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ソフトバンクと東大との提携から見える大学への期待度

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AI、5G、IoTをいち早く理解し利用することが将来の勝利につながるが、大学をうまく利用できない企業が多い。12月8日の日本経済新聞は博士号取得者をうまくいかせない日本企業の多さを報じる一方で、ソフトバンクが東京大学にAI開発で10年間200億円の投資を行うと報じた。本ウェブでも東大とTSMCの提携を報じた(参考資料1)。

ソフトバンクグループCEOの孫正義氏は、「AIが全ての産業を再定義する」と表現し、AI開発やその環境に投資を活発にしている。東大に今後10年間で200億円を支援し、日本のAI開発をテコ入れする。両社で「ビヨンドAI研究所」を2020年度内に立ち上げ、基礎研究の拠点を東大本郷キャンパスに設ける。応用研究の拠点は、ソフトバンクが20年度に本社を移転する竹芝オフィスに置く。当初の人員規模は150人程度で、東大に加え海外有力大学の研究者も招く計画だという。ソフトバンクは産学のエコシステムを構築する。

多くの日本企業、特に大手は博士号の人材を敬遠しており、博士号を持つ研究者の75%は大学などに所属するが、国立研究所などに就職しても雇用が不安定な「ポスドク問題」を生み出している。過去10年間で博士号取得者が1割以上減ったという。米国や中国ではその逆。10年間で博士号取得者が2割増えたという。しかし、日本企業の中には、博士課程の人間を採用する場合でも、博士号の取得を諦めさせて入社を優先させたところもあると日経は報じている。

米国企業の経営陣には博士号を取得した人間が多い。米国ではCypress Semiconductorの創業者T. J. Rogers氏やNational Instrumentsの共同創業者であるDr. T(ドクターティ)こと、James Truchard氏など博士号を持つCEO経験者が多い。

東京大学で通信技術や業界に詳しい森川博之氏は5日の日経のコラム「経済教室」のなかで、「5Gを検討した企業からは『5Gならではのサービスがない。4Gで十分』『実証実験をみてもビジネスになるようなものが見当たらない』『期待していたが何をやればいいかわからず、静観せざるを得ない』などの声を聞く」と述べている。要は企業が5Gを正確に理解しておらず、「5Gは新しいインフラであることを見落としている」と厳しく指摘する。これからの技術である5GやAI、IoTなどの開発に大学を利用しない手はない。ソフトバンクが東大と提携したことは、AIの国内先駆者であるプリファードネットワークスを東大が生み出したことも念頭にあるのに違いない。

日本の半導体産業が世界から大きく取り残されたが、半導体部門を支配してきた電機企業の経営陣が半導体を理解していなかったことが最大の要因であろう。パナソニックが半導体事業を全て捨ててしまうのをはじめ、1〜11月に早期退職・希望退職が6年ぶりに1万人を超え、上場企業の中でも電機が12社と最も多かったと7日の日経は報じている。AIが産業を再定義する以上、AIはハードウエアの究極である半導体チップになることは必然の道である。半導体を捨ててしまえば、その会社はどこで差別化を図るのか、見えなくなってしまう。

5G、AI、クルマなどを見据えて、積極的に半導体に投資している中国は、台湾や日本、韓国から半導体の人材を採用するケースが増えている。3日の日経によると、すでに台湾から3000人を超える人材を引き抜いたという。日本でも旧エルピーダメモリの坂本幸雄社長を国営投資ファンドの紫光集団の副総裁に迎え入れると発表したことは記憶に新しい。英国のIPベンダーのArm社の中国拠点であるArm Chinaの株式の51%をソフトバンクグループが保有していたが、昨年、中国系ファンドなどが参画するコンソーシアムに売却していたと、5日の日経が報じた。昨年4月時点で341人だった従業員は600人に増えたという。

中国政府は2025年に、電気自動車やプラグインハイブリッド(PHV)、燃料電池車など新エネルギー車が新車販売に占める比率を25%に引き上げる、と4日の日経が報じた。2018年は約4%だった。これによって半導体市場も新たにできる。


参考資料
1. 東大とTSMCが包括提携、3nm以下のLSI実現に向けた国際協力へ (2019/11/28)

(2019/12/09)

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