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AIとIoTの活用がこれから始まる

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IoTはクラウドベースのデータ解析とサービス運用が重要なカギとなるが、データ解析にAI(人工知能)を利用する方向もある。逆にAI側から見ると、IoTだけではなくクルマの安全化、新薬開発などのエキスパートシステムに活かす。AIはIoT、クルマと密な関係を作り出す。こういった話題が上った先週だった。

時代はもはやハードもソフトもサービスも分けては考えられないフェーズに入った。半導体チップのようなハードウエア技術者でさえ、システム(ハードとソフトとサービス)の理解が不可欠になっている。ハードの企業は、AI技術者を求めている。その動きが6月10日の日本経済新聞に掲載された。ソニーは2017年春入社の新卒採用にAI研究者専用の枠を設けた。日立製作所は米国の開発拠点で100名、国内で100名、計200名のAIを中心とするIoT技術者を採用する。AIを使ったスマートグリッドをはじめとするインフラ構築に役立てる。ホンダはこの9月、都内にAIを研究する拠点を新設する。トヨタ自動車やパナソニックなども東京大学に「先端人工知能学教育寄付講座」を設置した。

機械産業大手のGE(General Electric)は、Industrial Internetを提案、推進しているが、このほどHewlett-Packard Enterprise (HPE) と提携すると発表した。HPEの持つサーバーやストレージなどのコンピュータシステムを、GEが持つIoT向けのクラウドベースのソフトウエアプラットフォーム「Predix」に適用する。HPEもIoTを重要な技術と位置付け、IoT専用サーバーやソフトウエア、プラットフォームなどを発表している。GEはジェットエンジンや発電機タービン、医療機器などの製品を使う航空、エネルギー、石油・ガス、製造業などの顧客をHPEと共同で開発するという。

MEMSセンサのトップメーカーBoschはクルマのティア1サプライヤでもある。同社は5年後のモデルカーとして、「コネクテッドカー」を公開したと9日の日経が紹介している。ここにはさまざまな種類のセンサが搭載され、Boschとしては今後、センサだけではなく、IoT端末として集めたデータを使ってサービスやソフトの収入につなげるのが狙いだと日経は伝えている。BoschのVolkmar Denner会長は、これからはハードと結びついたサービスが大きな潮流となる、とコメントとして述べている。Boschにはソフトウエア技術者が1万5000人いるという。日経はさらに、Boschのライバル、デンソーについても触れ、デンソーは2020年までに国内外の全工場をIoTでつなぐ方針だとしている。

オムロンは、AIを利用して、運転手の顔を認識しリアルタイムで、居眠りや緊急事態などの状態を判断するセンシング技術を開発したと7日の日刊工業新聞が報じた。運転手の近くにカメラを設置、顔の映像とクルマの動作映像を効果的に組み合わせて画像処理を行うことで、処理量を低減したという。これによってクルマ内でも使える軽いAI技術を開発できた。

IoTのようにほぼ常時インターネットとつながっているシステムでは、サイバー攻撃から守る必要がある。セゾン情報システムズは、もともとコンピュータ間でファイルを安全かつ確実にやり取りするファイル転送ソフト「HULFT(ハルフト)」を製造販売してきたが、このほどIoT向けに最適化した「HULFT IoT」を本格的に売り出している。例えば、センサネットワークのようにメッシュネットワークでは、IoTゲートウエイらクラウドサーバーに転送するファイルを守る。サーバー、ゲートウエイそれぞれに専用ソフトウエアをインストールしておくと、安全にファイルを転送できるというもの。

クルマ自体をまるでIoT端末のように走行データ(位置や速度、周辺の交通状況など)を集め、分析してサービスを提供しようとしているのが住友商事。7日の日経は、傘下の住友三井オートサービスが保有するリース車両を活用し、車載ソフトウエアを開発している子会社のSCSKとの連携も検討している。収集したデータを、最も燃費の良い走行ルートの提供や車両の故障予知などに活かすとしている。日産自動車は、電気自動車のリーフにM2M通信モジュールを備え、収集したデータをサーバーに送信しているが、集めたデータを外販している。トヨタ自動車もMicrosoftと共同で、走行データを分析する会社を設立している。

コーポレートガバナンスの例を一つ紹介する。ルネサスエレクトロニクスは7日に、熊本地震の影響で、稼働が止まり、2016年4〜6月期の連結売上額が19%減り、連結純利益が97%減の10億円になりそうだと発表した。地震による被害を含めた特別損失は80億円計上した。ルネサスの正直な発表は、悪い材料が出尽くした、と見られ、翌8日の株価は前日比7%高い678円を一時付けた、と9日の日経が報じた。ただ、産業革新機構が株式の69%を持っているため、一般市場での流動株が少なく、株価の変動は大きく出る傾向がある。革新機構の株式放出が悩みの種でもある。

(2016/06/13)

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