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5Gが半導体をけん引、スマホから基地局まで半導体がカギを握る

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5Gが半導体をけん引していることは間違いなさそうだ。5G用半導体をリードするQualcommが発表した第3四半期における半導体部門の売上額は前年同期比38%増の49億2100万ドルとなった。スマートフォン向けのメモリメーカーのSK Hynixも好調。通信業者のソフトバンクとKDDIは合計4兆円を5G基地局に投資する。半導体製造装置・材料各社も好調が続く。

Qualcommが11月4日に発表した2020年7〜9月期決算では、売上額が前年同期比73%増の83億4600万ドル、純利益が5.8倍の29億6000万ドルとなった。ただし華為科技からの和解金を含むため、その影響を除くと売上額は65億200万ドルとなる。Qualcommは半導体部門とライセンス部門の2部門を持つが、この内半導体部門の売上額だけでも49億2100万ドルとなる。やはりけん引するのが5G通信用半導体。電子機器を分解しているiFixitによれば、最近発売されたAppleのiPhone 12とiPhone 12 Proに使われている5G通信の無線RF回路(SDR865)、5G用モデムIC(SDX55M)ともQualcommのチップであった(参考資料1)。

ただし、5Gスマホの売れ行きは好調だが、アプリケーションプロセッサA14 Bionicが5nmプロセスという超最先端の微細化技術を使うため歩留まりがまだ十分とは思われず供給体制がまだ整っていないようだ。Appleは1世代前のiPhone 11シリーズの追加生産をサプライヤーに通達した、と11月6日の日本経済新聞が報じた。iPhone 11、SE、XRの10月から年末にかけての出荷準備を要請したとされる。

DRAMとNANDフラッシュを生産するSK Hynixは売上額10%増の8兆1288億ウォン(1ウォン=0.09円)、営業利益は同2.8倍の1兆2997億ウォンとなった。華為向けの駆け込み特需があったと見られる。SK HynixはIntelのNANDフラッシュ部門を買収することが両社で合意されており、両製品ともトップのSamsungを追いかけていく。Intel買収前までは、キオクシアへの出資を15%以上高めると計画していたが、IntelからのNANDフラッシュ工場の買収が決まると、「キオクシアはより長期的な視点で進めた戦略投資」と李錫熙(イ・ソクヒ)社長が述べている、と5日の日経は報じた。このことはNANDフラッシュよりは、ストレージクラスメモリでキオクシアの技術を使いたいという意味であろう。Intelが3D-Xpointメモリ技術をSKに渡すつもりは全くないためだ。

製造装置・材料でも5G向けに開発を進める。東京エレクトロンの河合利樹社長は、5Gの普及を追い風に、「来年は今年を上回り、再来年も同様。21〜22年はビッグイヤーズになる」と述べた、とのコメントを7日の日経が掲載した。

シリコンウェーハトップの信越化学工業は、フォトレジストに合計で300億円を投資し、直江津工場に加え台湾でも、5G普及などで需要拡大が見込まれるEUVレジストの生産を始める、と6日の日刊工業新聞が報じた。JSRや住友化学もEUVレジストに力を入れ、住化は22年にEUVレジストの開発・評価体制を強化するとしている。

5Gでは通信オペレータも当然投資する。ソフトバンクとKDDIは今後10年に渡りそれぞれ2兆円を投資する、と4日の日経が報じた。5Gは目標性能・スペックにまだ全く届いていないが、2030年に向けて進化し続け、目標値へと向かう。5G技術を進化させながら基地局を増やしていく。6Gは2030年以降の技術と見られている。

5Gでは、スマホだけではなくIoTデバイスもつながることが求められている。日立製作所はIoTのソフトウエアプラットフォームである「ルマーダ」のパートナー制度を始めた。IoTシステムでは、単なるセンサから通信ネットワーク(5GやLTE)を通してクラウドサーバーに上げ、そこでデータ収集・管理や紐づけ・保存・解析・可視化といった一連の作業を経て、IoTセンサへフィードバックする。IoTシステムはハードウエア、ソフトウエア、サービス、インフラなどさまざまなパートナーがいて初めてビジネスになる技術である。ソフトウエアプラットフォームだけではビジネスを発展させることが難しい。モノづくり産業の日立は、生産ラインの管理や機会の予知保全など工業用途では強いが、さらに発展させるためにはもっとさまざまなパートナーを持ちたい。そこで、パートナーを募集しエコシステムを構築しようという訳だ。

IoT端末のデータを全てクラウドに上げてしまうと生データばかりで、欲しいデータにたどりつくのに時間がかかってしまう。このためエッジ側でもできるだけデータを処理しておこうという考えがエッジコンピュータでありエッジAIである。ArmはエッジAI用のIPコア「Ethos-U65」をNXP Semiconductorsにライセンス提供した、と4日の日経産業新聞が報じた。このIPコアは従来のAI推論コアと比べて、同じ消費電力で性能が2倍高いという。NXPはこのAIコアで、エッジのIoTデバイスをもっと賢くする市場を狙う。


参考資料
1. iPhone 12 and 12 Pro Teardown (2020/10/20)

(2020/11/09)

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