという報道もある。

米国では2月24日に、半導体などのサプライチェーンを100日以内に見直す大統領令にバイデン大統領が署名した。これは中国を念頭に置いた経済と国防政策の一環として半導体産業が位置付けられたもので、「国益や価値を共有しない外国に依存するわけにはいかない」と主張している。ここでの外国とは中国に他ならない。半導体製造にもっと力を入れてほしいというSEMIやSIAなどの団体から受けた要望に素早く対応したもの。

これまでの米国は設計や応用製品では強いが、半導体製造では製造能力に関する世界シェアがわずか10%と、日本の13%よりも小さいというレポートをSIAとボストンコンサルティンググループが発行した(参考資料1)。さらにセミコンポータルでも、米国の製造力強化に関する報道(参考資料2)を、Semiconductor DigestのPete Singer編集長の許可を経て行ってきた。

半導体を強化する動きがEU(欧州連合)でも現れた。3月10日の日本経済新聞によると、EUは9日、域内生産する次世代半導体の世界シェア2割を目指す目標を打ち出したという。半導体やデータ産業などのデジタル分野で米国や中国への依存度を下げるため、2030年の実現を目指すとしている。約18兆円を今後2〜3年でデジタル分野に投じて、域内供給網を立て直すことなどが柱。半導体製造では回路線幅2nmの次世代半導体の生産を目指し、30年までに金額ベースで少なくとも20%のシェアを目指すという。半導体分野は日本だけが世界から遅れているという構造にメスが入るのはいつのことになるだろうか。

台湾の主要IT19社の2月の売上合計額は9374億台湾元(約3兆6000億円)となり、19社の内14社が2桁成長を見せた、と12日の日経が報じた。台湾でのファブレストップのMediaTekは78.7%増と大きな伸びを示し、鴻海精密工業は84.8%増とやはり驚異的な伸びを示した。華為科技に代わる中国のスマートフォンメーカー小米やOppoなどに大量出荷した。MediaTekはスマホの5G向けモデムやアプリケーションプロセッサチップをすでに出荷している。華為傘下のHiSiliconが7nmを設計できてもTSMCへ製造委託できなくなったために、その分スマホメーカーが変わり、アプリケーションプロセッサメーカーもMediaTekに代わった。

微細化で先頭を行く台湾のTSMCがEUVリソグラフィ装置を最も使いこなしていることからEUV装置の唯一のメーカーであるASMLは、台湾における従業員を現在の2800人から2割以上の3400人に増強すると12日の日経が報じた。台湾は、ASMLの売上額の4割を依存する地域だ。TSMCも好調なため、現在の従業員5万人から今年9000人を増強する。

台湾と対照的なのは中国だ。中国はここ1〜2年、半導体を強化するため投資を続けてきた。2020年の半導体投資は1400億元(約2兆3000億円)と前年の300億元から5倍近く膨らんだという。しかし成果はあまり上がっていない。地方では、総額1000億元(約1兆6500億円)を投資したファウンドリの弘芯半導体製造は事実上の経営破綻に追い込まれた。経営トップは半導体産業に従事した経験がないという。また、CMOSイメージセンサの江蘇省の徳淮半導体、400億元を投じてパネル向けの半導体の陝西省の坤同半導体科技も事実上の経営破綻に陥ったと言われている。

そこで、2021〜25年の5カ年計画「国家経済安全保障の強化」の中に半導体強化の具体策を盛り込んだ。工業情報省の草案によると、設計分野の企業にはプロセッサやメモリ、センサなどの最新半導体の設計に不可欠とされるEDAの利用を要求。大卒以上の学歴、研究開発スタッフがそれぞれ全従業員の半数以上を占めることも求める。研究開発費は売上高の6%以上、独自設計の比率が売上高の半分以上、特許など8件以上の権利保有が必要になる、と日経は報じている。

中国は、安易に金儲けできる分野に殺到する傾向があり、今はインタネットのサービス産業に大量の若者が向かっている。じっくり腰据えて研究開発するという半導体製造はなかなか根付かない。その中で、製造装置メーカーのAMEC(Advanced Micro-fabrication Equipment Inc. China:中微半導体設備)はエッチング装置やMOCVD装置を量産しており(参考資料3)、20年12月期における売上額は17%伸びたという。

参考資料
1. Government Incentives and US Competitiveness in Semiconductor Manufacturing (2020/09/16)
2. 米国が強化する半導体製造 (2021/01/21)
3. 中微半導体設備のホームページ

(2021/03/15)

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