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半導体関連の宴は終わりなのか

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半導体製造装置が一服、という視点で7月末に記事(参考資料1)を執筆したが、8月11日の日本経済新聞は敏感に反応、「半導体関連、宴の終わり?」というタイトルを付けた。先週も、というべきだがAIがあらゆる産業に浸透し始めたことが報道されている。AIが定着するようになるとAIチップも浸透するようになる。巨大な市場になりそうだ。

日経は、半導体関連の株価が軒並み下がったことをその記事の根拠にしている。確かに、モルガン・スタンレーがApplied Materialsの投資見通しを下げ、半導体製造装置業界の見通しも下げた、と報じた。さらにAMATやLam Researchの株価が4%下落、東京エレクトロンが一時4%、アルバックも一時10%下げたという。アルバックは、8日に発表した決算で、2018年度(2017年7月~2018年6月)の売上高は前期比8%増の2492億円、連結純利益は同47%増の359億円、と好調だった。

もちろん、半導体メーカーの業績と、半導体製造装置メーカーの業績は別。半導体メーカーは製造装置が稼働させてチップを生産しているのに対して、製造装置は半導体メーカーに納入、検収を経て売り上げとなる。時期的なズレがある。半導体シリコンウェーハの業績も同様、時期的なズレを見ていると、4~6月は好調に伸びており、SUMCOの業績好調で示されている。

6月における製造装置の落ち込みは、NANDフラッシュの装置であり、これが最近の製造装置の売り上げをけん引していた要因の一つである。この2年間、NANDフラッシュは3次元化に向かっており、特に64層の歩留まりが十分ではなく、装置の台数を増やし対応していた。6月くらいから歩留まりが上がり、64層NANDフラッシュ製品の生産数量を増やせる状況になってきた。このため、「製造装置の台数はちょっと一服」、という状況になった。ただし、日本製NAND製造装置の落ち込みは北米製に比べて大きい。これはNANDの比重が大きすぎたためであろう。

この先の半導体製造装置の今後については、これが宴やスーパーサイクルの終わりなのか、8月22日に開催するSPIマーケットセミナー「世界半導体市場、2018年後半からの1年を津田編集長と議論しよう」において参加者全員で議論していく。

半導体製造がらみでは、TSMCの製造装置の一部がコンピュータウィルスに侵され、生産を停止したというニュースがあった。日経でも8月7日に報道され、影響額は190億円に上るとしている。ソフトウエアのインストール時に人為的なミスでウィルスに感染したらしい。TSMCは新竹、台中、台南の工場を社内ネットワークで結んでおり、拡散したようだ。

半導体工場では、インターネットと切り離しているから大丈夫、ということは決してない。TSMCもインターネットからは遮断していたようだ。工場内で誰かが、大口顧客であるAppleやQualcommの「次の戦略」、と見てみたくなるようなタイトルを付けたUSBメモリをわざと落としたら危ない。セキュリティの問題は、従業員全員の意識の問題でもある。インターネットから遮断していてもウィルスに感染する機会はいくらでもある。

AIはあらゆる産業で使おうとするニュースが先週もあった。AIを内蔵したスマートフォン、悪筆・乱筆でも文字を認識するAI、クレーンに搭載されたAI、製鉄所の圧延工程でベテラン作業者の技を取り入れたAI、タクシーの突発的な事態での乗客需要を予測するAI、LNGプラントの生産効率を上げるためのAI、IT運用業務を改善するAI、医療画像を解析するAIなどの取り組みが報道されている。どれも、機械学習あるいはディープラーニングを利用したAIが多い。AIのコンピューティングは、将来必ずチップに落とし込むことになるため、AIの動向からは目を離せない。

AIは材料開発にも有効だ。サムコは、新材料開発にマテリアルズ・インフォマティックスを利用する研究に着手した、と8日の日刊工業新聞が報じた。元素の組み合わせで、新材料を創出する場合に従来は、実験的に組成を少しずつ変えながら、所望の特性を探していた。もちろん、連続的に組成を変えられる「コンビナトリアル」技術はあるが、これも実験だけに実験開始からデータ解析までに長い時間を費やす。実験を使わずにコンピュータシミュレーションやAIなどを使って新材料の特性を解析できれば、実験回数を減らすことができる。

参考資料
1. 半導体製造装置はちょっと一服状態に (2018/07/31)

(2018/08/13)

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