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コンピューティング技術を駆使するクルマ、ロボット

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年明け早々、米国ラスベガスでエレクトロニクスの総合見本市International CESが開かれ、家電からクルマやコンピュータ技術へと分野を拡大してきた。かつては家電見本市Consumer Electronics Showと言われたが、3年前からコンシューマという言葉が使われなくなった。今年はクルマが注目されたようで、新聞紙上をにぎわした。

ここ数年ずっとクルマ用のコンピュータ市場に力を入れてきたnVidia社は、今年はディープラーニング用の車載コンピュータDrive PX2を発表した。Appleのマックブックプロ150台分の処理能力を備えている、と1月7日の日経産業新聞は報じた。スウェーデンのボルボが採用するとしている。nVidia が流しているブログ(参考資料1)によると、カーコンピューティングが必要なのは、センサが4台のLidar(ライダー:レーザビームによる測距技術)や4台の魚眼レンズカメラ、2台の前方カメラ、GPSからの信号を時速100kmで走りながらリアルタイム処理しなければならないからだという。従来のコンピュータパワーでは処理能力が足りないとしている。

次世代のカーコンピュータDrive PX2の処理能力は、24 TFlopsで、1秒間に24兆ディープラーニング演算を行う能力があるとしている。このコンピュータで、サラウンドビューや衝突回避、歩行者検出、交差点通行モニタリング、ドライブ状況モニタリングのような機能を実現できるとしている。このディプラーニングコンピュータは、膨大なデータから学習するためにDIGITSと呼ぶニューラルネットワークソフトウエア開発キットに加え、ビデオキャプチャーやビデオ処理ライブラリも提供する。このコンピュータを搭載するクルマは、ソフトウエアのアップデートにより、もっともっと賢くなるという。

米国のGeneral MotorsとFordは、クルマを製造するだけではなく、クルマの新しい配車ビジネスモデルを打ち出したUber社のようなクルマ配車サービスやカーシェアリングに乗り出すとInternational CESで発表した、と7日の日本経済新聞が報じた。自動車事業の市場規模が2.3兆ドルなのに対して、交通サービスは5.4兆ドルもあるとして、交通サービス事業へ展開する。まず第1弾として、GMはUber社のライバル企業であるLyft社に5億ドルを出資する。

トヨタ自動車は、カーコンピューティングに必要なAI(人工知能)を開発するため、米国に研究開発会社「Toyota Research Institute(TRI)」を1月に設立した、と7日の日刊工業新聞が伝えた。Googleでロボットを開発していた責任者を採用したという。nVidiaのディープラーニングもIBMのコグニティブコンピューティングも共にAIの一種であり、トヨタがどの方式を使うのかについては明らかになっていない。トヨタはFordとも車載情報機器の開発で提携したと発表している。

また、日産自動車は電気自動車リーフの車載情報システムにMicrosoftのクラウドサービスAzureを採用すると発表したと6日の日経が報じた。また、インフィニティの一部にもAzureを採用する予定だとしている。

コンピューティング能力を上げようとしているのはクルマだけではない。ロボットでも、もっと賢くするために、IBMとソフトバンクが提携した。ソフトバンクのロボットペッパーを使って、小売店の接客や介護支援などのサービスを共同開発すると7日の日経は伝えている。両社はIBMのコグニティブコンピュータ、ワトソンの日本語対応を開発してきた。コグニティブコンピュータは、ビッグデータの解析だけではなく、学習を通じて意味を理解する機能もある。このためロボットへの応用にも向いている。

IBMはさらに、自社開発のCPUであるPowerアーキテクチャを使ったコンピュータを開発するため、「オープンPower推進センター」をnVidia日本法人と共同で設立すると5日の日経が報じている。Powerアーキテクチャを使い、ディープラーニング等の新しいコンピューティング技術が求められていることを反映している。パソコンやサーバのIntel、モバイルのARMという既存のコンピューティング技術から、新たなコンピューティングの軸が生まれる可能性が高い。

参考資料
1. Supercomputing at 60 MPH: How Deep Learning Will Give Cars Superhuman apabilities (2016/01/06)

(2016/01/12)

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