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AppleがMacのCPUをIntelから独自に変えたのはスケーラビリティ

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AppleのMacパソコンのCPUにIntelから内製のM1に切り替えたモデルが発表された。Appleの狙いは何か。日本経済新聞が連日このことを報じている。セミコンポータルでもこれまでの事実を積み重ねて考えてみよう。また台湾のIT・半導体産業が好調であることも伝えられている。

MacのCPUは、これまでMotorolaの68シリーズ、PowerPC、Intel、そしてArm Cortex-AベースのM1へとやってきたが、CISCとRISCを交互に繰り返し、今回のRISC Armアーキテクチャへとたどり着いた。昔のプロセッサはともかく、商用汎用のIntelのCISCアーキテクチャではなぜまずいのか。なぜRISCベースの独自チップに変えたのか。

はっきりしていることは、四つある。PC価格やコストではない。一つは消費電力、もう一つはIntelの方針、三つ目はiPhone/iPadとの連携、そしてデータセンターへの展開である。Armアーキテクチャは元々消費電力の低さを追求してきたという歴史がある。性能はそこそこ得られていればよく、低消費電力であることが絶対だった。だから携帯電話や携帯ゲーム機などに使われていた。その後は性能を追求してきたが、それでも消費電力の削減はマストであった。

またIntelのCPUはあくまでもパソコンやサーバを対象とした汎用製品であり、Intelはパソコン部門からデータ部門への移行をここ数年押し進めてきた。それでもまだパソコン部門の売上額は半分程度ある。

Appleの最大の売り上げは今やiPhoneである。iPhoneやiPadと、MacのCPUが別だと、無駄な命令セットが入っていることになる。iPhoneやiPadと連携は図るためには命令セットを統一したい。ArmのようなRISCはAppleに向いたアーキテクチャである。しかもiPhone用のチップの性能は大きく上がった。MacのCPUにArmのアーキテクチャを使う場合でもメモリとの距離を縮め、しかも並列動作、NoC(Network on Chip)の採用などで性能は上げることができるようになった。モバイルデバイスとパソコンCPUの命令セットを統一し、ミドルウエアを調整すると、iPhoneやiPadと同じアプリケーションをパソコンでも使うことができる。

さらにGAFAMと呼ばれる、Google、Amazon、Facebook、Microsoft、Appleの内、データセンター向け自社製CPUを持っていない企業はAppleだけだった。Appleクラウドで他社と競争するにはあまりにも貧弱だった。Googleの検索エンジンのデータセンターはTPUを開発して有利な立場にある。AmazonやMicrosoftも自社製半導体のクラウド、IBMでさえPowerアーキテクチャのクラウドを持っている。AppleのiCloudだけが他社製だった。

独自チップを開発するメリットは拡張性(スケーラビリティ)にある、とAppleは独自のCPUチップApple Siliconに関するビデオの中で述べている(参考資料1)。つまりサーバ向けからパソコン、スマートフォンへとスケーラブルに展開できることだ。現在のiPhone 12では、A14バイオチップが使われているが、将来はサーバ、パソコン、iPad、iPhoneと全てのCPUを独自のApple Siliconで構成し、グラフィックスを含めた全てのアプリケーションを全てのデバイスで使えるようにする。

台湾のIT・半導体産業は好調だ。10月におけるIT関連19社の売上額は前年同月比4.2%増の1兆3254億台湾元(約4.9兆円)となった、と13日の日経産業新聞が報じた。9月までは華為特需があったため、10月は落ちると見られていたものの、iPhoneの発表で盛り返しただけではなく、パソコンも好調だった。

また、台湾の半導体生産額は2020年に3兆2185億元(約11.85兆円)となる見通しだと台湾の産業科技国際策略発展所(ISTI)の調べでわかった、と11日の日経が伝えた。TSMCへはAppleのMacチップが加わり、AMDやiPhoneのA14も最先端プロセスを使っており、華為を失ってもTSMCを使いたいとする企業が列をなしている。また、TSMCは米国アリゾナ州に設置する半導体企業の資本金が35億ドルになると発表した。

参考資料
1. Complete Guide To Apple Silicon And Apple's ARM Mac plans (2020/11/09)

(2020/11/16)

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