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経産省の韓国向け輸出管理の変更を巡るさまざまな見方

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日韓の半導体業界を揺るがす発表(参考資料1)が7月1日に経済産業省からなされた。この通達を巡り、さまざまな憶測が飛んでいる。この通達は、7月1日に経産省が出した「大韓民国向け輸出管理の運用の見直しについて」と題するもので、輸出管理が簡単な「ホワイト国」から韓国を除外する、フッ化ポリイミド・レジスト・フッ化水素の3品目を対象とする、というもの。

メディアが「韓国企業の生産に大打撃になる」との報道や、「韓国人徴用工問題がその理由」に対して、元通産官僚は、「誤解だらけ」と日経ビジネスの電子版で表現し、経産省を擁護している。しかし、8日の日経産業新聞でもやはり、「韓国電機産業が大打撃を受けるのは間違いない」と表現しているうえ、経産省側が徴用工問題と関係ないという言葉には、やはり無理がある。

今回、経産省が輸出管理運用の見直しを行う背景として、「日韓間の信頼関係が著しく損なわれた」からだとしている。さらに「韓国との信頼関係の下に輸出管理に取り組むことが困難になっている」、「韓国に関連する輸出管理をめぐり不適切な事案が発生した」とも表現している。後者の「不適切な事案」とは何かについて経産省は一切説明していない、と5日の日本経済新聞は報じている。要するに、韓国との信頼関係が崩れたために輸出管理を厳しく、韓国をホワイト国から外す、と言っているのである。軍事上は、ワッセナール協定(旧共産圏への輸出を制限したココムから発展した取り決め)に基づいてホワイト国以外は輸出を制限しているが、今回の措置はそこまでは行かない。輸出管理には最大90日かかるが、制限するわけではない。だからといって、90日もかからないと見ることは無理がある。手続きが90日かかると解釈するのが常識であろう。

また、対象とする品目については、フッ化ポリイミド、レジスト、フッ化水素に限定している。5日の日刊工業新聞は、これらの品目について調べ解説している。これによると、レジストはEUV向けと電子ビーム露光向けに対応したもので、JSRと東京応化工業、信越化学工業のみが生産している。また、フッ化水素はステラケミファと森田化学工業、昭和電工が生産しているが、対応を検討中と回答している。フッ化ポリイミドは、耐熱性を持ちフレキシブルディスプレイ基板をはじめ、航空宇宙などに用途があると留めている。

EUVが7nm以下から使われ始めたとして、影響は少ないと日刊工は見ているが、EUVはメモリには使われない。Samsungは脱メモリを宣言しており(参考資料2)、ファウンドリビジネスをカンパニー制に格上げした(参考資料3)。ただし、ファウンドリビジネスではSamsungは台湾のTSMCと激しくつばぜり合いを繰り広げており、その影響はあるかもしれない。というのは以下の理由だ。多くのファウンドリ企業が2019年第1四半期に2桁もマイナス成長したのに対し、TSMCは7nm以下のビジネスで稼いだため4%減の落ち込みで済んだ。しかもその原動力の一つがEUVだったと述べている (参考資料4)。

また、フッ化水素は原料の蛍石(CaF)を中国から輸入し、日本国内や現地で加工しHFを製造している。シリコン半導体プロセスのほとんどすべての工程でドライエッチ用にHFは使われるが、日本製のHFがどの程度のインパクトをメモリ事業に与えるのか、今のところわかっていない。HFが液体なのかガスなのか、どちらに適用されるのかも不明だ。

今回の通達が韓国の半導体業界と日本の半導体材料化学業界に影響を与えることは間違いないが、どの程度なのかは誰にもわからない。3日の日経は、株式市場の反応を伝えているが、ステラケミファと昭和電工が1%安、JSRは一時5%安、と報じ、変化はわずかだった。韓国のSamsungとSK Hynixはそれぞれ下がったが、彼らはこの通達というよりは、現在メモリ不況のせいで株価を落としている。

そのような中、8日の日経は、サムスントップが来日、取引先の日本企業と対応を協議すると報じた。もっと冷静に考えれば、今回の措置は、日韓間の信頼を損ねたことをベースにしているため、徴用工問題やレーダー照射問題などが信頼関係を損ねたと見ることは無理がない。とすると、日本政府は政治問題を通商問題にすり替えたわけだ。徴用工問題は元々戦争という国家対国家の争いの問題を、民間企業と民間人の問題にすり替えた韓国側に問題があると言えるだろうが、政治決着できないほど交渉力がない政府の対応を、通商問題にすり替えた対応もやはり問題ではないだろうか。

参考資料
1. 大韓民国向け輸出管理の運用の見直しについて (2019/07/01)
2. 韓国でなかなか育たない非メモリビジネス事情(3)−巨額投資計画明らかに (2019/05/15)
3. ファウンドリ2社が成長戦略を語る〜Samsung編 (2018/09/14)
4. TSMCが変身か、10年ぶりの記者会見でロードマップ示す (2019/07/02)

(2019/07/08)

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