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好調、半導体を支えるシリコンが足りない

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半導体産業が好調だ。その裏返しとして、シリコン半導体の原料となる単結晶シリコンが不足している。3月13日の日経産業新聞は、半導体グレードのシリコンを生産する信越化学工業とSUMCOが増産に踏み切らないことを報じている。

半導体原料のシリコン結晶の不足は、短期的な状況ではなさそうだ。産業機器やスマートフォンなど短期的に需要の強い商品はある上に、パソコンでさえ底を打ち、久しぶりのプラス成長が期待されている。中長期的にはIoTやクルマ用の半導体需要も強い。にもかかわらず、世界の半導体原料の60%を握ると言われるシリコンメーカー2強、信越とSUMCOは動かないようだ。ウェーハ価格が安くなり過ぎたことが原因であり、このままでは作っても赤字になるだけらしい。日経産業は「ウェーハ価格が今より40%上がらないと、投資しても(売上高が)損益分岐点を超えない」というSUMCOの橋本CEOのコメントを載せている。

SEMIはウェーハ面積の推移を発表しているが、それによるとシリコンウェーハ面積が2014~2016年と増え続けているのにもかかわらず、販売額は下がり続けているのだ(参考資料1)。ここでは需要と供給の関係が成り立っていない。需要が強ければ単価を上げるべきなのにもかかわらず、上げてこなかった2強が問題なのかもしれない。需要の強さに応じて単価も上げてくれば、このような反転現象はないはず。

今こそ、値上げすればよい。ただ、いくら値上げをしていくか、で悩んでいるようだ。悩む理由は、リーマンショック前に増産に踏み切ったがその後の需要低迷でリストラに追い込まれたという苦い経験がある。段階的な値上げのロードマップを説明し、今すぐ40%値上げでは市場を崩してしまうだろうが、段階的な値上げなら受け入れられるであろう。シリコン半導体の工業界である、新金属協会が発表した今年の予測では16年比2%増の8580トンになる見通しだと8日の日経が報じているが、このわずかな数字は信越とSUMCOの見通しそのものなので、両社が増産する気は全くなさそうだ。

2強がトップに安住し、需要があっても増産に踏み切らなければ、下位のシリコンメーカーにとってはチャンスとなる。「羹(あつもの)に懲りてなますを吹く」状態は、ビジネス機会を失うことはこれまでの半導体の歴史が教えてくれている。

半導体メーカーで強い所は好調さを持続しており、TSMCは2016年5年連続過去最高益を記録したと10日の日経は伝えている。Intelはセミコンポータルですでに報じたように(参考資料2)2016年に売り上げが7%増の594億ドル、利益も129億ドル(約1兆4000億円)と絶好調を維持している。設備投資、研究開発投資ともきっちり行う。中長期的に成長市場としてのリテールIoTにも力を入れることを発表している。

これを受けて、8日の日経産業は、「大日本印刷、安いICタグ開発に着手」と報じた。リテールIoTでは、RFIDタグやBluetoothビーコン、Bluetooth LE、Wi-Fiなどのセンサや通信規格が必要になるが、大日本はRFIDタグの価格を、現在の10円以下から、2020年に5円以下、2025年前に1円以下にするための技術開発に乗り出すとしている。リコー電子デバイスもIoT向けの超低消費電力の電源用ICを発売したと8日の日経産業が報じた。無負荷時の消費電流が0.2µA、待機時2nAと小さい。

9日の日刊工業新聞は、三菱電機がビジネスのリスク分散を図るため、パワー半導体やモジュールを2ヵ所以上の事業所で量産すると報じている。2016年4月に起きた熊本大地震がこのマルチハブ化のきっかけになった。こういったBCP(ビジネス継続計画)は、東日本大震災を体験したルネサスが最初に発表していたが、熊本地震を体験した三菱がそれに続いた。しかし、まだ災害に見舞われていない東芝は四日市に集中して巨大な工場を築き上げ、リスク分散に対してはこれまでずっと否定してきた。この先もBCPを持たないで行くなら、リスク分散は好調な東芝のアキレス腱となる。

参考資料
1. ウェーハ面積、史上最大だが、販売額は上がらず (2017/02/08)
2. IntelがリテールIoTに取り組む理由(わけ) (2017/03/09)

(2017/03/13)

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