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Intel、学習用のAIプロセッサを開発、市場へ

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Intelが5月23日米国でAIの開発者会議「Intel AI DevCon 2018」を開催、その学習用のチップ「NNP(Neural Network Processor)」を発表したことが5月25日の日経産業新聞で報道された。学習用の市販プロセッサとしてNvidiaのGPUがこれまで市場を独占してきたが、Intelのチップはこれにまともに対抗するもの。

Intelはこれまで、Nervana、Movidius、Saffronの3社をAI用のソリューション開発のために買収してきた。Saffronは連想学習や機械学習をベースにした認識のソフトウエアプラットフォームの企業、Movidiusはビジョンプロセッサをターゲットにした推論用プロセッサで低消費電力の企業、そしてNervanaこそがIntelが学習用を狙ったディープラーニング用のプロセッサ企業である。AIの学習用プロセッサの本命がNervanaのNNPである。

Intelはこれまでニューラルネットワークを使ったディープラーニングの学習(トレーニング)用チップとしてCPUやFPGAもその候補に入れてはいた。GPUはNvidiaの独壇場となっている。AMDもNvidia同様の強力なGPUを持っているが、ディープラーニングを中心とするAIには半導体だけではソリューションとして売ることはできず、ディープラーニング向けのAIソフトウエアフレームワーク(TensorFlowやCaffe、Chainerなど)をはじめとするソフトウエアもサポートしていなければAIチップとして使えない。NvidiaはAI用のソフトウエアのサポートで圧倒的に強く、このため独占的な地位を占めていた。

IBMのWatsonはPowerアーキテクチャのCPUの並列演算を中心に学習させてきたが、外部には販売しない。また、GoogleもTPUを自社用サーバーに使ってきたが、一般市場へは出荷しない。超並列演算と比較的低精度の積和演算においては、NvidiaのGPUチップが得意とするところ。この学習市場にIntelが新たに参入してきたという訳だ。Nervanaのアーキテクチャはまだ明らかにはなっていないが、積和演算回路の並列構成がプログラム部分も含めてどうなっているのか興味あるところだ。

ディープラーニングを中心とするAIは、推論チップではかなりの競争となってきているが、クラウドを中心とする学習チップに関しては、Nvidiaの独壇場であっただけに今後のAIチップ市場ではNvidiaとIntelの争いが激しくなる。その決め手となるのはどれだけ多くのソフトウエアをサポートしているかにかかっている。

先週は、AIがらみの記事も多かった。経済産業省と国土交通省が橋やトンネルの点検でドローンを飛ばし、撮影された画像の分析・管理などにAIを用い、保守の品質や効率を高めることで合意した、と24日の日刊工業が報じた。現場のデータを国交省が集め、経産省のAI研究プロジェクトに提供するという。

Microsoftは、障害のある人の困難を取り除くためにAIを使う活動に2500万ドルを助成する5年間のプログラム「アクセシビリティのためのAI」を始める、と23日の日経産業が伝えた。

大阪大学が有機高分子材料を用いる太陽電池材料の性能を、AIを用いて予測する手法を開発したと、23日の日刊工業が報じた。材料の組み合わせの種類が膨大になると、マテリアルズインフォマティクスの手法が使われるが、このほど東レや昭和電工などの素材大手が東京大学などと組み、AIを取り入れたマテリアルズインフォマティクスの開発手法を習得させるための人材育成事業を始める、と22日の日本経済新聞が伝えた。上記企業に加え、積水化学、富士フイルム、三井化学と業界団体、東大などで構成するコンソーシアムを立ち上げた。2018年度中にカリキュラムや通信ネットワークを準備し、19年度から開講する予定だ。

さまざまな形や分野でAIが研究や開発手段に使われるようとしている今、システムインテグレータのTISはAIベンチャーに出資する制度を設けた、と25日の日刊工業が報じた。同社は、音声認識と機械学習に強みを持つ東大発ベンチャーのフェアリーデバイセズにすでに出資しているという。最大1億円を出資するとしている。

(2018/05/28)

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