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ITのメガトレンドが半導体景気をけん引

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やはり半導体産業の好調が続いている。そのけん引となるのは、新しいITのメガトレンドだ。IoT、AI(人工知能)、クラウド、5G(第5世代の無線通信)、そしてクルマの自動運転化、である。これらのテクノロジーはバラバラではない。融合(コンバージェンス)しながら、相互利用によって、より賢いシステムを作るために必要となる。もちろんテクノロジーの本質は半導体だ。

今年の半導体市場は前年比11%あるいは12.3%成長すると市場調査会社は見ており、10%成長は堅い。直接のけん引役はDRAMとNANDフラッシュのメモリであったが、マイクロプロセッサやマイコンなども伸びている。

5月29日の日本経済新聞は、マイクロンがスマートフォンやデータセンター、自動車向けのDRAMの最先端の13nmプロセスに20億ドルを投資する、と伝えた。DRAMは微細化でアプリケーションプロセッサやFPGAよりも遅れているが、もはやプレーナ技術ではなくなっているため。3次元の微細化はプレーナよりも遅れるのはやむをえない。それでも従来の16nmよりも13nmに微細化することで1枚のシリコンウェーハからの収率は2割以上高まるとしている。

微細化で先行するロジックでは、ファウンドリのトップメーカーであるTSMCは7nmプロセスの受注を進めており、すでに12製品を受託して、2018年には量産に入る、と27日の日経が報じた。10nm品まではスマホが主力となるが、7nm以降では、AIやクラウドを支えるデータセンター向けの需要が期待される。さらにIoTや自動運転、CMOSセンサなどでも新たな需要が出てきており、顧客がすでに450社あり、毎週1社ずつ増えているという。

自動車部品のトップメーカーであるRobert Boschの日本法人は、国内工場にIoTを前年の2倍に当たる28件を導入する予定だ、と26日の日経産業新聞が報じた。工場内での各設備の電力を監視し、利用効率を上げるエネルギーマネジメントや、設備の保全にスマホを利用して、状況を管理者に見えるようにするメンテナンスサポートを行うことで、工場の稼働率を安定的に85%以上に高めることが目的。IoTの予防保全レベルにはまだ至っていないようだ。

やはりクルマでは、トヨタが米国のMIT(マサチューセッツ工科大学)と組み、取引記録などをネットワーク上に分散して保管・共有するブロックチェーンの技術を自動運転車の開発に利用すると日刊工業新聞は報じた。データの改ざんが難しいことから金融業界で始まっており、それを自動運転の開発にもつなげようという訳だ。

クラウドでは、アマゾンのAWSが独走しているが、IBMや国内大手のITベンダーであるNECや富士通、日立製作所などのクラウド普及が遅れている。ソフトベンダー大手もクラウド対応が迫られている。

これまでのERPソフトの第一人者であるドイツのSAPが、産業用ロボットのKukaと、工場の自動化に強い三菱電機とそれぞれ提携し、クラウドビジネスを強化する、と24日の日経産業が報じた。SAPのIoT向けソフトウエアツールであるレオナルド上で、Kukaは開発したロボットを管理するためのサービスを使えるようになる。いわばデジタルツインと言われているが、ネット情報と現場とを双子のように互いに利用することで、現場をクラウドベースでみることができるようになる。三菱に対しては、三菱の自動化向けIoTサービスをSAPのクラウド基盤HANA上で動かせるようにする。SAPのクラウドを通して、三菱の工場の生産状況を遠隔管理できるほか、予防保守などのサービスを追加利用できるという。

5Gでは、KDDIが28GHz帯を使って、監視カメラ映像を複数の車載型5G端末から同一の基地局を介して即時に伝送する実証実験に成功した、と発表した。28GHzのようなミリ波では4K、8Kの映像を伝送できるほどの高速データレートを提供するが、直線的に飛ぶため、基地局に設けた複数のアンテナから360度カバーして複数の端末が同時に高速・大容量のデータを送受信できるようにした。いわゆるマルチユーザーMIMOである。

半導体メーカーの好調を受けて、半導体製造装置メーカーも絶好調だ。トップのApplied Materialsは、2017年2〜4月期の決算発表で、売上額は前年同期比45%増の35億ドルに達したと発表した。東京エレクトロンやLam Research、ASMLも絶好調だ。23日の日経産業は、AMATのCEOであるDickerson氏のコメント「IoTやAIに関連する需要が立ち上がった」を掲載している。今回の半導体好景気は、ITバブルとは違うとして、その理由は誰が誰のための半導体を作っているのかが見やすいため、という東京エレクトロンの役員のコメントも載せている。

東芝メモリを巡る動きはめまぐるしく変わり、2次入札に応じた4陣営に加え、Western Digitalとも個別協議に入ると26日の日経は伝えているが、買主まだ決まっていない。そんな中、WDは車載向けNANDフラッシュメモリ「iNAND 7250A」を発売した。8BG〜64GBの4種類を用意した。クルマ用の高精細マップや、カメラ、センサ情報の蓄積などクルマ用のメモリの大容量化に対応する。

(2017/05/29)

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