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QualcommがNXPを買収?

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先週9月29日、Wall Street Journalは、QualcommがNXP Semiconductorの買収を300億ドル以上の金額で検討していると報じた。ドイツの大手クルマ3社Audi、BMW、Daimlerが半導体大手Intel、Qualcomm、通信機器大手Ericsson、Nokia、華為技術と「5G Automotive Association」を設立した。クルマと通信、半導体はつながっている。

Wall Streetは、QualcommのNXP買収は2~3か月後に発表があるという業界筋を紹介するとともに、Qualcommは他の選択肢も模索しているとも伝えている。つまりまだ、噂話にすぎない。問題は大きな買収金額だ。このニュースが出たとたん、NXPの株価は上がった。その結果、NXPの時価総額は330億ドルになり、Qualcommの時価総額は1000億ドルにもなった。半導体企業のM&Aは、2015年以来2000億ドルを超え、2016年だけでも750億ドルに達している。

QualcommのNXP買収が事実だとすると、同社の戦略は、クルマへ大きくシフトすることになる。Qualcommはあらゆる通信ビジネスへの盟主を目指してきた。CDMAの開発以来、セルラーネットワークだけではなく、先端Wi-FiのAtheros Communicationsを買収し、ウェアラブルのヘルスケア端末や、スマートフォン・タブレットを使った教育分野にも参入し、クルマ用には無線充電に力を入れてきた。当然だが、セルラーネットワークは5G(第5世代のモバイル通信ネットワーク)を推進してきた。もしクルマへシフトするなら、「あらゆる通信ソリューションの盟主を目指す」という戦略からは、ずれてくることになる。クルマは、通信分野の一つにすぎないからだ。

Qualcommが参加している「5G Automotive Association」では、V2X(vehicle to everything)やセキュリティを確保するための標準規格作りも行うようだ。5Gは単にデータレートの最大10Gbpsという高速化だけではなく、マルチパスなどの影響も考慮しながら1ms以下というレイテンシも目指す。クルマ用途を考えた遅延の目標数値だ。

5Gから本格的に始まるコネクテッドカー時代に備え、国内でもルノー・日産自動車連合はコネクテッドカーの開発でMicrosoftと提携すると発表したが、トヨタ自動車も今春、MSと提携している。MSはクラウドプラットフォームともいうべきソフトウエア「MS Azure」を持っており、これを使って車両の遠隔監視や自動運転医向けたアプリケーションソフトを開発する。MS AzureはIoTのデータ解析やアプリケーション開発のツールとして使われている。ホンダはソフトバンクと共同でAIを使ったADASを開発すると発表している。国内のクルマメーカーは、それぞれのシステム企業とコラボレーションしているが、5G時代のコネクテッドカーでは海外勢との協調は欠かせないはずだ。

先週はAI(人工知能)に関する記事も多かった。AIはIoTのデータ分析に使われ始めているが、創薬開発や医療の画像処理などで実績を積んでいる。中でも10月3日の日経産業が掲載した、東京大学の松尾豊特任准教授とのインタビューが面白い。AIによって「職がなくなる」、「AIとは何」といった低いレベルの知識から、「深層学習を超えるものを自力で作る」、「深層学習はたいしたことない」といった間違った認識についても触れており、正しく理解することの重要性を論じている。日本は米国企業と比べて大きく出遅れている点を懸念している。

GoogleやAmazon、Facebook、IBM、MicrosoftがAI普及に向けたNPO法人「人々と社会に貢献する人工知能のためのパートナーシップ」を設立したと9月30日の日本経済が伝えている。AIにまつわる倫理問題、プライバシーの保護や安全性の確保など社会に受け入れられるためのテーマを研究するとしている。業界の自主的な基準やルール作りにつなげていくと報じており、標準化の先頭に立っていきそうだ。

(2016/10/03)

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