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EVシフトが鮮明に、設備投資も活発

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東京モーターショーが10月27日から一般公開が始まり、クルマ関連の記事が相次いでいる。特にEV(電動車)へのシフトが急速で、それを見据えたパワー半導体やバッテリの設備投資が活発になっている。個々の技術でも新しい技術が登場している。

ホンダ系のティア1サプライヤであるケイヒンや欧州のBoschなどがモーターと一体化させたEV向けのパワーコントロールユニット(PCU)をモーターショーで展示した。PCUには昇圧コンバータやインバータ、パワー半導体モジュールなどを組み込んでおり、冷却構造も工夫している。基本的には水冷を使う。パワー半導体としては実績のあるIGBTと高速ダイオードをセットにした3相モーターを駆動するためのモジュールとしている。

パナソニックは、EVなどに搭載するリチウムイオン電池を増産するため、日米中の3拠点に合計1000億円を投資すると26日の日本経済新聞が報じた。2018年3月末までの稼働を目指す中国の大連工場で新たに2棟目の建設に着手、1棟目の生産能力数十万台並みの能力になる見込みだとしている。米ネバダ州の大規模工場はTeslaと共同運営することになっており、現在1期目の工場建設と生産ラインの敷設を同時に進めている。このほど2期目の工事の調整に入っているという。日本では兵庫県姫路市の液晶パネル工場で、19年度から国内自動車メーカー向けにEV用の電池を生産する。

リチウム(Li)イオン電池はLiイオンの出し入れによって充放電を行う電池であるが、Liイオンを出入りしやすくしたバッテリ技術を岡山大学が開発した。Liイオン電池の正極(カソード)にはコバルト酸リチウムを使い、このLiイオンが負極(アノード)へ向かって移動すると外部に電流が流れる訳だが、このほど岡山大学の寺西貴志助教らは正極の表面に粉末状の強誘電体BaTiO3(チタン酸バリウム)を付着させた。BaTiO3の持つ分極作用を使ってLiイオンの動きをアシストすることでLiイオンが再付着しやすくなり、充放電の速さが5倍になったという。急速充電に生かせるとしている。

また、自動車のサラウンドビューモニターのように、自動車の上から見る画像の視点を360度どこからでも変えられるシステムをOKIの小会社OKIアイディエスが開発したと27日の日経産業新聞が伝えた。サラウンドビューは4台のカメラからの画像を合成してまるで上から見ているように映すシステムだが、今回は視点をクルマの真上だけにとどまらず360度どこからでも見られるように変えたもの。画像合成するため基本的には視点をどこからでも置くことは計算上可能であるが、設定してからの画像を合成する時間を短縮したようだ。その視点を予め決めておく技術なら、すでにルネサスエレクトロニクスや富士通セミコンダクタなどが開発しているが、自由に変えられるという訳ではなかった。

EVでは、モーターの回転を自由自在に変えるためのインバータ回路でパワー半導体がカギを握ることになるが、このほど富士電機はEV用のパワー半導体の生産設備に2017年度と18年度の合計で500億円を投資すると30日の日経産業新聞が報じた。パワー半導体は、EVだけではなく、ロボットや工作機械にも使われる。2017年度末には半導体デバイスの月間生産量は16年度比6%増の16万6000枚に達する見込み。

パワー半導体に限らず、全ての半導体が好調なため、ウェーハ搬送システムを手掛けるローツェはベトナムの製造子会社の工場を増強するため、32億円を投資すると30日の日刊工業新聞が伝えた。半導体ウェーハの前工程の搬送装置の生産能力は現状の2.6倍に高まる見込みで、19年1月から順次、第5工場、第6工場と稼働させる計画だという。

発表された半導体製造装置や検査装置メーカーの業績も好調だ。26日の日経によると、日立国際電気の2017年4~9月期の連結決算では純利益が前年同期比4.6倍の105億円に拡大した。検査装置の日立ハイテクノロジーズは純利益の予想を、従来13%減の350億円だったがこれを3%減の390億円に上方修正した。半導体テスターのアドバンテストは、下期の純利益が前年同期比38%増の95億円になる見通しだという。これらはデータセンター向けの半導体チップの需要が伸びているためと日経は見ている。

データセンターの需要をけん引するシステムはクラウドであり、ITの中心はオンプレミスからクラウドへ動いている。IBMはコグニティブコンピューティング(AIあるいはマシンラーニングともいう)である「ワトソン」を無料で提供すると発表した。IBMはクラウドでAmazonに差を付けられているため、その巻き返しを図り、クラウドを通してワトソンを利用するサービスを提供する。AmazonのAWSを使ったクラウドサービスは今やダントツで、IBMはなかなかビジネス成果が上がらなかったため、ワトソンを無料にすることでクラウド利用を増やそうとしている。

(2017/10/30)

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