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半導体の企業価値が高まる、2010年比でTSMCが8.7倍、ルネサスも4.7倍

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半導体産業が、2017年〜18年のメモリバブルを経て再び、活況に沸いている。2月13日の日本経済新聞は、半導体の企業価値(時価総額)が急速に高まっていることを報じている。2010年比ではNvidiaが35.9倍、ASMLが13倍、TSMCが8.7倍、東京エレクトロンが5.2倍となっている。最近の車載半導体不足から始まった半導体の供給不足は産業用半導体へも広がっている。

日経によると、時価総額が最も高い半導体メーカーはTSMCの5472億ドルであり、半導体チップのブランドを持たないファウンドリが、ブランドを持つ半導体デバイス企業よりも多い。TSMCの2020年第4四半期の売上構成を見ると、5nmと7nmプロセスの売上額が全売上額の49%と半数近くにもなっているが、投入したウェーハ数量は10%程度しかない。つまりTSMCは、投資額の大きな5nm、7nmプロセスで大きく稼いでいることになる。TSMCは用途別の売上額も公表しており、車載向け半導体は全体のわずか3%しかない。車載用は微細化しても16nm、28nm程度で、微細化需要というよりも、いわば「枯れた装置」で作れる応用だ。つまり儲けの少ない車載半導体をもっと増やしてくれと世界各国政府から頼まれても、おいそれとはいかないことが数字でわかる。

国内のルネサスエレクトロニクスも健闘している。同社の企業価値は2010年比4.7倍と、Samsungの3.6倍よりもその伸びは高い。この10年のルネサスを見ると、売上額こそ2020年(同社は年度とカレンダー年が同じ)は7157億円と前年比0.3%減の横ばいだが、純利益は456億円と前年の63億円の赤字から大きく転換した。利益率はまだ10%に達していないものの、営業利益率は9.1%と、もう少しのところまで来ている。

最近の半導体景気を日経は、5Gの普及でスマートフォンや基地局などがけん引としているが、5Gサービスは世界中で始まったばかり。スマホは2020年前半は全くダメで、大きなマイナスだったが、後半から回復してきている。むしろ新型コロナウイルス感染拡大防止のためのテレワークや巣ごもり需要がけん引していると見るべきだろう。パソコンやタブレットが第2四半期以降に急速に伸びており、パソコンからのデータを受けるデータセンター需要も大きい。Nvidiaが今年伸びたのはゲーム需要による。

また、TSMCは2月9日に、日本に3D-ICの材料開発の研究センターを自前で設立するための予算を取締役会で成立させた(参考資料1)。投資額は186億円未満になる。日本での法人設立に関する決定事項はこれだけだが、他にも今年の投資額を117億9480万ドルにすること、CMOSイメージセンサの子会社VisEra Technology社をIPOで株式上場することを決めている。投資額には新工場の建設や設備の導入、先端パッケージ技術の拡大、そしてR&D費用が含まれている。

好調なルネサスとは対照的に、東芝デバイス&ストレージ社は、システムLSI事業からの撤退による早期退職制度に応募した452名と、配置転換の希望者372名を合わせ、824名を人員整理すると発表した。昨年9月時点では770名の人員整理と見込んでいた。また、キオクシアは2020年10〜12月期の売上額は前年同期比13%増の2872億円だったが、最終損益が132億円の赤字だったと発表した。華為向けNANDフラッシュが9月15日以降、出荷が止まったことが大きいという。

また、キヤノンは後工程向け基板回路パターンを描く露光機を4月上旬から売り出すと、12日の日経産業新聞が伝えた。i線の露光機で解像度は1.5µm。300mmウェーハ対応であることから3D-ICのTSVの穴あけや、WLP(ウェーハレベルパッケージ)用のバンプパターンなどに使えそうだ。

参考資料
1. TSMC Board of Directors Meeting Resolutions (2021/02/09)

(2021/02/15)

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